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【ニュース解説】医療機関側から見た「介護施設との連携状況」は〜2024年度診療報酬調査より

2024年度の診療報酬・介護報酬の同時改定は、医療と介護の連携強化に向けた重要な一歩となりました。介護報酬改定では介護保険施設側に地域包括ケア病棟などを持つ医療機関を協力医療機関として届出し、必要な往診・訪問診療・入院体制を構築することを運営基準として義務化しました。

同時にこれに対する相補関係として、診療報酬改定では、協力医療機関として連携する介護保険施設の入所者の病状が急変・悪化した場合に協力医療機関側が自院で入院を受け入れることを評価する「協力対象施設入所者入院加算」、介護保険施設入所者の病状が急変した際の往診を評価する「介護保険施設等連携往診加算」が新設されました。

この医療機関と介護保険施設との連携状況について、医療福祉機構(WAM)が昨年末に公表した「2024年度診療報酬改定の影響等に関するアンケート」の結果からは、医療機関側から見たこの連携状況が明らかになりました。今回はその結果を紹介します。調査は2024 年 9 月 9 日~10 月 11 日まで行われ、回答数は 298医療法人(322病院)、回答率は 20.3%でした。

介護保険施設の協力医療機関「なっている」74.5%「今後なる予定」5.3%

同調査での医療機関と介護保険施設との連携状況に関する結果では、医療機関のうち介護保険施設の協力医療機関に「なっている」が74.5%、「今後なる予定」が5.3%。回答医療機関全体の8割弱が協力医療機関としての取り組みに前向きです。協力医療機関(予定を含む)となっている介護保険施設の種類(複数回答)は、介護老人保健施設が78.2%、介護老人福祉施設(以下、特養)が69.6%、介護医療院が28.0%でした。

一方で、20.2%が「今後もなる予定はない」と回答しています。その理由については、最多は「介護保険施設等からの依頼がなかったため」が46.2%で、以下順に「介護保険施設等からの受け入れを見込んでいないため」が35.4%、「近隣に対象となる介護保険施設等がないため」が7.7%などです。

独立行政法人福祉医療機構「2024年度 診療報酬改定の影響等に関するアンケート」より

この点については、同じWAMの2024年度の介護報酬改定の影響に関するアンケート調査の特養からの回答結果では「どの医療機関にどのように依頼(契約等)の話をすればいいのかわからない」など、連携に戸惑っている現状も浮かび上がっており、それが協力医療機関の「介護保険施設等からの依頼がない」という回答に結び付いている可能性があります。

協力対象施設入所者入院加算 届出率は25.3% 定期的なカンファレンスがネックに

協力対象施設入所者入院加算の届出率は25.3%にとどまり、それ以外は「届出を行う予定はない」が33.9%、「届出を行いたいが、満たすことが難しい施設基準がある」が21.4%、「協力医療機関がすべて特別の関係にあるため、届出ができない」が19.5%という結果になりました。

独立行政法人福祉医療機構「2024年度 診療報酬改定の影響等に関するアンケート」より

協力対象施設入所者入院加算は、協力医療機関の開設者・代表者と介護保険施設側の開設者・代表者が同じ場合、協力医療機関の代表者が介護保険施設の代表者の親族などの場合、協力医療機関の役員の3割以上が介護保険施設側の親族などの場合は、そもそも算定できません。このような場合は良くも悪くも医療機関と介護保険施設側の関係が密なため、収益目的で医療機関と施設側の間で入所者を意図的に入院させるような事態を防ぐためです。

気になるのが「届出を行いたいが、満たすことが難しい施設基準がある」と回答した医療機関にとってどのような施設基準がネックになっているかです。これについての調査結果(複数回答)は、「介護保険施設等とのカンファレンスを定期的に実施すること」が49.1%、「24時間連絡が取れる体制を整えること」が36.4%、「緊急時に入院できる病床を確保すること」が36.4%でした。

介護保険施設等連携往診加算 届出率は11.7% 24時間体制の構築が課題

介護保険施設等連携往診加算はさらに届出率が低く、11.7%に過ぎませんでした。これに対し、「届出を行う予定はない」という回答が54.5%を占め、そのほかは「届出を行いたいが、満たすことが難しい施設基準がある」が17.9%、「協力医療機関がすべて特別の関係にあるため、届出ができない」が16.0%。

協力対象施設入所者入院加算と同様に基準を満たすことが難しいと回答した医療機関に、クリアすることが困難な基準を尋ねた結果(複数回答)では、「24時間往診が可能な体制を整えること」が71.7%、「介護保険施設等とのカンファレンスを定期的に実施すること」が39.1%、「24時間連絡が取れる体制を整えること」が17.4%となりました。

独立行政法人福祉医療機構「2024年度 診療報酬改定の影響等に関するアンケート」より

この調査結果を俯瞰すると、医療と介護の連携に関しては、主に施設基準のハードルと地域ごとで有する医療・介護連携状況が大きく影響すると言えそうです。同時に施設基準のクリアでは、財政的・人的リソースの不足もあると考えられます。施設基準や財源は一朝一夕に解決するものではなく、今後の国レベルの考え方次第という点もありますが、地域内での連携は地域間格差があるとはいえ、市区町村を主体に形は整えられています。その意味では医療機関側も介護保険施設側も市区町村との情報交換などを密にしながら、連携の場を設ける努力が必要と言えるかもしれません。

独立行政法人福祉医療機構「2024年度 診療報酬改定の影響等に関するアンケート」

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