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【ニュース解説】外国人介護人材の受け入れ拡大へ 専門部会が始動

厚生労働省が新たに設置した「外国人介護人材の業務の在り方に関する検討会(座長:臼井正樹・神奈川県立保健福祉大名誉教授)」の初会合が7月24日に開催されました。

介護業界の人材不足に向けて様々な施策は行われているものの、解消の見通しは全くありません。今回の検討会は、政府の「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」への意見を述べることを目的に設置された「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(座長:田中明彦・独立行政法人国際協力機構理事長)」が今年5月にまとめた中間報告書で、これら制度を廃止して、新制度の創設を提言したことを受けて発足したものです。

対人サービスがほぼすべての介護業界では、外国人受け入れに対する心理的ハードルはまだ残っていますが、少子高齢化で現役世代の大幅な減少とサービス提供対象者の激増が予想される以上、検討会の議論は横目で眺める程度で良いはずはありません。今回は現行の制度と現在の受け入れ状況、さらに検討会での初会合内容について紹介したいと思います。

外国人介護人材の受け入れの現状は

厚生労働省の「職業安定業務統計」によると、2022年度の有効求人倍率は、施設介護職員が3.79倍、訪問介護職員が15.53倍となり、後者で過去最高を記録しました。全業種での有効求人倍率は1.28倍であり、特に訪問系ではもはや深刻の一言では言い表せない惨状です。こうした中で介護業界での外国人受け入れについては、2017年11月に外国人技能実習法が施行されたことを契機にスタートしました。介護業界での外国人受け入れの制度的枠組みは現在この「技能実習」を含め、「特定技能1号」「在留資格『介護』」「経済連携協定(EPA)」の4種類があります。この違いを改めて説明します。

「技能実習」は、来日する外国人が日本で学んだ技能や知識を最終的に母国で生かすことが前提で、就労はあくまで母国で活躍するための実習目的、いわば技能移転とも言える制度です。これに対して「特定技能1号」は2019年4月に新設された制度で、人手不足が深刻な12分野の業界で、すでに相当程度の知識や経験を有する外国人を完全な就労目的で受け入れる制度です。

この2つの制度の違いはざっくり言うと、「技能実習」は業務や日本語の能力が素人の外国人を教育訓練する制度に対し、「特定技能」は業務や日本語能力で準玄人とも言える人を労働者として受け入れる制度です。また、前者は最初に決定した受け入れ先からの転職は原則認められていませんが、後者では同一業界内での転職ならば可能です。ちなみに「技能実習」を経て「特定技能1号」への移行も可能です。

在留資格「介護」は、技能実習よりも早く始まった制度ですが、現在は介護福祉士養成機関の留学生、技能実習で介護を学んだ人、特定技能1号従事者が日本の介護福祉士の資格取得後企業や介護施設との契約の下で就労する、いわゆる介護職での就労ビザを意味します。「技能実習」や「特定技能1号」で入国から3年目以降は、こちらに移行することも可能で、水準が日本人と同等以上であることが原則条件です。

一方、「経済連携協定」(EPA:Economic Partnership Agreement)は、世界貿易機関(WTO)と中心とした多国間の貿易自由化を補完するため、相手国や地域を限定して、関税などの貿易障壁を撤廃することで、モノ・ヒト・カネ・サービスの移動を促進させようとする仕組みです。あくまで特定の国と経済連携を強化すると枠組みの中で、介護に関しては介護福祉士を目指す人材が日本の介護施設で就労・研修をしながら、日本の介護福祉士資格の取得を目指す特例措置です。国側は労働力不足を補うことが目的ではないとしています。

現在、EPAでの介護福祉士候補者受け入れは、フィリピン、インドネシア、ベトナムの3ヵ国に限定されていて、候補者はすでに母国で看護師養成機関を卒業しているか、大学卒業後に現地での介護関連資格などを有している者に限られ、来日後は定められた期間内の日本語研修を経て、日本語能力試験で一定水準に達していることなどが求められます。

さらにこれらの制度の違いは、「EPA」「在留資格『介護』」と「技能実習」「特定技能1号」で大きく2つに分けられます。前者の仕組みの来日者は配偶者や子供の同伴が可能で、在留資格更新の回数に制限はありません。後者は、単身でしか来日できず、「在留資格『介護』」に移行しない場合は最長5年で母国に帰国しなければなりません。

現時点でこれら仕組みを利用して介護に関わっている外国人は、EPA介護福祉士・候補者が3,213人(2023年6月1日付、国際厚生事業団)、在留資格「介護」が6,284人(2022年12月末、入管庁)、技能実習が1万5,011人(2022年6月末、入管庁)、特定技能1号が1万9,516人(2023年3月末、入管庁)となっています。

技能実習、特定技能1号で介護業界に従事している外国人の出身国は、EPA締結国のベトナム、インドネシア、フィリピンに加え、ミャンマー、ネパール、中国、モンゴルが多いのが特徴で、これらの国の出身者が9割以上を占めます。

年末には検討会としての意見をとりまとめる予定

検討会の議論ですが、すでに検討事項は(1)訪問系サービスなどへ従事拡大(2)事業所開設後3年要件の緩和(3)人員配置基準算定の緩和、の3点にほぼ絞られています。

(1)は現在、技能実習、特定技能1号の対象者は施設系サービスでの従事は認められていますが、訪問系サービスでは認められていません。これは施設系では複数の職員が指導に当たれるのに対し、訪問系では1対1のサービス提供が基本であるため、教育研修が十分に行えないことが最大の理由です。一方で、訪問系では利用者が外国人介護従事者の居宅訪問を避けたがるという現実もあります。

(2)は技能実習を受け入れる条件として介護事業者の経営安定度を考慮した縛りです。

(3)は介護技能や業務に必要な日本語能力が向上することを前提に、就労開始から6ヶ月間は施設側が施設の人員配置基準に算定していることに対する取扱いの再検討を意味します。

検討会の初回では、これらの検討事項について各委員の賛否などが表明され、今後数回の検討会開催を経て、年末には検討会としての意見をとりまとめる予定です。このスケジュールは、冒頭で触れた有識者会議の最終報告が同じく年末であることを考慮したものです。まだ、初回の議論が行われたばかりで、先行きは見通せませんが、各検討事項に関して最低でも段階的に緩和する方向で進むとの見方が関係者の間では大勢を占めています。

厚生労働省 第1回外国人介護人材の業務の在り方に関する検討会

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