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【ニュース解説】6月からの介護職員等処遇改善加算 詳細なルールを定めた事務連絡を発出

介護職員に関する従来の3種類の処遇加算を1本化し、今年6月からスタートする介護職員等処遇改善加算(以下、新加算)について厚生労働省老健局老人保健課はこのほど新たに詳細なルールを規定した事務連絡通知を発出しました。

今回の介護報酬改定に関し、介護業界でもっとも関心が高い項目がこの新加算と言っても過言ではないと思われます。そこで今回は同通知に関連して、厚生労働省が事業者向けに出した告知内容や手続き方法などについて改めて解説します。

まず、これまでの処遇改善関連の加算を改めて紹介します。最初に2012年度介護報酬改定で直接介護サービスに従事する職員(看護職員や管理者などは対象外)の賃上げを目的とした「介護職員処遇改善加算」が新設されました。2019年度改定では、主に勤続年数の長い介護福祉士の処遇改善を目指す目的で「介護職員等特定処遇改善加算」、さらに2021年度改定では基本給などの引き上げを目指す「介護職員等ベースアップ等支援加算」がそれぞれ新設されました。

ただ、この結果として介護職員処遇改善加算の(I)~(III)をベースに、介護職員等特定処遇改善加算の(I)、(II)、非加算、介護職員等ベースアップ等支援加算の有無が各事業所で異なる結果となり、最上位の介護職員処遇改善加算の(I)、介護職員等特定処遇改善加算の(I)、介護職員等ベースアップ等支援加算を算定している事業所から、最下位の介護職員処遇改善加算の(III)のみの事業所まで18種類の加算取得パターンが存在することになりました。特養での実際の加算率を見ると、最上位で12.6%、最下位で3.3%と約10%もの差がつきました。

この煩雑さゆえに申請を躊躇するケースもあったことから、新加算はこれらを統合し、新加算(I)~(IV)までの4段階に簡素化。この結果、特養での加算率は最上位の新加算(I)が14.0%、最下位の新加算(IV)が9.0%と差も縮小されます。もっとも従来は下位の加算率だった事業所での加算率が新加算で自動的、半ば「濡れ手に粟」的に引き上げられるわけではありません。最下位の新加算(IV)でも今までよりハードルの高い算定要件が課されます。

厚労省リーフレットより

介護職員等処遇改善加算の算定要件

厚労省リーフレットより

算定要件は大枠で▽キャリアパス要件▽月額賃金改善要件▽職場環境等要件、の3つ、さらに各要件内で細目要件が定められ、合計で9つの細目要件があります。最上位の新加算(I)を算定するためには細目項目の9つすべて、最下位の(IV)でも5つを満たす必要があります。細目要件を以下に列挙します。

キャリアパス要件I(新加算I~IVが対象):介護職員の職位、職責、職務内容に応じた任用の要件などを定め、それに応じた賃金体系の整備(2024年度中は年度内対応の誓約で可)

キャリアパス要件II(新加算I~IVが対象):介護職員の資質向上の目標や具体的な計画を策定し、それに沿った研修機会の確保(2024年度中は年度内対応の誓約で可)

キャリアパス要件III(新加算I~IIIが対象):経験や資格に応じて昇給する仕組み、または一定の基準で定期に昇給を判定する仕組みの設定(2024年度中は年度内対応の誓約で可)

キャリアパス要件IV(新加算I~IIが対象):経験・技能のある介護職員のうち1人以上は、賃金改善後の賃金額が年額440万円以上である(2024年度中は月額8万円の改善でも可。小規模事業所で加算が少額な場合などは適用免除)

キャリアパス要件V(新加算Iが対象):サービス類型ごとに一定割合以上の介護福祉士などを配置(サービス類型ごとに特定事業所加算、サービス提供体制強化加算、入居継続支援加算などの算定が必須)

厚労省リーフレットより

月額賃金改善要件I(新加算I~IVが対象):新加算(IV)の加算額の2分の1以上を、基本給か毎月支払う手当に充当(2025年度から適用。現在、加算による賃金改善の多くを一時金で行っている場合は、一時金の一部を基本給・毎月の手当に付け替える対応が必要になる場合あり)

月額賃金改善要件II(新加算I~IVが対象):前年度と比較して、現行のベースアップ加算の加算額の3分の2以上を用い、基本給か毎月支払う手当の引き上げを実施(現行のベースアップ加算未算定の場合のみ適用)

厚労省リーフレットより

職場環境等要件I(新加算I~IIが対象):設定されている6つの区分ごとに各2つ以上取り組む。ただし生産性向上は3つ以上、うち一部は必須。実施した取り組みの内容を情報公表システムなどで具体的に公表(2024年度中は区分ごとに1つ以上の取り組みでも可。具体的な取り組み内容の公表は不要)

職場環境等要件II(新加算III~IVが対象):6つの区分ごとにそれぞれ1つ以上取り組む。ただし生産性向上は2つ以上必要(2024年度中は全体で1つ以上で可)

厚労省リーフレットより

今回の加算統一は、かなり大きな変更になるために前述のように各要件には激変緩和の条項が追加されています。もっともそれでも十分とは言えないため、2024年度中の経過措置(激変緩和措置)として、暫定的に新加算IVの下に新加算Ⅴ(1)~Ⅴ(14)の14段階の加算が設置されます。これにより2024年度中は各事業所が現行3加算の取得状況に基づく加算率を維持したうえで、改定による加算率の引上げを受ける体制を整えることができる仕組みが作られました。特養の場合、最上位の新加算Ⅴ(1)が12.4%、最下位の新加算Ⅴ(14)が4.7%まで段階的に設定されています。

すでに昨年12月段階で厚労相と財務省との大臣折衝により、介護職員について2024年度は2.5%、2025年度は2.0%のベースアップを目指すことで合意しています。今回の新加算創設は、このことも踏まえ2年分の処遇改善を折り込んだ措置となっています(2026年度分は賃上げの進捗や他産業の動向などを踏まえて直前の予算編成過程で判断する予定)。このため厚労省は新加算や2024年度の税制改正で新設された「賃上げ促進税制」の活用などを組み合わせて、各事業者にこの水準のベースアップを実現するよう求めています。実際の賃上げに際しては、2024年度に一気に2年分を措置する、あるいは2024年度に2025年度分を一部だけ前倒し措置することも可能です。なお、賃上げ促進税制とは、事業者が賃上げを実施した場合に賃上げ額の一部を法人税などから控除できる制度で、大企業・中堅企業では賃上げ額の最大35%、中小企業は最大45%を法人税などから控除できます。

やや煩雑になる加算取得に関わる申請手続き

厚労省リーフレットより

4月までは現行の3加算での取得となり、加算取得に関わる申請手続きは一時的にやや煩雑になります。処遇改善計画書については、都道府県の補助金、現行3加算、新加算のいずれも4月15日が申請期限です。ただ、新加算については2024年6月15日までに計画の変更を届け出た場合には受理されます。

体制届出(体制等状況一覧表)は、現行3加算は4月1日が申請期限ですが、指定権者の判断で4月15日まで延長が可です。また、4月1日期限の場合も4月15日までは変更が受理されます。新加算では居宅系サービスが5月15日、施設系サービスが6月1日が申請期限です。ただし、新加算について現行3加算と一緒に提出したい場合は、2024年度の旧3加算に係る体制届出と同じ4月1~15日で届出が可能です。また、いずれも6月15日までは変更が受理されます。

介護保険最新情報Vol.1209「「介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え 並びに事務処理手順及び様式例の提示について (案)」の送付について」

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【関連資料】

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