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認知症のBPSD(行動・心理症状)とは(1)BPSDを引き起こす3つの要因 ~シリーズ 認知症を学ぶ

認知症というと、物忘れや判断力の低下といった症状を真っ先に思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、認知症の人では記憶や思考の問題以外にも、様々な行動や心理面での症状が現れることがあります。これらの症状は「Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia」、略称でBPSDと呼びます。で、日本語では「認知症の行動・心理症状」と訳されます。

BPSDは1996年に国際老年精神医学会によって定義された概念で、認知症に伴う中核症状(記憶障害、失語、失行、失認、実行機能障害)とは区別されます。中核症状が脳の器質的な変化、すなわち構造的・形態的な性質の変化によって必然的に起こるのに対し、BPSDは様々な要因が複合的に作用して現れる二次的な症状です。

BPSDはとりわけ患者の家族や介護者にとっても大きな負担となることが多く、認知症ケアにおいてBPSDのコントロールは非常に重要です。そのためにはこれらの症状の種類や起こる原因を理解することが適切な対応や支援につながります。

BPSDを引き起こす3つの要因

BPSDは認知症による脳の機能低下(認知機能障害)を土台として、様々な要因が重なって現れます。主な要因は「身体的要因」「環境的要因」「心理的要因」です。

身体的要因

身体的要因は、その時々の体調や基礎疾患などが関係します。たとえば風邪を引いた場合などや時折発生する痛み、あるいは服用薬の副作用などによる体調悪化が起きた場合、認知症高齢者は体調を言葉でうまく表現できないことがあり、それがBPSDに該当する行動症状として現れることがあります。

具体的には、便秘や尿路感染症、脱水症状なども大きな要因となります。また、聴力や視力の低下により外界からの情報が適切に入らなくなることで、不安や混乱が生じることもあります。薬剤性のBPSDも重要で、特に抗コリン作用のある薬剤や睡眠薬の不適切な使用が症状を悪化させることがあります。

環境的要因

環境的要因は、住み慣れた場所からの転居、周囲の騒音や照明の変化、人間関係の変化など周囲の環境の変化や刺激であり、これがBPSD発症の引き金となることがあります。

認知症の人は新しい環境への適応が困難であるため、入院や施設入所、自宅でも模様替えなどの小さな変化でも大きなストレスとなります。また、介護者の変更や家族関係の変化、日課の乱れなども症状の悪化要因となります。騒音や不適切な照明、室温の問題なども見過ごされがちな要因です。

心理的要因

心理的要因は、不安や恐怖、混乱、孤独感など本人の気持ちや感情の変化で、これが症状に影響を与えます。

特に重要なのは、認知症の初期段階では本人が記憶や判断力の低下を自覚しており、「以前の自分と違う」という認識が強い不安を生み出すことです。また、プライドを傷つけられたと感じる体験や、役割を失ったという喪失感も大きな心理的要因となります。

これらの要因は必ずしも単独なかりでBPSDの引き金になるわけではなく、複雑に絡み合って、さまざまなBPSDにつながることが少なくありません。

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