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退所時情報提供加算、配置医師緊急時対応加算 特養の算定状況~2024年度介護報酬改定の影響に関するアンケート調査から(2)

独立行政法人福祉医療機構(WAM)は、昨年、2024年度の介護報酬改定の影響に関するアンケート調査の結果から、今回は改定により施設サービスで義務付けられた協力医療機関との連携の状況、退所時情報提供加算、配置医師緊急時対応加算の算定状況について、介護老人福祉施設(以下、特養)の結果(回答施設769施設、調査時期2024 年 7 月 19 日~8 月 20日)を紹介します。

特養の協力医療機関との連携の状況

今回の義務化内容を改めて説明すると、

(1)入所者の病状が急変した場合などに医師または看護職員が相談対応を行う体制を常時確保

(2)診療の求めがあった場合に診療を行う体制を常時確保

(3)入所者の病状の急変が生じた場合などに施設の医師または協力医療機関等の医師が診療を行い、必要に応じ入所者の入院を原則受け入れる体制を確保

――の3つです。その整備に関しては3年間の経過期間を設けられています。これらは複数の医療機関を定めることで基準を満たしても良いことになっています。

調査結果によると、連携体制を「連携済」と回答した施設は、(1)急変時の相談対応体制で61.5%、(2)の診療体制の常時確保で55.0%、(3)の入院受入体制で49.2%となりました。この結果から、とくに入院受入体制の整備が課題となっている現状が浮かび上がっています。

独立行政法人福祉医療機構「2024 年度介護報酬改定に関するアンケート調査」より

調査レポートでは(1)と(2)の連携体制を構築した医療機関のうち、2~3割は診療所であることを明らかにしています。このため従来からの協力医療機関が診療所の場合、(1)と(2)の要件を満たせても入院要件については「目途が立たない施設も一定程度あるものと思われる」と分析しています。

一方、「調整中」との回答施設は(1)で23.5%、(2)で26.7%、(3)で28.1%、「未着手」は(1)で15.0%、(2)で18.3%、(3)で22.8%。これらの施設に今後の目途を尋ねた結果では、「目途は立っている」が概ね3割程度に対し、「厳しい」「分からない」という回答が残り7割程度を占めたそうです。

協力医療機関との連携体制が構築できていない理由の自由記述について調査レポートでは一部抜粋で以下のようなものを紹介しています。

・協力医療機関が算定要件を満たしているかを確認中

・田舎のため病院が少なく対応できるところがない

・一つの医療機関が複数の施設と契約をしなければならないため現実的に不可能

・昼間の連携は取れるが夜間は厳しい

・病院と施設の温度差がある

・どの医療機関にどのように依頼(契約等)の話をすればいいのかわからない

WAMが行った「2024年度診療報酬改定の影響に関するアンケート」では、病院側に対して協力医療機関になっていない理由を聞いたところ、「介護保険施設等から依頼がなかったため」が最多の46.2%だったことも分かっています。

これらを総合すると、連携体制構築に特養側が奥手になっている様子とも解釈できます。WAMでは「(経過措置期間中に)近隣の医療機関の数や機能が変わる可能性は低い。すでに期限は決まっていることから、未着手の施設は早めに連携に向けた取組みを始めたほうがよいであろう」との見解を示しています。

特養における退所時情報提供加算 算定状況

続いて、退所時情報提供加算について。従来は介護老人保健施設と介護医療院の入所者が医療機関に退所する際、生活支援上の留意点などの情報提供を評価する退所時情報提供加算は、今改定で特養などの施設系サービスでも算定可能となりました。

これについて「算定している」と回答した施設は16.9%にとどまりましたが、「今後算定する予定」と回答した施設は37.8%に上り、合計すると過半数を占めています。

独立行政法人福祉医療機構「2024 年度介護報酬改定に関するアンケート調査」より

調査時点で算定していない施設が挙げた理由は、「医療機関へ退所する入所者がいなかった」が42.3%で最多。次いで「かかるコスト・手間が加算額に見合わない」が34.6%、「必要性を感じていない」が9.7%などでした。「医療機関へ退所する入所者がいなかった」との回答割合は、算定状況に関する回答の「今後算定する予定」と近い水準であることから、該当者がいれば算定がより進むと考えられます。

独立行政法人福祉医療機構「2024 年度介護報酬改定に関するアンケート調査」より

また、従来から早朝、夜間、深夜に入所者が急変した場合に対応する配置医師緊急時対応加算が設けられていましたが、今改定では新たに日中の駆けつけ対応についても加算が算定できるようになりました。

特養における配置医師緊急時対応加算 算定状況

配置医師緊急時対応加算は、算定要件を満たした上で事前の届出が必要となりますが、本アンケート調査で届出状況を確認したところ、最多は「届出する予定はない」が58.0%。続いて「今次改定前から届出している」が21.5%、「今後届出する予定」が11.7%、「今次改定に合わせて届出」が8.8%でした。「今次改定に合わせて届出した」と「今後届出する予定」を合わせると20%超に達し、日中の加算区分新設で算定可能になった施設が一定割合存在することが分かります。

独立行政法人福祉医療機構「2024 年度介護報酬改定に関するアンケート調査」より

ただし、届出していない施設に理由を尋ねた結果は、「緊急対応が可能な配置医師がいない」が41.6%で最も多く、次いで「救急搬送で対応できている」が38.1%で続き、上位2つで8割を占めました。地域によって緊急往診まで対応可能な配置医師を見つけるのは困難で、結果的に急変時に救急搬送となっている実情をうかがわせる結果です。

今回の介護報酬改定では、特養と医療機関の連携体制の整備や新たな加算制度の導入が進められましたが、このように調査結果からは現場がこれらの施策に対応する上での課題も明らかになっています。特養が入所者にとって安心できる生活環境を提供し続けるためには、地域医療資源の活用や施設間の協力が不可欠です。引き続き、各施設での取り組みが求められるでしょう。

独立行政法人福祉医療機構「2024 年度介護報酬改定に関するアンケート調査」

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