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【ニュース解説】4月から電気料金はどれだけ上がる? イラン情勢悪化でさらなる値上げの可能性も 

昨今は物価高と人件費高騰により、業種業界問わず値上げが相次いでいます。実は今年4月からは電気料金についても全国ほぼ一斉に値上げされます。また、昨今のアメリカ・イスラエルによるイラン攻撃に伴う世界的な原油・液化天然ガス(LNG)の価格高騰も今後の電気料金の上昇の懸念材料になっています。今回はこれらについて解説します。

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補助金終了&再エネ賦課金引き上げで、4月以降、月5万円の値上げとなる施設も

まず、前提として知っておかなければならないのが電気料金の構造です。これは家庭用も業務用も基本構造は同じで、基本料金+電力量料金+燃料費調整額+再生可能エネルギー発電促進賦課金の4つの合計で構成されます。

昨年10月、「強い経済」をキャッチフレーズに掲げる高市早苗氏が新首相に就任しましたが、その高市首相の下、2025年度補正予算では、暖房需要によって電力使用量が増加する2026年1~3月の間、家計や企業のコスト負担軽減を目的に電気・ガス料金支援策が決定しました。

この支援は、電力量料金を1kWh当たり1~2月は家庭用の低圧電気が4.5円、業務用高圧電気(年間契約量1,000万/㎥未満の企業などが対象)が2.3円、3月はそれぞれ1.5円、0.8円安くなるよう補助金が支出されました。これらの使用分は、一般的に翌月の検針・請求となるため2~4月分の請求書・明細に反映されます。いまのところこの補助金が4月からなくなります。

また、太陽光や風力などの再生可能エネルギー普及のため、電力会社が再生可能エネルギーで発電した電気を買い取る費用を電気使用量に応じて全利用者が負担する「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」は、2025年度(25年5月~26年4月分)は1kWh当たり3.98円でしたが、2026年度は1kWh当たり4.18円に引き上げられます。

まとめると、業務用高圧電気では4月以降、全国的に1kWh当たり1円、電気料金の負担が増えます。もっともこれだけではイメージが湧きにくいかもしれません。ここで関東圏の定員90人の特別養護老人ホームを実例として挙げます。この施設の年間の電気料金は63万3000kWh。前出の電気料金の値上げにより、この施設では電気料金が年間63万3000円、月間換算で5万2850円増加します。

燃料輸入価格や市場と連動する「燃料費調整額」「市場価格調整額」

一方、電気料金は平時でも価格が変動する仕組みがあります。それが基本構造で示した「燃料費調整額」です。これは火力発電で使用する輸入燃料価格の変動を反映させるため1996年から導入されたもので、多くの人が家庭用電気料金の明細書で目にしているはずです。

燃料費調整額の計算は以下のように行います。電力会社によって発電燃料として使用されるLNG、石炭、原油の割合は違うため、電力会社ごとに各燃料別の独自係数が定められています。この係数と各燃料の輸入価格をかけることで、まず最新の平均燃料価格を算出します。各燃料価格については、財務省が発表する貿易統計で示された価格の3ヵ月平均を用います。過3ヵ月平均を使うのは短期的な燃料価格の変動を調整するためです。

さらに各電力会社には、料金認可時に決められた基準燃料価格があり、これから前出の計算で得られた最新の平均燃料価格を引いた差額に調整係数と呼ばれる数字を掛けて1kWh当たりの燃料費調整額が決定します。端的に言うと基準燃料価格よりも最新の平均燃料価格が高い場合に電気料金は上昇し、低い場合は低下します。

また、貿易統計の確定までにはタイムラグがあり、通常、多くの電力会社は料金請求月から5ヵ月前から3ヵ月間の貿易統計に基づく燃料価格の平均値が使用されます。より平たく説明すると、4月に請求される電気料金では前年12月から当該年の1月までの貿易統計のデータが使われます。

ちなみに電力会社や契約プランによっては、前出の電気料金基本構造の4要素以外に「市場価格調整額」という項目が加わる場合があります。これは2000年3月からスタートし、2016年4月からの家庭用も含め全面的に解禁された電力小売り自由化に伴い、従来は自前で発電・送電・売電を行っていた地域電力会社も日本卸電力取引所(JEPX)を通じて電力を調達して販売するようになり、電気料金にこの市場価格の変動を加味する必要が生じたからです。

市場価格調整額は、予め各電力会社が決定した基準市場価格があり、ここからある月のJEPXのスポット取引平均価格を算出し、それと基準市場価格との差額に調整係数を掛けて決定されます。市場価格調整額も燃料費調整額と同様に請求月から5ヵ月前から3ヵ月間の平均市場価格が反映されます。

さて昨今のイラン情勢の悪化により、火力発電用の燃料費高騰が起き、燃料費調整額の上昇に伴う電気料金の上昇を懸念している人は多いと思われます。まず、結論を言うと、そうなる見込みが高いです。ただ、その前に注意しておかなければならないことがあります。

実は2026年4月から燃料費調整額の算定方式そのものが変更される電力会社があります。

まず、燃料費調整額の算定基準となる基準燃料価格は、東北電力、東京電力は引き下げ、中部電力は引き上げられます。このため前2社では燃料費調整額が上振れ、すなわち電気料金が上昇しやすくなります。

また、燃料費調整額の計算に使用する最新の平均燃料価格については、東京電力と中部電力は2026年4月から請求月の3ヵ月前の単月の平均燃料価格へと変更されます。さらに東北電力と中部電力は市場価格調整額についても、請求月から2ヵ月前の単月の市場平均額に変更されます。

これにより直近の燃料価格や市場価格の変化がダイレクトに反映されやすくなる分、消費者はこれまで以上に短期的な燃料価格、市場価格の変動による電気料金の上昇リスクにさらされやすくなります。

一例として原油やLNGの主要産出地域である中東地域で情勢が悪化し、半月だけ原油やLNGの取引価格が急上昇した場合をあげます。従来の燃料費調整額の算定法では、その月も含む3ヵ月の平均で計算されていたため、短期間の情勢悪化による一時的な価格変動の影響もその他の月の価格次第で緩和されてきました。

しかし、今回、東北電力、東京電力、中部電力が変更した算定方法では、大きな価格変動があった月の翌月あるいは翌々月の電気料金はダイレクトに影響を受けます。ちなみに電力の市場価格は、燃料費が世界的に高騰した場合は半ば連動して上昇する傾向があり、燃料費同様に変動することになります。

イラン情勢が電気料金に与える影響は

さてここからは現在のイラン情勢の影響について解説していきます。2月28日、アメリカとイスラエルは、イランの核兵器開発を阻止する目的でイラン領内への空爆を開始しました。これに対する報復として、イランはイスラエル領や中東各国(サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタールなど)のアメリカ軍基地・大使館、インフラ施設にまでミサイルやドローンによる攻撃を繰り返しています。

そして最大の問題は、中東各国から産出される原油、液化天然ガス(以下、LNG)の物流要衝であるペルシャ湾南端・ホルムズ海峡の事実上封鎖を宣言したことです。現在も封鎖は続いており、一部国籍の船舶はイランとの独自交渉によりホルムズ海峡を通過できているものの、いまだ多くの民間船舶がペルシャ湾内から移動できていません。

日本は原油の90%以上、LNGの約6%をホルムズ海峡経由で輸入しており、紛争長期化による国民生活への悪影響は必至です。最新の報道では、アメリカのドナルド・トランプ大統領は、あと2~3週間で攻撃は終了すると表明していますが、トランプ大統領の発言は二転三転が常態化しており、先は見通せません。

今回の攻撃開始後、日本国内では一時、レギュラーガソリン価格が一部店舗で1L当たり200円超となり、政府は緊急的激変緩和措置として3月19日から石油元売り業者に対し、小売価格引き下げを目的とした補助金支給を開始しました。介護業界には具体的にどのような影響が及ぶでしょうか?

端的に言えば、この事態は冒頭から説明してきた電気料金に影響します。前述のように国内の火力発電では重油、LNG、石炭を燃料として使用しており、今回の事態でこれらすべての価格が高騰し、燃料費調整額の上昇につながる可能性が高いからです。石炭価格の高騰はやや意外かもしれませんが、各国の電力会社は重油、LNGが入手しにくくなると、石炭火力発電の稼働率を上げるため、石炭の調達量を増加させるからです。

この3種類のうち、今後価格上昇が最も起きやすいのは日本のLNGの中東依存度が低いLNGです。その理由は2つあります。

1つめの理由は、LNGは原油のような国家備蓄制度がありません。これはLNGが気化しやすく、長期備蓄に向かないことも要因の1つです。民間備蓄量はあるものの3週間分程度にすぎません。

加えて中国、韓国、EUなどはLNGの中東依存度が高く、その大部分を担うカタールのLNG製造プラントがイランに攻撃され、復旧に年単位を要すると発表されました。このうち中国と韓国は国家主導のLNGの備蓄制度はあるものの、気化しやすいLNGの備蓄量は多くありません。このためこれら各国は当然ながら今後調達国の変更に奔走することになります。

しかし、LNGの原料になる天然ガスは原油以上に産出地域の偏在度が高い、つまり産出国が少ないのです。さらにLNGの輸送が可能なLNG船は全世界で700~800隻で、大型原油タンカーの4分の1から3分の1程度しかありません。このような事情から一部の国が輸出国を変更すると、需要が供給を上回るうえに輸送コストが上昇し、世界的なLNG価格の高騰を招きます。

LNG価格がどの程度の電気料金上昇につながるかですが、一般に電力各社の火力発電燃料での重油、LNG、石炭がほぼ同割合、電気料金に占める燃料費を40%と仮定すると、LNG価格が10%上昇すれば、石炭価格の連動上昇や電力会社の調達コスト増なども含め、電気料金は2~4%上昇するといわれています。

そして現在のアジア向けLNGスポット取引価格は、イラン攻撃前の2倍です。この相関関係に単純に当てはめれば、現状の価格水準が続くと将来的に電気料金は20~40%も上昇することになります。

早め早めの経費見直しで電気料金上昇に備えを

介護施設関係者は、この数字を自施設の電気料金に当てはめてみて下さい。おそらく目が飛び出るほどの料金になることは必定です。

今後、政府が何らかの経済支援を打ち出す可能性はありますが、それを当てにするのではなく、今から経費の見直しなどに務める必要があります。もちろんこうした懸念は杞憂に終わる可能性はありますが、運営経費見直しの良い機会と割り切って取り組みましょう。

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