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認知症の中核症状にはどんな種類があるのか ~シリーズ 認知症を学ぶ

認知症は読んで字のごとく認知機能に障害が発生する症候群です。その症状は中核となる認知機能障害の症状とそれに伴って起こる周辺症状(BPSD)があります。認知症の発症にともなって障害される認知機能は、主に「注意」「遂行機能」「記憶」「言語」「視空間認知」「行為」「社会的認知」があります。こうした症状の出方や程度は認知症の原因となる病気によっても異なります。それぞれについて解説します。

全般性注意障害

全般性注意障害は、必要な作業に注意を向けて持続させることや、注意を向ける対象を適宜選択・配分したりすることが難しくなります。このため仕事や日常作業でのミスが増えます。

また、他人からは、ぼんやりして反応が遅く見えます。さらに注意力が低下するため、一度に処理できる情報量が減り、やや複雑なことを理解することも難しくなります。認知症の原因となる病気の違いに関わらず、比較的早期からこの症状が認められます。

遂行機能障害

遂行機能障害は、目的をもって計画を立て、物事を段取りよく実行することが困難になります。たとえば食事の支度をするにしてもご飯を炊く、おかずをつくるといった単一の作業はできても、同時進行すなわち炊飯器でご飯を炊いている間におかずをつくるなどができません。

また、1回の外出で複数の場所に立ち寄ることができるはずなのに、1回ごとに帰宅したりしてしまいます。脳の中で遂行機能を担う中心となるのは前頭葉であり、前頭側頭型認知症(前頭側頭葉変性症)で最も典型的にみられる症状ですが、ほかのタイプの認知症でも認められます。

記憶障害

認知症の症状として誰もが思い浮かべるのが、この記憶障害だと思われます。端的に言えば、物忘れです。認知症の記憶障害には、大きく分けて「前向性健忘」と「逆向性健忘」の2つがあります。前向性健忘とは、認知症の発症後に新たに起きたことを覚えられないというもので、これに対し逆向性健忘は発症前のことが思い出せません。一般的に認知症発症の初期は前向性健忘にとどまりますが、認知症が進行すると逆向性健忘の症状も現れます。認知症の中でもアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症の初期に目立つ症状です。

ちなみに「健忘」の意味を「体は健康なのに物忘れをする」と勘違いしている人が少なくありませんが、「健」という字には「程度がはなはだしい」という意味があり、「健忘」の正確な意味は「物忘れがはなはだしい」というものです。

言語障害

言語障害は、会話やその内容の理解、復唱や読み書きの障害を意味する「失語」と文字が思い出せない、文字を書き間違う「失書」があります。前者は前頭側頭型認知症やアルツハイマー型認知症、後者は各種認知症全般で初期に現れやすい症状です。

計算障害

計算障害はまさに文字通り暗算はおろか筆算もできない状態を指します。各種認知症で初期から認められる症状です。

視空間認知障害

視空間認知障害とは、図形の書き写しや他の人が示した手指の形を真似できないなどの「構成障害」、よく知っているはずの場所で道に迷う「地誌的失見当識」、単なる模様を虫などに見間違える「錯視」や実際にはないものが見える「幻視」などの症状を指します。

「構成障害」はアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、「地誌的失見当識」はアルツハイマー病の初期によく認められる症状です。また、「錯視」「幻視」はレビー小体型認知症で特徴的な症状で、たとえば「大量の毛虫が壁を這い上がっている」などかなり具体的なものが多いことが知られています。

行為障害

行為障害には、腕や手の細かい動きがぎこちなく円滑な動きができない「肢節運動失行」、慣習的な動作(人に手を振るなど)がうまくできない「観念運動性失行」、使い慣れているはずの道具をうまく使えない「観念性失行」などがあります。

社会的認知障害

社会的認知障害は、相手の表情などから感情を読み取ったり、周囲の状況を認識したりする能力が低下し、結果として場の状況に適した行動がとれない、あるいは社会的に常識外れの行動をとる障害です。

具体例を挙げると、「明らかな冗談に対して激怒する」「誰がどう見てもお堅い企業や相手を短パン・Tシャツ・サンダル履きで訪問する」「突如わけもなく万引きをする」などが該当します。一般的には前頭側頭型認知症で顕著な症状です。

さてここで紹介した認知機能障害の症状は、いずれの場合でもほぼ初期、すなわち軽度の状態でのものです。認知症では臨床的認知症尺度(Clinical Dementia Rating:CDR)というスコアリングを行う評価尺度を用い、軽度、中等度、重度の3段階で重症度を判定します。

記憶障害を例に挙げると、中等度では、高度に学習して得られたものは維持されるものの、最近のことはほぼ忘れるレベルであり、重度になるとほぼ断片的な記憶しかありません。また、中等度では日時の認識はほぼ失われ、時々自分がどこにいるかもわかりません。重度になると、昔から馴染みのある同居家族などがようやく分かる程度になります。

また、介護レベルで言うと、軽度の場合は日常生活に必要な活動についてある程度掛け声などをかければできますが、中等度では着衣や衛生管理など身の回りのことにも介助が必要となります。重度になると、介護なしで生活することはほぼ不可能になります。

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