
11月2日に開催された第273回社会保障審議会介護給付費分科会で提示された、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム:特養)の改定に向けた方向性について解説します。
今回提示されたのは、賃上げなど介護保険施設全体に共通するものではなく、施設分類別の個別論点で、特養に関しては
(1)介護老人福祉施設における透析患者受け入れ・支援に対する評価
(2)介護老人福祉施設の配置基準等の解釈
(3)経過的小規模介護老人福祉施設等の基本報酬の見直し
(4)加算の趣旨・目的やその取得状況等を踏まえた加算の見直し
(5)安定的な事業運営のための職員配置
の5点です。今回はこのうちの(2)の「介護老人福祉施設の配置基準等の解釈」について解説します。
特養の介護支援専門員(ケアマネジャー)の兼務要件
まず、これまでの分科会の議論ではこれに関連して以下のような意見が出されています。
「同一敷地内における複数サービスを包括的に運営するための配置基準に関して、今後さらに介護の担い手が減少することを想定し、限られた人材で最大限のサービスを提供するために、同一敷地内の他事業所定員との合算を認めることにより、介護従事者に無理がない形で効率的な運営を行うことが可能となるよう、包括的な配置基準を検討するべき。また、絶対数の少ない職種については、タスクシフト、タスクシェア、オンライン、外部機関からの応援・連携による事業の継続など、様々な関与の仕組みの構築が必要」
今回示された改定の方向性は、地方分権改革に関する提案や自治体ごとの指導格差を踏まえたものとして2つあります。
1つは、特養の介護支援専門員(ケアマネジャー)の兼務要件です。現行の基準省令では、特養の介護支援専門員は「専らその職務に従事する常勤の者」と定められており、入所者の処遇に支障がない場合に限り「当該施設の他の職務」への兼務が認められています。
しかし、特養の敷地内や同一建物内に併設されている短期入所生活介護(ショートステイ)の計画作成等への兼務は認められていませんでした。
今年7月に開催された地方分権改革有識者会議の第188回提案募集検討専門部会では、とくに人口減少が進む離島やへき地においてケアマネジャーの確保が極めて困難であることを踏まえ、「常勤要件の撤廃」や「居宅介護支援との兼務解禁」、「ケアマネジャーと同等の能力を有する者(資格失効者など)の代替配置」といった大幅な規制緩和が求められていました。
これに対し厚生労働省は、入所者の処遇に関するケアマネジメント機能の安定的な確保、公正中立性や適切なケアマネジメント実施の担保の観点から、常勤要件の全面撤廃やケアマネジャーと同等の能力を有する者を代替的に位置付けることは困難と回答。ケアマネジャーの資格失効者については、ケアマネジャーの更新制廃止や研修の見直しに伴い、再研修に代わる簡素な研修受講で復職できる仕組みを検討していることを明らかにしていました。
一方、入所者の処遇に支障がない場合、現状でも勤務する介護老人福祉施設の他の業務に従事することを認めているため、その要件や範囲については必要な検討を行うとして、事実上の規制緩和の方向性を明言していました。
今回示された方向性は、居宅介護支援との兼務を認めないことを改めて明示しつつ、居宅介護支援事業所以外の併設事業所の業務で、本体施設の業務と一体不可分なものについては、「本体施設の業務と兼務可能であることを明確化する」としました。
令和7年度老人保健健康増進等事業による調査では、特養が同一敷地などで提供しているサービスとして最も多いものがショートステイ、次いで居宅介護支援、通所介護となっています。今回の方向性により同一敷地内での併設ショートステイなど実質的に一体不可分な業務を行っている場合、特養のケアマネジャーによる兼務が可能であることが、通知などで明確化されると予想されます。兼務範囲の拡大が実現すれば、限られた有資格者を活かした効率的な事業運営が期待されます。

入所者が入院した際のベッド確保ルールの解釈
もう1つの方向性は入所者が入院した際のベッド確保ルールの解釈です。指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準の第19条では、入所者が入院した場合、「入院後おおむね3月以内に退院することが明らかに見込まれるとき」は、退院後に円滑に再入所できるようベッド確保などの便宜を図るよう定めています。さらにこの解釈通知では、入院中のベッドをショートステイなどに有効活用(ベッドの計画的転用)して差し支えないと明記されています。

しかし、一部の自治体の実地指導などでは、「退院の見込みの有無にかかわらず、入院後3か月間はベッドを必ず空床のまま確保しておかなければならない」という誤った指導がなされ、施設の稼働率維持や短期入所の円滑な受け入れが阻害されているとの苦情が寄せられていました。
これを受けて、今回示された方向性は「入所者の入院期間中の取扱いに係る規定の解釈について、退院の見込みにかかわらず入院時に3か月間空床とすることを求める趣旨ではない旨を運営基準上明確化してはどうか」というものです。
退院の見込みがある間やその見込みが立たない場合に機械的に空床を維持させる運用を否定し、基準の本来の趣旨を明確化にするものです。これにより、施設は安心して入院中の空床をショートステイなどに振り向けることが可能となり、経営の安定化と地域ニーズへの即応が両立しやすくなります。
厚生労働省 社会保障審議会(介護給付費分科会)第273回資料
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