厚生労働省が11月16日に開催した第231回社会保障審議会介護給付費分科会の資料から、介護・高齢者施設等と医療機関の連携強化についてお伝えします。
2024年の介護報酬改定における高齢者施設等と医療機関の連携強化のポイントとして、厚労省は「協力医療機関との連携体制の構築」「入院時(退所時)の医療機関への情報提供」「医療機関からの患者受け入れの促進」の3点を挙げています。
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協力医療機関との連携体制の構築
介護保険施設は運営基準において入所者の急変や入院治療に対応するため協力病院を定めることとされています。また、特定施設や認知症グループホームについては、協力医療機関を定めることとされています。一方で、協力医療機関との連携の内容は様々であり、入所者の急変時等において協力医療機関が実施する対応として、電話等による相談対応や、外来での対応、往診の実施など対応が分かれています。さらに、入院加療が必要となった場合について、介護施設・福祉施設からの入院患者のうち、急性期一般入院基本料を算定する病棟へ入院する患者が75%となっており、現行多くの患者が入院をしている医療機関について、当該医療機関が提供しうる医療の内容と、要介護者等の高齢者が求める医療の内容に乖離がある可能性が指摘されていました。加えて、協力医療機関と休日夜間等における対応等を直近で確認した時期について、約半数の施設が「施設の設立時」であるとの調査もあり、必ずしも定期的な確認を行っていない状況がありました。
そうした状況に対し、厚労省は、次回改定時に1年間の経過措置を設けた上で、
①入所者の急変時等に、医師又は看護職員が夜間休日を含め相談対応する体制が確保されていること。
②診療の求めを受け、夜間休日を含め診療が可能な体制を確保していること。
③当該施設での療養を行う患者が緊急時に原則入院できる体制を確保していること
の3要件を満たす協力医療機関を定めることの義務化を提案しました。ただし、この3要件は複数の協力医療機関にまたがっても良い、としているほか、特定施設と認知症グループホームについては①と②について努力義務とすることを提案しています。
また、定期的(年1回以上)に、協力医療機関と緊急時の対応等を確認し、医療機関名等を指定権者(許可権者)に提出すること、入所者の現病歴等の情報共有を行う会議を定期的に開催することを評価すること、特定施設については、医療機関連携加算の要件を見直すこと、入所者が協力医療機関に入院した際に、入所者の病状が軽快し、施設での療養が可能となった場合において、当該者が速やかに再入所できるよう努めること、を提案しています。
入院時(退所時)の医療機関への情報提供
退所時の情報提供については、老健と介護医療院においては運営基準に基づく様式、特養と特定施設においては配置医等からの診療情報提供書により情報提供がなされているが、現病歴等の診療状況に関する情報を記載する項目が中心で、生活支援上の留意点や認知機能等にかかる情報提供が少ない点が指摘されていました。
これについて、厚労省は次回改定で、老健と介護医療院の退所時情報提供加算について、医療機関へ退所した場合に、生活支援上の留意点等の情報を提供した場合についても新たに評価することを提案。宅に退所した場合についても、生活支援上の留意点等の情報を適切に提供することとし、医療機関への退所の場合の評価との整合性がとれるよう見直しを行う、としています。また、特養、特定施設、認知症グループホームについても同様に、医療機関へ退所した場合の情報提供にかかる加算の創設を提案しています。
医療機関からの患者受け入れの促進
新型コロナウイルス感染症への対応においては、病床のひっ迫を防ぐため、退院基準を満たした患者の介護施設での受け入れの促進が行われました。しかしながら、また、介護老人保健施設において、入所前の場所が病院・診療所である利用者は、自宅や居住系サービスから入所した利用者と比べ、利用者の医療的状態が不安定である者が多いというデータが示されており、医療機関から利用者を多く受け入れた場合、従事者に対する負荷も高まることが想定されます。
これに対し、厚労省は次回改定において、介護老人保健施設が当該施設の空床情報について、地域医療情報連携ネットワーク等のシステムによる定期的な情報共有や、急性期病床を持つ医療機関の入退院支援部門に対する定期的な情報共有等を行っている場合において、入院日から一定期間内に医療機関を退院した者を受け入れた場合について初期加算における評価の引き上げを行うことを提案しています。
厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会(第231回)「高齢者施設等と医療機関の連携強化(改定の方向性)」
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