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認知症の治療薬を学ぶ  (1)アセチルコリンエステラーゼ阻害薬 ~シリーズ 認知症を学ぶ

現状の医学では治癒が難しい認知症ですが、治療薬がないわけではありません。もっともその他の高齢者がかかりやすい病気と比べ、その種類は限られており、また効果も限定的です。

また、すべてのタイプの認知症に治療薬があるわけではなく、現時点ではアルツハイマー型認知症に適応を有する治療薬が6種類、レビー小体型認知症に対する治療薬が1種類です。現在ある治療薬はその作用の仕方で3種類に分類できます。4回シリーズで分類別に解説していきます。

アセチルコリンエステラーゼ阻害薬

ヒトの脳内では神経細胞を介した情報伝達に神経伝達物質と呼ばれる化学物質が関与し、さまざまな機能を果たしています。神経伝達物質は複数存在しますが、その中の1つであるアセチルコリンは記憶や学習に関係しています。アルツハイマー型認知症になると、アセチルコリンを作り出す神経細胞が徐々に死滅することでアセチルコリンの量が減ってしまい、記憶障害などが起こるとされています。

アセチルコリンは通常、脳内に過剰に存在すると神経を過度に興奮状態にしてしまうため、一旦作り出されたアセチルコリンはアセチルコリンエステラーゼという酵素により分解され、また新たなアセチルコリンが作り出されるという循環が起きています。

そこでアセチルコリンの量が減っているアルツハイマー型認知症の患者では、アセチルコリンエステラーゼの働きにストップがかけられれば、減少したアセチルコリンの量を増やすことができます。この原理に基づいて開発された治療薬がアセチルコリンエステラーゼ阻害薬です。

1999年に日本のエーザイが発売したドネペジル(主な商品名:アリセプト)が初のアセチルコリンエステラーゼ阻害薬で、かつ世界初の認知症治療薬です。同じ作用の仕方をする薬としては2011年にガランタミン(主な商品名:レミニール)、リバスチグミン(主な商品名:イクセロンパッチ、リバスタッチ)が発売されました。同じ作用ですので、これら3種類内での併用はできません。3種類ともすでに新薬の特許期間が終了しているため、ジェネリック医薬品があります。

この3種類の薬の承認された適応は、いずれもアルツハイマー型認知症ですが、ドネペジルだけがレビー小体型認知症の適応を有しています。また、ドネペジルの承認適応では重症度に関する明確な規定はありませんが、それ以外の2種類は軽度あるいは中等度のアルツハイマー型認知症とされています。

ドネペジルは世界初の認知症治療薬ということもあり、錠剤、細粒、D錠、内服ゼリー、ドライシロップなど豊富な剤形があります。これは本人が服用する場合だけでなく、介護者が服用させることを念頭に飲みやすさ、飲ませやすさを考慮した結果です。D錠とは正式には口腔内崩壊錠と言い、舌の上で唾液に触れると数十秒で崩壊し、水なしで服用できるものです。また、ジェネリック医薬品の中には貼付剤として発売されているものがあります。

ガランタミンも錠剤、OD錠(前述のD錠と同じ)、内服液の3種類があります。リバスチグミンは貼付剤、いわゆる貼り薬で、錠剤などの内服を嫌がる患者に使われます。添付文書上では、背中、二の腕、胸のいずれかに貼るようにと記載されていますが、一般的には本人が勝手に剥がしてしまうことがないよう、介護者がはがしにくい背中に貼ることが多いようです。

ドネペジルは1日1回3mgから投与を開始し、徐々に増量をしていきます。高度アルツハイマー型認知症では最大1日1回10mgまで増量が可能です。ただし、症状を見ながら適宜投与量の増減が必要です。

レビー小体型認知症でも用法・用量は同じですが、投与開始12週間後までに認知機能検査や患者・家族・介護者から自他覚症状の聴取などで有効性評価を行い、総合的に評価してベネフィットがリスクを上回ると判断できない場合は、投与を中止することが定められています。この措置は、レビー小体型認知症に対するドネペジルの効果が、承認取得時の臨床試験では認められたものの、発売後の臨床試験では明確な効果が確認できず、患者による有効性に差があると考えられたためです。

ガランタミンでは1回4mgを1日2回投与からスタートし、最大1回12mgの1日2回投与まで増量が可能です。この最大用量までの増量の際は、最短でも4週間ごとに1回4mgずつ増量します。

リバスチグミンは、1日1回4.5mgから開始し、原則として4週毎に4.5mgずつ増量し、1日1回18mgを維持量としますが、患者の状態に応じて1日1回9mgで開始し、4週後に18mgに増量することもできます。

これらの治療薬に共通した頻度が高い副作用は、食欲不振、吐き気(悪心)、嘔吐、下痢です。また、リバスチグミンは貼り薬ということもあり、これに加えて貼った部分のかゆみや皮膚炎が起こり得ます。また、3種類とも頻度は1%未満ですが、重篤な副作用として重度の不整脈など心臓への影響が報告されています。

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