弊社契約施設様よりいただいた実際のご相談事例をもとに,了解を得てご紹介しています。

看護師

施設の中にESBL陽性の方が3人いらっしゃいます。痰からと尿から検出されました。

現在は血圧計(手首で測定)と体温計は別にしていますが、血圧計の数に限りもあり、どこまで区別してやらなければいけないのかわかりません。

初歩的な質問で申し訳ないのですが、教えていただけますか?

皮膚科医 青柳

感染症対策ですね。特に多剤耐性菌の予防策ということですね。最近は市中の健常人から分離されることもあり、問題となっています。

多剤耐性菌が検出された人を、以下「保菌者」とします。

前提として、通常の入所生活においては保菌者に対して過剰に制限を設けたり、特別扱いをする必要はないです。過剰に対応して差別につながらないようにしたいですね。

皮膚科医 青柳

1.平常時の対応

主に接触感染で伝播するため、スタッフの手洗いと手指のアルコール消毒が一番重要です。ノロウイルスやクロストリジウム・ディフィシルというような病原体はアルコールが効かないのですが、MRSAやESBLといった薬剤耐性菌はアルコールが効きます。

体温計も使用した後はアルコールで拭くという一般的な対応で十分です。咽頭や尿から菌が検出されていても、咳や痰、褥瘡感染や下痢など周囲に耐性菌を広げやすい症状がなければ、上記のような一般的な対策で問題はなく、個室管理の必要もありません。

皮膚科医 青柳

2.症状出現時の対応

症状がある場合には、感染者はなるべく個室対応とします。そして、糖尿病やステロイド内服などの免疫が低下している人はなるべく同室にするのを避けたほうが良いです。

多剤耐性菌による感染症として症状がある場合には基本的には医療機関での治療が必要となるので、早めの医療機関の受診が一番の対策となります。

看護師

くわしい説明をありがとうございます。

アルコールはスプレーにいれて、該当する方の居室に設置してあります。体温計も普段はセンサー式なので問題ないのですが、センサー式で高くでれば脇に挟むもの(個別で準備してます)を使用しています。

ただ、血圧計は1台を3人で使用しており、フロアーも違うと緊急のときに困るんです。手首式ですが、内側をアルコールでスプレーすれば全ての方と共用可でしょうか?アルコール消毒も必要ないのでしょうか?

皮膚科医 青柳

感染対策にしっかりと力を入れていて素晴らしいですね。医療現場でもどんどんと抗菌薬が効かない菌が増えていて困っているので、そういう対策をしっかりしているのはとても安心感があります!

皮膚科医 青柳

手首式の血圧の測定部分が布ですからね。アルコールが効く病原体であれば、アルコールのスプレー式で大丈夫です。拭けるものはアルコール綿で拭くのが一番です!

内科医 山村

青柳先生の言うとおり,測定後に血圧計の内側をアルコール清拭すれば大丈夫です。

ご存知かもしれないですが「スタンダードプリコーション」という院内感染予防の考え方があります.これは感染や,多剤耐性菌のあるなしにかかわらず,全ての人(患者,医療者,介護者)の体液,分泌物(汗は含まない)は感染源になりうるという考え方です。

内科医 山村

保菌者さんの場合も,血液,体液,便,尿,喀痰など細菌が潜んでいそうなものにふれる時は,感染防御が必要ですが,傷のない皮膚に触れるのであれば,アルコール清拭で問題ないとされています.もし,手首で口や鼻を拭うようなことがあれば,血圧測定前に手首のアルコール消毒もすればなお安心ですね。

体温計,血圧計以上に,もっとも利用者さんに触れる,介護者の手指消毒が何より大事です。

看護師

いつも本当にありがとうございます、とても安心してご相談出来て嬉しく思っております。

手首式もアルコールスプレーで大丈夫とのことなので、安心して使用出来ます。

看護師

介護する側の感染症対策を再度念をおしてすすめていきたいと思います。

以上、ESBL産生菌保菌者への対応方法についてのご相談でした。ご相談ありがとうございました。