「介護の職場」を辞める時〜令和5年度介護労働実態調査労働者調査から(2)

公益財団法人介護労働安定センターが公表した、令和5年度の介護労働実態調査の労働者調査結果から、就労及び労働条件、賃金、能力開発の状況、仕事への満足度や悩みといった就業意識等について解説するシリーズの2回目。労働者調査は令和5年10月に行われ、20,699名からの回答がありました。

8割以上が「転職組」　異業種からの転職は男性で多く

前職の有無について、「ある」と回答したのが 83.5％でした。直前の職場での仕事内容については、「介護関係の仕事」が 41.7％で最も多く「介護・福祉・医療関係以外の仕事」の 30.7％、「医療関係の仕事」の 11.6％、「介護以外の福祉関係の仕事」の 3.5%と続きました。男女別では、直前の職場での仕事内容が「介護・福祉・医療関係以外の仕事」は男性 37.3％、女性 28.9％となっており、男性の方が異業種からの入職割合が多くなっています。

直前の介護の仕事を辞めた理由「職場の人間関係」「理念と合わない」

直前職が介護関係の仕事だった介護従事者の直前職を辞めた理由について、「職場の人間関係に問題があったため」が 34.3％で最も多く、「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため」の 26.3％、「他に良い仕事・職場があったため」の 19.9％、「収入が少なかったため」の 16.6％と続きました。年齢層別では「職場の人間関係に問題があったため」、「己分の将来の見込みが立たなかったため」、「収入が少なかったため」が年齢層が低いほど多くなる傾向がみられました。職種別では、看護職員は「職場の人間関係に問題があったため」、ＰＴ・ＯＴ・ＳＴ等は「他に良い仕事・職場があったため」と「己分の将来に見込みが立たなかったため」、介護職員では、施設系（入所型）において「収入が少なかったため」が 21.9％で他のサービス系型別と比べて最も多くなっています。

職場の人間関係に問題「上司に対する不満」多く

前職を辞めた理由のうち、「職場の人間関係に問題があったため」の具体的な状況を尋ねたところ、「上司の思いやりのない言動、きつい指導、パワハラなどがあった」が 49.3％で最も多く、続いて「上司の管理能力が低い、業務指示が不明確、リーダーシップがなく信頼できなかった」の 43.2％、「同僚の言動（きつい言い方・悪口・嫌み・嫌がらせなど）でストレスがあった」の 38.8％、「ケアの方法など仕事上の課題に関する上司や同僚との意思疎通・意見交換がうまくいかなかった」の 26.6％の順となり、上司に対する不満が多くあげられました。

経営理念や運営のあり方等に係る退職　その詳細は

退職理由のうち、「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため」の具体的な状況を尋ねたところ、「経営の効率性やリスクを過度に重視しているため、介護の質の向上の取り組みが二の次になっていた」が 30.9%、「介護の質の向上の手法・方向性が自分の理想とは異なっていた」が 30.6％、「無駄な業務が多く職員の業務量負担への配慮が弱かった」が 30.0％とほぼ並び、「仕事の仕方に関する職員の提案を、管理者が聞いてくれなかった」が 28.2%で続きました。年齢層別では、働く中心層である 35 歳から 55 歳未満で「介護の質の向上の手法・方向性が自分の理想とは異なっていた」が第 1 位になっています。職種別では、介護職員では「無駄な業務が多く職員の業務量負担への配慮が弱かった」が33.5％で第1位となっているほか、施設系（通所型）の介護職員では「仕事の仕方に関する職員の提案を、管理者が聞いてくれなかった」が、居住系の介護職員では「介護の質の向上の手法・方向性が自分の理想とは異なっていた」が 35.7％で、それぞれ他の系サービス型よりも高くなっていました。