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【ニュース解説】施設責任者は要チェック 経過措置終了まであと半年の「やるべきこと」とは?

厚生労働省老健局高齢者支援課、認知症施策・地域介護推進課、老人保健課は10月4日付で事務連絡「令和5年度末で経過措置期間を終了する令和3年度介護報酬改定における改定事項について(依頼)」を、各都道府県・指定都市・中核都市の介護保険担当主幹部(局) 宛に発出しました。前回の介護報酬改定で経過措置とされたものの終了まで半年を切ったことから各事業者に対応を完了するよう改めて促すものです。今回はこの内容を改めて確認しておきたいと思います。

令和5年度末で経過措置が終了する項目一覧

令和5年度末までの経過措置が適応されているのは以下の項目です。

<全サービス>

・感染症対策の強化

感染症の予防やまん延防止のための訓練、対策を検討する委員会の定期的開催とその結果の従業者への周知。指針の整備

・業務継続に向けた取組の強化

感染症や非常災害の発生時に利用者に対するサービス提供の継続的実施と早期の業務再開を図るための計画策定と計画の従業者に対する周知、必要な研修・訓練の定期的実施。定期的な業務継続計画の見直しと必要に応じた業務継続計画の変更

・認知症介護基礎研修の受講義務付け

介護に直接携わる職員のうち、医療・福祉関係の無資格者に認知症介護にかかる基礎的研修を受講させるために必要な措置の実施

※無資格者がいない訪問系サービス(訪問入浴介護を除く)、福祉用具貸与、居宅介護支援を除く

・高齢者虐待防止の推進

虐待発生や再発防止の対策を検討する委員会の定期的開催と、その結果の従業者に対する周知、必要な指針の整備、研修の定期的実施。これらを適切に実施するための担当者配置

<施設系サービス>

・口腔衛生管理の強化

口腔衛生の管理体制を整備し、歯科医師または歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、介護職員に対して各入所者の状態に応じた口腔衛生の管理に係る技術的助言や指導を年2回以上実施

・栄養ケア・マネジメントの充実

栄養マネジメント加算要件の包括化を踏まえ、入所者の栄養状態の維持・改善を図り、自立した日常生活を営むことができるよう、各入所者の状態に応じた栄養管理の計画的な実施

<訪問リハビリテーション事業所>

・事業所医師が診療しない場合の減算(未実施減算)の強化

事業所の医師がリハビリテーション計画の作成に係る診療を行わなかった場合に、例外として、一定の要件を満たせば、別の医療機関の計画的医学的管理を行う医師の指示のもと、リハビリテーションを提供する可能(未実施減算)。この要件のうち別の医療機関の医師の「適切な研修の修了等」について猶予期間を3年間延長

策定に約半年かかる業務継続計画(BCP) 2割弱の事業所がまだ未策定

この経過措置に挙げられた各種改定事項の実施状況ですが、このうちの「業務継続に向けた取組の強化」の中の業務継続計画(BCP)策定については、2023年9月21日の第27回社会保障審議会介護給付費分科会介護報酬改定検証・研究委員会で各種介護サービス事業所・施設4990施設からの回答集計が明らかにされました。それによると、感染症BCPについては「策定完了」が29.3%、「策定中」が54.6%、「未策定(未着手)」が15.6%、自然災害BCPは「策定完了」が26.8%、「策定中」が54.9%、「未策定(未着手)」が17.1%でした。いずれも調査時点は今年7月です。おおむね策定完了か策定中ですが、2割弱が未策定なことが気になります。

ちなみに策定を完了した事業所が策定に要した期間は、感染症BCP、自然災害BCPともに「6カ月程度」が最も多く、その割合はそれぞれ30.3%、34.2%でした。ここから考えるに、未策定の事業所については秋以降に策定に取り掛かったとしても経過措置が終了する来春にぎりぎり間に合うかどうかになる可能性があります。というのも、この義務化は策定完了で終了ではなく、職員に対する周知と必要な研修・訓練の実施まで含まれているからです。策定だけに6カ月かかった場合は、周知と研修・訓練がさらに加わるので来春までには間に合わないことになります。

経過措置に対応できない場合はどうなる?

では経過措置に対応できない場合はどうなるのでしょうか? まず、現状ではっきりしているのは、「栄養ケア・マネジメントの充実」と「訪問リハビリテーション事業所の事業所医師が診療しない場合の減算(未実施減算)の強化」です。経過措置終了後に対応できない場合、前者は栄養ケア・マネジメントの未実施減算の14単位/日、後者も未実施減算の50単位/回が適用されます。

その他については、今のところ対応できなかった場合にどうなるかは未確定です。経過措置延長の是非は、今後、介護報酬改定検証・研究委員会に報告が見込まれる各事業所・施設の経過措置対応状況の結果次第と言えます。

経過措置の対応状況が全国的に見て芳しくなければ延長の可能性は否定できませんが、この場合はすでに対応済みの事業所・施設にとって不公平感が募ることになるため、対応できた側に加算、あるいは対応できなかった側に減算のいずれかの新設措置が行われる可能性があります。また、全国的に大半が対応できている場合は、対応できなかった側に減算のみを新設する適用する可能性が高まります。

より踏み込んだ予測をすると、こうした加算・減算対応は、「業務継続に向けた取組の強化」と「口腔衛生管理の強化」では行われる可能性があるかもしれません。一方で「認知症介護基礎研修の受講の義務付け」「高齢者虐待防止の推進」は、前者2つと比べると、対応のハードルが低めなので経過措置はきっちり来春で終了し、その後は対応できていない事業所・施設に行政指導を行うという流れが予想されます。

これらの経過措置に対する対応には、いずれも人手とコスト・時間を要するのは必定です。昨今の情勢は物価高に加え、ポスト・コロナ時代に突入し、各業界の人手不足が明らかになっています。この中でもともと収益性が低く、人手不足が慢性化している介護業界で、こうした経過措置への対応にどれだけ人手を割けるかは未知数です。

とはいえ最近の介護報酬改定は、大雑把に言えば基本報酬は低下傾向で、人手をかけた各種加算の取得が収益向上のカギを握ります。「異例の物価高騰による影響などを国は考慮してくれるはず」などと油断はせずにしっかり対応したいものです。

介護保険最新情報Vol.1174「令和5年度末で経過措置期間を終了する令和3年度介護報酬改定における改定事項について」

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