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【ニュース解説】進行する介護職員の高齢化 新たに気をつけるべきリスクとは?

日本の医療・介護分野における「少子高齢化」というキーワード。医療・介護関係者ではこのキーワードがサービス受益者(利用者あるいは患者)の増加とそれを支える潜在的な職員数の減少という文脈で理解していることがほとんどだと思います。しかし、実は高齢化に関しては医療・介護を「提供する側」にも当てはまります。今回はその実態とそれがもたらす可能性について考えてみたいと思います。

「介護職員の高齢化」実態

介護労働安定センターが毎年行っている介護労働実態調査によると、最新の令和4年(2022年)度(調査時期は同年10月)の調査結果では、介護労働者の平均年齢は50.0歳です。職種別の平均年齢は、訪問介護員が54.7歳、介護職員が47.3歳、サービス提供責任者が50.0歳、生活相談員が46.2歳、看護職員が52.2歳、介護支援専門員が53.0 歳。

さて約10年前はこれがどうだったかをここで提示してみます。2013年の同じ調査では全体の平均年齢が45.6歳、職種別は訪問介護員が51.9歳、介護職員が42.3歳、サービス提供責任者が47.2歳、生活相談員が41.3歳、看護職員が48.5歳、介護支援専門員が47.7歳です。現場職員で言えば、ここ10年でおおむね5歳以上平均年齢が上昇しています。

公益財団法人 介護労働安定センター「令和4年度介護労働実態調査」より

ちなみに厚生労働省の賃金事情等総合調査によると、他の業種の労働者の平均年齢は概ね30歳代後半から40歳代前半となっており、介護業界では労働者の高齢化がより顕著です。そしてこの平均年齢は今後さらに上昇すると予想されています。

その理由は2つあります。まず、2013年4月から施行された改正高年齢者雇用安定法により、60歳などで定年を迎えた社員のうち希望者全員を65歳まで継続雇用する制度の導入を企業に義務付けたためです。もう一つは慢性的な人手不足で、介護業界はやや俗な表現をすれば「猫の手も借りたい」状況だからです。国も「多様な人材の確保・育成」を掲げ、いわゆるアクティブシニアの介護助手採用などを後押しする動きもあります。

増加する福祉施設の労働災害

労働者の高齢化は労働災害上の大きな懸念材料です。厚生労働省が発表している「令和4年(2022年)労働災害発生状況の分析等」によると、社会福祉施設での労働災害により死傷者数は1万2780 人。前年比では0.13%減少したものの、5年前の2017年比で46.3%も増加しています。1年間の労働者1000人当たりに発生した死傷者数の割合を示す年千年率は2.846 で、これも5年前と比べ30.9%の増加です。

厚生労働省「令和4年労働災害発生状況の分析等」より

事故の型では「動作の反動・無理な動作」が35.0%で最多。次いで「転倒」が34.3%と、この2つで約7割を占めています。この2つは死傷年千人率で見ても全産業平均と比較して高く、とりわけ「転倒」については、50 歳以上の女性雇用者が占める割合が5年前の33.3%から37.3%1に増加したことを大きな要因であると指摘しています。実際、年齢別発生状況を見ても約6割が50歳以上となっています。

「高齢労働者がいる」ことを前提とした業務フローや安全管理対策を

この状況から各介護事業者はどのような対策を検討すべきでしょう?まずは、多くの職場では一般に生産人口と言われる15~64歳、その中でもより若年の労働者を念頭に業務フローや安全管理対策を策定していることと思います。これをまず根本から見直さねばなりません。前述のように人材不足の介護業界では、高齢者の雇用はこれからますます進むことが予想され、一般論として心身機能が年々低下してくる高齢者に配慮なしに、従来通りの業務フローや安全管理対策を維持するのはもはや時代の流れにそぐわないと言い切っても過言ではないからです。

もちろんIT化やロボットの活用なども必要ですが、一般に高齢労働者はこうしたものに習熟していない場合も多いので、操作マニュアルや研修も既成のものをそのまま流用するだけでは不十分と言えます。その意味では既成のマニュアルなどを事業所ごとにカスタマイズした補助資料などの用意も求められます。また、業務の簡素化・効率化もさることながら、アウトソーシングの活用などより抜本的な業務の見直し・再構築も検討が必要になると考えておいた方が良いでしょう。

公益財団法人 介護労働安定センター「令和4年度介護労働実態調査」

厚生労働省「令和4年労働災害発生状況の分析等」

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