独立行政法人福祉医療機構 経営サポートセンター リサーチグループは2023年10月に全国の特養を対象に、人材確保に関する調査を実施、769法人863施設から得た回答をまとめたレポートを公表しました。介護職員等の処遇改善を図るための現行の3加算については、いずれも高い算定率と なっており、「届出していない」の割合は5%未満の水準でした。
処遇改善を進めるために必要な対応として、「基本報酬化し、金額を引き上げ」が最も多く、ほかに「3種類ある加算の統合」「事務負担の軽減(手続きの簡素化)」などが挙がりました。自由回答で寄せられた現行の3加算に関する課題について、テーマごとにまとめました。
職種間の賃金バランス・他業種との賃金格差
・3種の処遇改善支給により、介護職員とその他職種職員の支給額に相当の格差があり、その他職種職員から介護職員への不平不満が散見されている。
・介護職員のみへの制度であり、他職員の給与水準が引き上げられない
・支給要件にて職員処遇に不公平感がある
・介護職員にとってはモチベーション維持・向上に繋がり、一定の定着率が見えている。一方、その他の職員からは不満の声が多い。
・処遇改善が介護職に限定されていて、給与が下がることでの施設内での異動に支障が出ている。また、賞与では管理職よりも看護職が高いという現象が起きている
・介護職員の処遇改善に他の職種(相談員やケアマネジャー)が追い付けず、介護職員との賃金格差が生じている。
・他業界との賃金格差が大きく、介護職を選択する人材が減っている。処遇改善をするにも経費が多く必要になってくる
・他産業の賃金上昇が激しく介護職員の処遇改善とますます差がついている。他産業と同様の休みが取れる環境整備
事務負担
・処遇改善関連加算が3種あり、異なる支給条件があり、それぞれの計画・報告書の作成・報告が負担大
・処遇改善手当を正確に支給しようとしているが、3種類に増え事務が複雑化しすぎている
・とにかく内容が複雑すぎ。補助金額を誰に使ったかくらいでいいと思うが、計算式が複雑すぎで、事務処理が難しすぎる。もっと簡素化するべき
経営への影響
・給与昇給等による退職者減少。それによる人件費上昇による経営圧迫
・事業所間の職員数や経験年数、入る加算額の偏在があるため、公平な運用をするには一定額の法人持出しをせざるをえない
・支給対象外の職種にも手当として支給しているため、施設での持ち出しが大きくなり大変である
・相談員などへの異動を嫌う職員がでてくるので、施設持ち出しで手当を支給しているが、経営に圧迫を感じる
・職種を支給要件にすると作業能力等考慮した場合に、非常に不平等さを感じる。そこを補填しようと思うとさらに施設の負担が大きくなり処遇改善金制度に対応する為に運営が圧迫されている。
独立行政法人福祉医療機構 「2023年度 特別養護老人ホームの人材確保に関する調査結果」 「2023 年度特別養護老人ホームの人材確保に関する調査について」
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