福祉医療機構が公表した「特別養護老人ホームの経営状況について」から、黒字施設・赤字施設別の経営状況を解説していきます。
黒字施設・赤字施設別の経営状況
収益面では、従来型、ユニット型ともに特養入所、短期入所とも定員数は赤字施設のほうが少なく、利用率も低いことがわかります。特に両型とも赤字施設での短期入所利用率の低さは顕著です。
さらに従来型、ユニット型のいずれも、赤字施設では介護職員処遇改善加算(I)や科学的介護推進体制加算(I)、(II)の算定率が低く、特に後者の算定率は赤字施設で明らかに低いのが特徴です。その結果、利用者単価は、赤字施設のほうが従来型では135円、ユニット型では217円、定員1人当たりサービス活動収益も従来型では19万円、ユニット型に至っては30万6000円も低くなっています。
一方、人件費を見ていくと、赤字施設の場合、利用者10人当たり従事者数が従来型で0.52人、ユニット型で0.95人多く、従事者1人当たり人件費も従来型で17万円、ユニット型で4万2000円高くなり、人件費率は赤字施設のほうが従来型で8.3ポイント、ユニット型で9.1ポイント高くなっています。
配置基準などを考えれば、利用者当たりの人員数の施設間格差はある程度の範囲に収まることは自明で、つまるところ赤字施設の場合は入所利用率や各種加算算定率の低さによる脆弱な収益力ゆえに、人件費などの経費負担が重くのしかかっていると解釈することができます。
独立行政法人福祉医療機構 「2022 年度 特別養護老人ホームの経営状況について」
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