folder_open 介護施設働き方・処遇改善厚労省 calendar_month update

【ニュース解説】看護の人材不足 約30年ぶりに国の基本方針見直しへ

1992年以来、一度も改正されていなかった看護人材確保法の基本方針

介護業界では従来から介護職員の不足に悩まされ続けていますが、同時に看護職員の不足も深刻です。しかも、看護職員の場合、介護業界のみならず、主たる就業場所である医療機関、訪問看護も含めて不足しており、この3者での三つ巴の人材獲得競争が繰り広げられています。実は看護職員の不足はすでに1990年代前半から問題化し、これに対応して1992年に看護人材確保法が制定されました。同法成立直前の1990年の国内の看護職員数は約83万人でしたが、この法律のおかげもあって30年を経た2020年にその数は約173万人と2倍以上に増えました。しかしながら、急速な少子高齢化の進展により、それでも看護職員は不足しています。2019年に厚生労働省の医療従事者の需給に関する検討会看護職員需給分科会が公表した推計では、2025年には少なくとも約195万人の看護職員が必要と見込まれています。これまでの増加速度から考えれば、不足は必至の状況です。

看護人材確保法の第3条1項では看護師の確保促進のため、厚生労働大臣および文部科学大臣に基本的な指針を定めることを義務付け、これが「看護婦等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針(以下、基本指針)」として告示されています。

実はこの基本指針は1992年以来、一度も改正されていませんでした。しかし、このほど厚生労働省の医道審議会・保健師助産師看護師分科会看護師等確保基本指針検討部会で、基本指針を改正し、この秋にも告示する方針となりました。今回は改正の方向性について解説します。

看護人材確保法 基本指針の見直しの方向性は

看護人材確保法の基本指針は

・看護師等の就業の動向 ・看護師等の養成 ・病院等に勤務する看護師等の処遇の改善 ・研修等による看護師等の資質の向上 ・看護師等の就業の促進 ・その他看護師等(看護職員)の確保の促進に関する重要事項

の6項目の記述で構成されていました。改正ではここに

・新興感染症等への対応に係る看護師等(看護職員)の確保

が加わり、全部で7項目となります。

「看護師等の就業の動向」の改正は言うまでもないことです。現状の記述は30年前の動向そのままなのです。方向性の案(以下、方向性案)では、看護師就業場所の推移で、訪問看護ステーションおよび介護保険施設の増加割合が高いことや、年齢階級別構成割合の推移で若年層が減少し、60歳以上の構成割合が増加していることなどが盛り込まれ、都道府県別の人口10万人当たり看護師等就業者数は首都圏などの都市部において全国平均より少ない傾向・地域別・領域別に異なる需給状況に応じた確保対策の重要性が新たに記述される見込みです。

「看護師等の養成」では新たに地域医療介護総合確保基金による看護師等養成所の整備・運営を支援や看護関係資格の取得を目指す社会人経験者の教育訓練の受講支援の必要性が盛り込まれそうです。ちなみに元々の基本指針では、後者の社会人経験者に関して「検討する」との記述にとどまっていました。

「病院等に勤務する看護師等の処遇の改善」では業務負担の軽減のためAI・ICTの積極的な活用推進や地域医療介護総合確保基金を活用した仮眠室・休憩スペースの整備支援・メンタルヘルス対策としてのストレスチェック制度の導入、職場におけるハラスメント対策の創設を盛り込む方向性となっています。

「研修等による看護師等の資質の向上」については専門看護師・認定看護師などの資格取得、特定行為研修での在宅医療や新興感染症の対応が可能な看護師の養成・確保を求めるほか、特定行為研修指定研修機関による訪問看護ステーションなどの在宅医療領域の看護師への積極的な受講機会の提供を明記することになりそうです。

「看護師等の就業の促進」ではデジタル改革関連法に基づいて2024年度から運用が開始される「マイナンバー制度を活用した看護職の人材活用システム」による情報を都道府県ナースセンターに提供し、その積極活用で潜在看護師などの発掘に役立てる見込みです。ちなみに同システムは看護師のキャリアデータベースを構築し、看護師資格を持つ本人の同意に基づき、ここにデータが登録される予定です。データベース構築については日本看護協会も大筋で賛同しています。また、看護職員の有料紹介事業者については、先ごろ財務省財政制度審議会が手数料の上限規制などを設けるべきと提案していますが、今回示された基本方針の改正の方向性案でも「法令の遵守や手数料の公表などの一定基準を満たした事業者の認定を推進することが重要」と言及しています。

「その他看護師等(看護職員)の確保の促進に関する重要事項」では、必要な看護師の確保やその業務負荷軽減のための看護補助者(いわゆる看護助手)を活用、介護事業所なども含む医療機関以外の職場でも医療機関の取り組みに準じた措置を取ることなども求める方針です。

そして、今回新設される「新興感染症等への対応に係る看護師等(看護職員)の確保」の改正方向性案では、特定行為研修での新興感染症対策の充実をベースに、研修終了者のリスト化と非常時の特定地域・施設への研修修了者派遣システムの構築、新興感染症・災害発生時に潜在看護師を都道府県ナースセンターが募集した際の事前研修の充実、などを盛り込んでいます。

厚生労働省「第1回医道審議会保健師助産師看護師分科会看護師等確保基本指針検討部会」

【注目お役立ち資料】

給与アップだけでは限界!? 看護師争奪戦の実態とは

看護師が辞めない職場をどうつくる

看護師の採用費 下げるために知っておくべきこと

【注目トピックス】

日本看護協会 介護報酬改定に関する要望書を提出

看護職員不足は高齢者施設だけでなく、病院でも深刻に

病院における新卒看護職員の離職率 増加傾向続く

\夜間オンコールができる看護師が足りない…/
\受診するべきか相談できればいいのに…/

ドクターメイトの
「夜間オンコール代行™」「日中医療相談」で解決!

「夜間オンコール代行™」と「日中医療相談」で、介護施設で24時間365日、医療サービスを提供できます。

導入後の効果をもっと詳しく読む>>