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時間外労働の割増賃金率や育児・介護休業など、施設長が知っておくべき4月からの法改正を解説

割増賃金

2018年に成立した働き方改革関連法により、以前にも増して労働者保護が重視されています。介護業界の場合、管理職が労働関連法規の内容を熟知しないまま労務管理を行えば、さらなるイメージ悪化を招き、恒常的な人手不足をさらに深刻化させてしまう恐れがあります。そこで今回は、介護業界の管理職が知っておきたい2023年4月施行の労働関連の法改正の内容を解説したいと思います。

時間外労働の割増賃金率が改定 業務改善で残業しない職場づくりを

この4月から改正労働基準法に伴い、月当たりの時間外労働時間(1日8時間、週40時間を超える分)が60時間超の場合、超えた分の時間給の割増賃金率が一律50%とされます。すでに大企業では2010年4月から施行されていましたが、中小企業ではこの適用が猶予され、これまでは25%で済んでいました。しかし、4月1日以降は中小企業も50%に統一されます。

介護業界では夜勤がごく普通に行われていますが、深夜勤務は従来から割増賃金率が25%となっています。もし、60時間超の時間外労働として深夜勤務が発生した場合、割増賃金率は50%上乗せされ、75%となります。今回の法改正の目的は、疾患や過労死のリスクを上昇させる長時間労働の是正です。ちなみに割増賃金率50%化の代わりに代替休暇を付与する対応も可能ですが、この場合は労働者代表と雇用側が協定を締結する必要があります。また、代替休暇を取得するか否かは従業員に判断がゆだねられており、割増賃金を払いたくないなどの理由で雇用側が代替休暇の取得を強制することはできません。

今回の法改正がどの程度の影響があるかを試算してみます。時給1500円の従業員が70時間の残業したケースの場合、従来の25%増しならば残業代は13万1250円。これが今回の改正基準を適用すると、1カ月あたりの残業代は13万5000円と、3750円アップします。該当従業員が10人いた場合、月の人件費が4万円弱も上昇することになります。このケースで60時間超分の残業のうち5時間が深夜勤務だった場合は、従来と比べて5625円のアップ。該当者が10人いれば6万円弱の人件費増です。

なお、中小企業の要件は、業種によって異なりますが、介護業界の場合はサービス業に分類されるため、資本金額または出資総額が5000万円以下、常時使用する労働者が100人以下の場合が該当します。要件は事業所単位ではなく法人単位となります。業界自体の人手不足の深刻さを考えれば、賃金アップ、代替休暇制度の採用のいずれも厳しいと感じる法人は少なくないと思われますが、もはや不可避の状況です。様々な業務効率化や一部業務のアウトソース化などにより、早急に従業員の時間外労働の削減に努めることが肝要です。

改正 育児・介護休業法やデジタルマネーによる賃金支払い解禁も

同じく4月から改正育児・介護休業法が施行され、育児休業の取得状況公表が義務付けられる企業の範囲が拡大されます。常時雇用する労働者数が1000人超の事業主は、年1回以上育児休業の取得状況を公表することが義務付けられます。介護業界では該当する法人はごく一部になるでしょう。もっともこうしたライフ・ワーク・バランスの見える化は、長時間労働の短縮化につながります。というのも今回の長時間労働短縮を狙った割増賃金率は、EUなどの諸外国の数字をそのまま日本にも適用したものです。それに比べ、日本の労働者の育児休業を含む休暇の取得状況はEUなどに比べて大幅に少ないとされているため、この点では見える化を通じた雇用側への「締め付け」をさらに強化する余地が残されているからです。
その他に4月からは労働基準法施行規則の電子マネーやQRコード決済などのデジタルマネーによる賃金の支払いが解禁されます。キャッシュレス決済や送金サービスの普及・多様化を反映した流れです。デジタルマネーによる給与支払いは、労使協定を締結した会社およびデジタル給与での給与支払いを希望した従業員で可能です。利用する従業員は雇用側に対する同意書の作成が必要になりますが、デジタルマネーで受け取る範囲(例えばボーナスだけ)や金額(給与のうち毎月〇万円)を自身で設定できるのが特徴です。一見すると雇用側にはほとんどメリットがないようにも思えますが、昨今のデジタルマネー業者は手数料競争なども盛んなため、銀行振り込みよりも手数料コストを抑えられるといったメリットがあります。

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