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約8割の特養で介護職員等処遇改善加算(I)を算定~2024年度介護報酬改定の影響に関するアンケート調査から(1)

独立行政法人福祉医療機構(WAM)は、このほど2024年度の介護報酬改定の影響に関するアンケート調査の結果をまとめました。

今回の改定の一番大きな変化は、介護職員の処遇改善を目的に、これまで複数に分かれていた処遇改善関連加算を「介護職員等処遇改善加算(以下、新加算)」として加算(I)~(V)までの5段階に一本化し、加算率を引き上げたことです。調査結果では、回答施設全体の8~9割が新加算(I)と(II)を算定していることがわかりましたが、サービス類型別や開設主体別では違いも浮き彫りになりました。

調査の回答施設は特別養護老人ホームが769施設、通所介護が778施設、認知症対応型通所介護が67施設、訪問介護が312施設、介護老人保健施設が165施設、通所リハビリテーションが174施設、介護医療院が25施設、認知症高齢者グループホームが225施設、小規模多機能型居宅介護が135施設です。

「キャリアパス要件V」が加算(I)のハードルに

サービス類型別では、特別養護老人ホーム(以下、特養)の新加算(I)算定率が79.6%と最も高い水準でした。以下、算定率の高い順に介護老人保健施設が67.3%、通所リハビリテーションが67.2%、認知症対応型通所介護が65.7%、小規模多機能型居宅介護が63.0%。一方、介護医療院の新加算(I)算定率は44.0%で最低。これ以外では認知症高齢者グループホームが52.4%、通所介護が58.0%、訪問介護が61.2%でした。

新加算(I)の算定率が最低の介護医療院は、最下位の新加算(IV)を算定している施設割合が24.0%、一切算定していない施設が12.0%と他のサービス類型と比較して突出して高いのも特徴です。なお、新加算(II)の算定率は、特養、介護医療院の20%未満を除くと、高齢者認知症グループホームが37.3%と最も高く、その他は30%前後と一定数存在します。

新加算(II)算定施設が一定のボリュームになっている点について、WAMでは「各サービス類型とも新加算(I)と(II)の加算率の差よりも(II)と(III)の加算率の差の方が大きい」「新加算(I)の算定に必須のキャリアパス要件V(介護福祉士などの配置)の達成がサービス類型によっては困難」であるために当面の目標を新加算(II)の算定としている施設が一定数あるのではないかと分析しています。

キャリアパス要件Vは、訪問介護では特定事業所加算、その他では主にサービス提供体制強化加算など介護福祉士の配置割合や勤続年数が要件に含まれている加算の算定状況で評価されます。とりわけ後者の勤続年数を考慮すると、算定を目指す施設・事業所にも一定の業歴が必要になると推測されます。

実際、今回の調査で回答施設数が多い特養を代表例に新加算(I)と(II)それぞれを算定する施設の開設年を比較すると、新加算(I)の算定施設は新加算(II)の算定施設に比べ、開設年の平均値で5年、中央値で8年、業歴が長いこともわかりました。これは特養以外でサンプル数の多い通所介護、訪問介護、認知症高齢者グループホームでも同様でした。

さらに施設の開設主体によっても、新加算の算定状況には差があることがわかりました。通所介護を例にとると、新加算(I)の算定率は、社会福祉法人の73.1%に対し、営利法人は31.9%と、40%以上の開きがありました。

今回の調査では、改定前の介護職員等特定処遇改善加算(I)の算定率も聴取しており、この数字は社会福祉法人が71.6%、営利法人が29.9%だったとのことから、WAMでは「介護職員等特定処遇加算の算定状況がほぼそのまま新加算(I)・(II)の算定率へとつながっているものと思われる」との見方を示しています。

もっとも開設主体別での新加算(I)の取得状況を訪問介護で見ると、こちらは社会福祉法人が68.3%、営利法人が50.0%で、通所介護に比べて差が縮まっています。また、訪問介護では新加算(I)・(II)の算定率の合計は、社会福祉法人が90.5%、営利法人は91.0%でほぼ同水準でした。

これについてWAMでは、介護労働安定センターの令和5年度介護労働実態調査から、訪問介護員の平均年齢は50.5歳で、同調査の介護職員全体の46.7歳よりも高いこと、その背景には訪問介護員になるためには介護職員初任者研修を修了など一定の要件があるため、全体的にベテラン勢の多い職場で、なおかつ訪問介護はとりわけ人手不足で有効求人倍率も高いことから、経営環境が苦しい最中でも、人材獲得のために積極的な処遇改善に取り組んでいるためではないかと分析しています。

独立行政法人福祉医療機構「2024 年度介護報酬改定に関するアンケート調査」

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