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【協力医療機関連携加算とは】算定要件や協力医療機関の定義を解説

2024年介護報酬改定により、「協力医療機関連携加算」が創設されました。
これは介護施設の入所者の緊急時、医療体制が十分でないことを踏まえたもので、医療機関との連携体制の強化を促すものです。

また、介護施設の医療機関との連携体制の構築は2027年から義務付けられることになり(現在3年間の経過措置期間中)、厚生労働省は協力医療機関連携加算の単位数を今年度のみ高く設定することで、早期の対応を促しています。

この記事では、協力医療機関連携加算の概要や算定要件を解説し、さらに2027年に迫る介護施設と医療機関との連携構築義務化についても詳しく解説します。

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協力医療機関連携加算とは

協力医療機関連携加算とは、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院、認知症対応型共同生活介護について、協力医療機関との実効性のある連携体制を構築するため、入所者または入居者の現病歴等の情報共有を行う会議を定期的に開催することを評価する加算です。

協力医療機関連携加算の単位数、算定要件とは

単位数

(1)1~3の要件を満たす場合 100単位/月(令和6年度)50単位/月(令和7年度~)(新設)

  1. 入所者等の病状が急変した場合等において、医師又は看護職員が相談対応を行う体制を常時確保していること。
  2. 高齢者施設等からの診療の求めがあった場合において、診療を行う体制を常時確保していること。
  3. 入所者等の病状が急変した場合等において、入院を要すると認められた入所者等の入院を原則として受け入れる体制を確保していること。

(2)それ以外の場合 5単位/月(新設)

算定要件等

協力医療機関との間で、入所者等の同意を得て、当該入所者等の病歴等の情報を共有する会議を定期的に開催していること。

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【2024介護報酬改定】介護施設等と医療機関の連携強化について

「協力医療機関」の定義

協力医療機関は病院ならどこでもいいというわけではなく、複数の要件があります。
すでに提携している医療機関がある場合でも、次の定義を満たしているか確認が必要です。

ここでは協力医療機関の定義と、詳細について介護報酬改定の解釈通知を元に紹介します。

厚生労働省が定める協力医療機関の定義

  1. 常時対応体制の確保
    入所者等の病状が急変した場合などに、医師または看護職員が相談対応を行う体制を常時確保していること。
  2. 診療体制の確保
    介護施設から診療の求めがあった場合に、診療を行う体制を常時確保していること。
  3. 入院受け入れ体制の確保
    入所者等の病状が急変し、入院を要すると認められた場合などに、原則として入院を受け入れる体制を確保していること。(病院に限る)
    施設入所者専用の病床を確保する必要はなく、一般的に地域で在宅療養を行う者を受け入れる体制があればよい。

協力医療機関は、施設から近距離にあることが望ましい。

施設の入所者の病状の急変時等に、相談対応や診療を行う体制を常時確保した協力医療機関及び緊急時に原則入院できる体制を確保した協力病院を定めなければならない。その際、例えば同条第1項第1号及び第2号の要件を満たす医療機関と同条第1項第3号の要件を満たす医療機関を別に定めるなど、複数の医療機関を定めることにより要件を満たすこととしても差し支えない。

連携する医療機関は、在宅療養支援病院や在宅療養支援診療所、地域包括ケア病棟(200 床未満)を持つ医療機関、在宅療養後方支援病院等の在宅医療を支援する地域の医療機関(以下、在宅療養支援病院等)と連携を行うことが想定される。なお、令和6年度診療報酬改定において新設される地域包括医療病棟を持つ医療機関は、前述の在宅療養支援病院等を除き、連携の対象として想定される医療機関には含まれないため留意すること。

また、第3号の要件については、必ずしも当該介護老人福祉施設の入所者が入院するための専用の病床を確保する場合でなくとも差し支えなく、一般的に当該地域で在宅療養を行う者を受け入れる体制が確保されていればよい。

なお、協力医療機関との連携に係る義務付けの適用に当たっては、令和6年改正省令附則第6条において、3年間の経過措置を設けており、令和9年3月 31 日までの間は、努力義務とされているが、経過措置期限を待たず、可及的速やかに連携体制を構築することが望ましい。

協力医療機関連携加算の解釈通知(抜粋)

・本加算は、高齢者施設等と協力医療機関との実効性のある連携体制を構築する観点から、入所者の急変時等に備えた関係者間の平時からの連携を強化するため、入所者の病歴等の情報共有や急変時等における対応の確認等を行う会議を定期的に開催することを評価するものである。

・会議では、特に協力医療機関に対して診療の求めを行うこととなる可能性が高い入所者や新規入居者を中心に情報共有や対応の確認等を行うこととし、毎回の会議において必ずしも入居者全員について詳細な病状等を共有しないこととしても差し支えない。

・ 「会議を定期的に開催」とは、概ね月に1回以上開催されている必要がある。ただし、電子的システムにより当該協力医療機関において、当該施設の入所者の情報が随時確認できる体制が確保されている場合には、定期的に年3回以上開催することで差し支えないこととする。なお、協力医療機関へ診療の求めを行う可能性の高い入所者いる場合においては、より高い頻度で情報共有等を行う会議を実施することが望ましい。

・会議は、テレビ電話装置等(リアルタイムでの画像を介したコミュニケーションが可能な機器をいう。以下同じ。)を活用して行うことができるものとする。この際、個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」 、 厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等を遵守すること。

2027年から介護施設の医療機関との連携が義務化

2024年度の介護報酬改定により、介護施設は協力医療機関と連携し、入所者の病状急変時への対応を義務付けられることになりました。

現在は3年間の経過措置期間中であり、2027年にはすべての介護施設で協力医療機関との連携体制が必要になります。
現場の対応を促すため、厚生労働省は協力医療機関連携加算の単位数を今年度のみ特に高く設定しているため、施設管理者はできるだけ早い対応が求められます。

介護施設と医療機関との連携で義務化される内容

この改定により介護施設は医療機関と連携し、次の要件を満たす義務が課されます。

  1. 常時対応体制の確保:入所者の病状が急変した場合、医師または看護職員が相談対応を行う体制を常時確保すること。
  2. 診療体制の確保:診療の求めがあった場合に診療を行う体制を常時確保すること。
  3. 入院受け入れ体制の確保:入所者の病状の急変が生じた場合、施設の医師または協力医療機関等の医師が診療を行い、必要に応じ入所者の入院を原則受け入れる体制を確保すること(病院に限る)。

これらの要件を満たすために、介護施設は要件を満たせる医療機関と協力体制を構築することが求められています。

連携構築には、医療機関側から指摘されている課題も

義務化される介護施設と協力医療機関との連携構築ですが、連携を求められている医療機関側からは、課題も多く指摘されています。

以下に「介護施設の「協力医療機関」に関する会員向けアンケート調査」で実際に寄せられた医療機関の声を紹介します。

・医療と介護の温度差を感じる場面が多々あり、医療はエビデンスに基づく対応、介護は哲学に基づく対応、患者・利用者の見解の相違を感じる。共通パスを活用し、パスに記載した項目について、目的と意味を確認しないと病状急変時の状況で困惑する。

・入院治療後、医療依存度が高くなった患者をどこまで施設が対応できるかについてこれまでは、病院は施設に対して「治療が終わった」と言うのみ、施設は病院に対して「施設は対応の限界」と言うのみで、お互いの溝を埋める具体的な行動が少なかった。そのため施設の受け入れが難しいとされた患者については、すぐに療養型病院への方針転換という対応になっている現状がある。地域完結の地域包括ケアシステムを推進するためには、例えば、病院側がただ退院させるだけでなく、施設療養に必要な処置や対応方法を医療の視点から伝達するための研修をする、施設は医療処置対応を要する利用者の受け入れを積極的にトライする、など、双方の交流を密にして、地域で看護・介護ができるための努力が必要になると考える。

・月1回会議実施におけるマンパワーと手間が現実的でない。配置医師における会議は通常の診察があるため、その頻度が妥当なのかという疑問有。

・必要な連携と理解はしておりますし、実際にカンファレンスを開催してみて普段話せなかったような内容も意見交換が行えて有意義ではあります。しかし、カンファレンスに要する手間や時間を考えると介護報酬に比べて診療報酬上のメリットが少ないような印象があります。

・連携に関して介護報酬側には加算がついたが、医療機関側の報酬加算がIT連携以外はつかないのは片手落ちではないか。

・施設と病院が情報共有するICT活用は難しい。コスト面や既存のシステムとのダブルスタンダードが現場における大きな弊害となる。

・感染症対策の連携について医師会等の団体で研修、訓練の参加が望ましいと考える。

・急変時に往診が困難な場合がある

・全ての介護施設との連携は、通常診療もあり困難な状態であるのが現状である。

・日常的には外来診療に来院すること、病状相談、入院対応も含め相談できる体制は確立されており、今後、早期入院・受診などの対応については検討の余地があると考えている。地域連携室・入退院支援室と施設側で双方の訪問活動も行う中で調整したいと考えている。

・今回の改正を受け、近隣の介護施設にあらためて状況を問い合わせると施設開設時から契約している協力医療機関 (在宅療養支援病院・診療所ではない)があるため、新たな連携(契約)は考えていないとの発言が多く聞かれた。これまでも、協力医療機関として契約していない施設から入院要請はあり、コロナ禍においても近隣施設の受け入れを行ってたが現状は上記の通りです。指定基準のための協医療機関であり、機能的な連携に対して介護施設の認識は低いのが地域の現状である。

・法人内かつ併設型施設の場合の対応について、情報が不足している。法人外施設の場合、会議等を行うのが容易ではない。

引用:【医療介護連携】在宅療養支援病院の74.4%が自法人外の介護施設と協力医療機関契約を締結

介護施設と協力医療機関との連携構築には、これらの課題を解決するための対話と仕組み作りが欠かせません。

協力医療機関連携加算を有効活用するためにも、早期の積極的な取り組みが求められています。

特養における協力医療機関連携の構築状況は

令和4年度発表の「特別養護老人ホームと医療機関の協力体制に関する調査研究」によると、特養における協力医療機関数は、「1機関」が36.4%で最も多く 、次いで「2機関」が 24.1%と続いています。

協力医療機関の種別は、「その他の病院」が 50.6%で最も多く、次いで「地域医療支援病院」が33.4%と続いています。協力医療機関の緊急対応ありは、特養全体では23.2%。協力医療機関の連携内容は、入所者の診療(外来)の受入が最も高く78.8%、次いで入所者の入院の受入れが 60.6%でした。緊急の場合の対応(配置医師に代わりオンコール対応)は17.4%でした。

社会保障審議会 介護給付費分科会(第231回)「高齢者施設等と医療機関の連携強化」より

協力医療機関連携加算に関するQ&A

Q.協力医療機関連携加算について、「入所者の同意を得て、当該入所者の病歴等の 情報を共有する会議を定期的に開催している場合」とあるが、病歴等の情報を協力 医療機関と共有することに同意が得られない者に対して算定できるか。

A.協力医療機関連携加算は、高齢者施設等と協力医療機関との実効性のある連携体制を構築することを目的とした体制加算であり、入所者全員について算定されるもの。なお、 協力医療機関に対して病歴等の情報を共有することについて同意が得られない入所者で あっても、当該入所者の急変時等において協力医療機関による診療等が受けられるよう 取り組むことが必要。

介護保険最新情報vol.1270より)

Q.協力医療機関連携加算について、「電子的システムにより当該協力医療機関において、当該施設の入居者の情報が随時確認できる体制が確保されている場合には、定期的に年3回以上開催することで差し支えない」とあるが、随時確認できる体制とは具体的にどのような場合が該当するか。

A.例えば、 都道府県が構築する地域医療介護総合確保基金の 「ICTを活用した地域医療ネットワーク基盤の整備」事業を活用した、地域医療情報連携ネットワーク(以下「地連NW」という。 )に参加し、当該介護保険施設等の医師等が記録した当該介護保険施設等の入所者の診療情報及び急変時の対応方針等の情報について当該地連NWにアクセスして確認可能な場合が該当する。

この場合、 当該介護保険施設等の医師等が、介護保険施設等の入所者の診療情報及び急変時の対応方針等についてそれぞれの患者について1ヶ月に1回以上記録すること。なお、 入所者の状況等に変化がない場合は記録を省略しても差し支えないが、 その旨を文書等により介護保険施設等から協力医療機関に、少なくとも月1回の頻度で提供すること。

介護保険最新情報vol.1245より)

Q.要支援2について算定できるのか。

A.要支援者については、「介護予防認知症対応型共同生活介護費」の対象となるが、これについては、協力医療機関連携加算は設けていないことから、算定できない。

Q.協力医療機関連携加算は、グループホームのショートステイ利用者は対象となるか。

A.本加算制度は協力医療機関と利用者の現病歴等の情報共有を行う会議を定期的に開催することを評価するものである。ショートステイ等既に居宅サービスを利用している者の情報共有は居宅サービスのケアマネジャー等が行うものであるため、当該加算の対象とはならない。

Q.連携することが想定される医療機関として、在宅療養支援病院や地域包括ケア病棟を持つ医療機関等が挙げられているが、当該基準の届出を行う医療機関をどのように把握すればよいか。

A.診療報酬における施設基準の届出受理状況については、地方厚生局のホームページに掲載されているので参考とされたい。

Q.「入院を要すると認められた入所者の入院を原則として受け入れる体制を確保していること」とあるが、入所者の急変時には必ず協力医療機関に搬送しなければならないのか。

A.入所者の急変時等に必ず協力医療機関に搬送しなければならないということではなく、状況に応じて救急車を呼ぶなど、臨機応変に対応いただきたい。

Q.協力医療機関連携加算について、入所者の病歴等の情報を共有する会議に出席するのはどんな職種を想定しているか。

A.職種は問わないが、入所者の病歴その他健康に関する情報を協力医療機関の担当者に説明でき、急変時等における当該協力医療機関との対応を確認できる者が出席すること。

介護保険最新情報vol.1225より)

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