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【介護業界の課題】人材不足に経営難…課題の背景と解決策をわかりやすく解説

日本の介護業界は、急速な高齢化率の上昇の影響からいくつかの大きな課題を抱えています。

高齢者の増加により高まることが予測される介護ニーズに対し、生産年齢人口は減少しており、介護業界に限らず厳しい人材不足が予想されます。
2035年には約297万人の介護人材不足が予測され、これが医療・介護サービスの提供に悪影響を及ぼす懸念があります。

この課題に対処するためには、介護職の処遇改善、働き方改革、技術やITの有効活用などの整備が急務です。

本記事では、これら介護業界が抱える課題とその背景、課題解決策についてわかりやすく解説します。

介護業界に関わる日本の社会問題とは

介護業界の課題を知るためには、その背景にある日本の社会問題について理解する必要があります。
まずは日本の高齢化や介護に関わる社会問題についてわかりやすく解説します。

差し迫る2025年問題、高齢化率がピークになる2040年問題

2025年問題と2040年問題とは、それぞれの年に顕著になると考えられる社会問題を相称するものです。

2025年には団塊の世代が全て75歳以上の後期高齢者となり、全人口の17.8%にあたる約2,180万人に達すると予測されています。この時期に医療・介護費が急増し、約32万人もの介護人材不足が予想されています。高齢者の急増に伴い、社会保障制度や経済に大きな影響が出る可能性があります。

さらに2040年には65歳以上の高齢者が全人口の34.8%に達する、高齢者率のピークを迎えます。15歳~64歳の生産年齢人口は2025年時点の推計と比較して1096万人も減少する見込みです。

高齢者増加に伴い医療・介護ニーズが増大する一方で、生産年齢人口の急減により経済が縮小し、社会保障制度が立ち行かなくなるなどの問題が噴出するという懸念があります。

こうした事態に対処するため、行政や各企業は包括的で持続可能な取り組みが求められます。
女性や高齢者、障碍者などを含め希望する誰もが働ける「働き方改革」や、AIやロボット技術などを導入し人手不足に対処するため業務の効率化を行うなど、積極的な革新が必要です。

参考:内閣府(2022)「令和4年版高齢社会白書」
厚生労働省「第8期介護保険事業計画に基づく介護人材の必要数について(令和3年7月9日)」別紙1

高齢化に地域格差

日本の高齢化は地域格差があることも問題となっています。具体的には次のような問題があります。

  • 地域の経済力によって高齢者福祉に格差
    地域ごとの経済力によって高齢者福祉に大きな差異が生まれています。特に地方都市や過疎地域では、高齢者向けの施設や医療サービスが不足し、生活の質に影響を与えます。
  • 働き手の数の地域格差
    都市部では働き手が集まり高齢者が比較的少ない一方で、地方や離島などでは高齢者の比率が高いことがあります。これにより、地域によっては働き手不足から高齢者のニーズに適した福祉や医療サービスの提供が十分にできなくなる可能性があります。

これらの問題に対処するには、地域ごとの特性を踏まえつつ、均等な高齢者福祉の提供や地域社会の振興に向けた政策が必要です。

介護業界の課題は「人材不足」と「経営難」

介護業界が抱えている課題は、大きく分けて「人材不足」と「経営難」だと言えます。
それらの課題について現在の状況から将来の展望まで詳しく解説します。

介護業界の課題1.介護人材の不足

介護人材の不足は深刻な社会問題であり、2035年には約297万人の需給差が生じると予測されています。

この人材不足は高齢者の急増とともに医療・介護サービスの提供に大きな影響を与え、社会保障費の増大やサービスの低下を引き起こす懸念があります。

介護業界の人材不足の原因は次のことが考えられます。

給与・待遇の問題

介護職は身体的・精神的な負担が大きく、専門的なスキルや感受性が求められるにも関わらず、その対価が十分でないことが多いため、有能な人材が確保しにくくなっています。

業界全体での給与水準の向上や、働きやすい環境への改善が急務です。

社会的評価の低さ

介護職の過酷な労働条件や高度な専門性の不足、低い給与水準が、人材確保を難しくし、働くモチベーション低下を招き、社会的な評価が他の分野よりも低いとみなされています。
これらの課題を解消するためには、介護職の重要性を理解し、適正な報酬と労働環境を提供する必要があります。

過酷な労働環境

介護職員は人手不足からくる多忙な業務や長時間労働により、十分な休息が取れない職場も珍しくありません。
また利用者のケアや職場の人間関係などで精神的な疲労やストレスがたまり、メンタルヘルスにも問題を抱えやすいとされています。

適切なシフト管理や、ストレスケアのための定期的な面談などの整備が必要です。

介護業界の課題2.増える介護事業所の倒産

介護事業所の倒産件数は2022年に過去最多を記録し、143件で前年比76.5%増になりました。
さらに2023年の12月15日までの統計で、訪問介護事業所の倒産は60件を記録し、過去最多になりました。

画像引用:東京商工リサーチ

参考:東京商工リサーチ「コロナ禍と物価高で急増 「介護事業者」倒産は過去最多の143件、前年比1.7倍増~ 2022年「老人福祉・介護事業」の倒産状況 ~」「2023年の「訪問介護事業者」倒産が 60件に急増  ヘルパー不足や物価高、競合で過去最多を更新

将来的に日本の介護ニーズは高まり続けることが予測されている現状、介護事業所の経営難は大きな問題です。

介護事業所の倒産が増加している要因は次のものと考えられています。

新型コロナウイルスの影響

新型コロナウイルスの蔓延をきっかけに、感染予防対策のための経費や光熱費の増加、施設の利用控えによる収益減などが影響して事業所の経費を圧迫しました。

行政は2021年に補助金等支援策を実施しましたが、その効果が切れたタイミングで倒産が増加したと見られています。

物価高による経営コストでも、介護報酬

海外の情勢や円安などの影響による物価高、原油の価格上昇により、経営コストが増加しました。
他業界の企業なら経営コストが増えた場合、サービス料金を上げるなどの対策が取れますが、介護報酬は厚生労働省が定める介護保険制度によりサービスの種類ごとに定められており、コスト増を報酬で賄うことができず経営難に苦しむ事業所が増えています。

人員不足倒産の増加

介護職員の人員不足による経営難も増えています。
2023年12月15日までの訪問介護事業者の倒産では人手不足倒産が10件となり、年間最多を記録しました。

参考:東京商工リサーチ「2023年の「訪問介護事業者」倒産が 60件に急増  ヘルパー不足や物価高、競合で過去最多を更新

2022年のヘルパーの有効求人倍率は15.5倍に達している上に、現役のヘルパーの4人に1人(24.4%)が65歳以上という「ヘルパーの高齢化」も進んでいます。
収益を上げるために利用者を増やそうにも人員不足からできず、結果倒産するという状況が増えてきています。

参考:厚生労働省「第220回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料

訪問介護職員の人手不足についてもっと詳しく>>

介護業界の経営難についてもっと詳しく>>

介護業界の課題解決に向けた取り組み

介護業界の課題に対処するため、行政と事業所は解決策を模索する必要があります。
ここでは具体的にどのような解決策に取り組む必要があるのか、詳しく解説します。

介護人材の確保

介護事業所が人材を確保するためにできる施策は次のものが考えられます。

柔軟な雇用と労働環境の整備

フルタイムの正社員雇用にこだわらず、時短勤務やパート・アルバイトの雇用の検討など、柔軟に人材を取り入れることが大切です。

また、労働時間や休暇を適正にするなど、職員が離職せず定着しやすい職場作りを模索しましょう。

外国人労働者の採用

将来的に日本の生産年齢人口が減少し、介護だけでなくすべての業界で採用競争が激化することを踏まえると、外国人を積極的に受け入れることで人材の確保がしやすくなると言えます。
異なる文化や言語を受け入れられる職場の整備が必要になります。

継続的な教育・研修の提供

介護に必要なスキルや専門知識について学び続けられる教育・研修プログラムを提供し、介護業界でキャリアアップしやすい環境作りが求められます。

給与・福利厚生の整備

採用競争が日に日に激化する介護業界では、魅力的な給与や福利厚生を打ち出すことが求職者を集めるのに効果的です。

介護事業所での職員の給与・待遇改善策としては、処遇改善加算の申請が有効です。
処遇改善加算は介護職員の待遇を向上させ、介護職の魅力を引き上げるための取り組みの一環であり、キャリアアップの支援や労働環境の改善に努める事業所に対して支給される補助金です。

これにより、法定価格の介護報酬により収益を上げづらい介護事業所でも給与水準が上がり、人が集まりやすい職場の維持が期待できます。

2024年の処遇改善加算について詳しく知りたい>>

ICT化による業務負担の軽減

介護業界における人材不足対策としてICT(情報通信技術)の活用は必須です。

作業の効率アップ

ICTを導入することで、介護作業の一部を自動化できます。
例えば、電子カルテやシフト作成ツールなどが代表的です。これにより、介護スタッフの業務負担が軽減されます。

トレーニング・研修コストの削減

オンライン教育プログラムやトレーニングを活用すれば、教育担当やリーダー職員の負担が減り、新人職員の教育コストを削減できます。

また専門性の高い研修プログラムを利用すれば、スタッフのキャリアップ支援になりモチベーションの維持にも役立ちます。

予防とモニタリング

高齢者の健康状態や行動パターンをオンラインでモニタリングできれば、体調の急変や転倒などに早く気付けたり、予防策を講じることが可能になります。

これにより、介護職員の訪問回数の適正化や緊急対応による残業などを減らせる可能性があります。

介護職員のストレス対策

介護職は感情労働(自分の感情を抑え相手に合わせる必要がある労働)の側面があり、精神的な負担が大きいとされています。

効果的な対策として、上司やリーダー職員と定期的に面談が挙げられます。
職員の抱えるストレスや悩みを早期に把握し、離職につながるような深刻な問題になる前に対策します。また職場の上長と対話を重ねることで、信頼関係やチームワークが構築できます。

悩みだけでなく、キャリアアップの展望を聞いたり提案することで、仕事への意欲を高めることも大切です。

まとめ

介護業界は超高齢化社会の中、2025年問題、2040年問題を前に課題が山積みの状態です。
根本的な課題である介護人材不足や経営難の改善に向け、介護職員の待遇改善やICTの活用など、様々な取り組みが求められます。

将来介護サービスを利用するたくさんの高齢者やその家族が十分に介護サービスを受けられなかったり、介護職員が長時間労働やストレスで苦しんだりしないように、行政や介護事業所は実効性のある対策が期待されています。

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