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食材費高騰の影響 特養の16%「行事食を減らした」23%「食材品目数を減らした」

公益社団法人全国老人福祉施設協議会では、2024年8~9月にかけて同会会員の特別養護老人ホームを対象に、食事の質における昨今の食材料費の高騰が利用者に与えた変化・影響等について調べた「特別養護老人ホームにおける食事サービス調査」を実施。その結果を公表しました。

食材料費高騰に対する、施設での取組状況

食材料費高騰に対する、施設での取組状況の有無については65.3%の施設が何らかの対応を実施した、と回答しました。取り組み内容については、「契約期間中に、食材の仕入れ先を変更した」が最も多く、ついで「利用者の食費の設定単価(第4段階以上)を増額した」、「業務効率化を図り、調理時間短縮した(完全調理品(クックチル等)の導入等)」、「行事食の廃止または回数を減らした(一時的な対応含む)」「品数を減らした(一時的な対応含む)」と続きました。

公益社団法人 全国老人福祉施設協議会 資料より

食材の使用頻度、変更、品目の推移

令和5年6月と令和6年6月を比較しての、食材の使用頻度の変化については、「果物」と回答した施設が最も多く32.0%でした。次いで魚類、野菜、菓子類、栄養補助食品と続きました。

公益社団法人 全国老人福祉施設協議会 資料より

食材の銘柄または代替品への変更は「魚類」と回答した施設が最も多く44.8%、以下、冷凍野菜、野菜、冷凍食品、菓子類と続きました。

食材品目数の変化については、22.7%の施設で「減った」と回答しています。

公益社団法人 全国老人福祉施設協議会 資料より

そうしたなか、利用者及びご家族からのご意見・ご相談・苦情として以下のようなことが寄せられていることが分かりました。

食材の質の低下や提供料理の見た目の質の低下

パンや麺類、生フルーツが減った、肉や野菜が固い、魚のパサつきや臭みなどがある、冷凍野菜が美味しくない、繊維が多く食べづらい など

食事の提供量の変化や食材使用頻度・献立の改善など(品数・行事食含む)

食材パンや肉、魚、生フルーツ、おやつなどが小さくなり、もの足りない

食材費の高騰で使用できる食材の重なりが多くなる傾向にあり、同じものが多くなる ことに加え、色味を出せる食材を複数使用できず見た目が貧相になっている など

味付けの変化

材料費を抑えるため、生の食材を使用せず冷凍野菜等を使用していることから旨味 がないと感じる など

食事を維持するための工夫

栄養士を中心とした利用者の食事を維持するための工夫として以下のような事例が挙がりました

献立や使用食材等に関する工夫

給食会議にて利用者に提供できる食材、好まれる料理や形状について各職種からの情報収集に努める。

同じ日、前後の日で可能な限り使用材料が同じにならないよう配慮する。

厨房の出勤人数や出勤メンバーに合わせて献立を調整し、完全調理品・カット済食材・(カット無のそのままの)通常の食材を使い分ける。

牛肉・豚肉の提供は減らし、鶏肉使用の回数を増やす。生魚を減らし、安価な白身魚(特に深海魚)や外国産の冷凍魚へ変更する。野菜は冷凍野菜を使用する。

できるだけ既製品をやめて、手作りに変更する。(おやつ類など)

食事を楽しむための工夫

面前調理などを増やして利用者が喜んで食事を食べていただけるよう対応。

同じ献立でも盛り付けをする際、食器などで変化を付けるよう工夫。

発注や管理に関する工夫

発注数管理や在庫管理の徹底。

大量発注や賞味期限が近い食品を仕入れ、単価を安くする。

地域の農家さんに協力頂いて果物などを安く仕入れさせていただく。

栄養士・調理員だけでなく介護職員などにも価格情報を共有し節約意識を高める。

老健局長へ要望書「食費の基準費用額の見直しにかかる要望」を提出

同会では調査結果を受けて、令和7年1月8日、「食費の基準費用額の見直しにかかる要望」を厚生労働省の黒田秀郎老健局長へ提出。

・食費の基準費用額を次期介護報酬改定を待たずに309円引き上げるとともに、補足給付制度における利用者負担限度額を維持すること。

・基準費用額について、賃金・物価スライドの仕組みを導入すること。

を要望しました。

公益社団法人 全国老人福祉施設協議会 「特別養護老人ホームにおける食事サービス調査」

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