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【ニュース解説】オンライン診療の条件がさらに緩和 その内容は?問題点は?

厚生労働省は5月18日に事務連絡「へき地等において特例的に医師が常駐しないオンライン診療のための診療所の開設について」を発出し、デジタル機器に不慣れな高齢患者への利便性確保のために、へき地などでは患者が自宅外の公民館などでオンライン診療を受けることを認めました。この施策は政府の規制改革推進会議の提言で進められたものですが、発出直後からすでに一部から新たな意見も提示されています。今回はこの内容について解説します。

コロナ禍で一気に普及が進んだオンライン診療

最新の変更内容の解説の前にまず、オンライン診療の現状について解説します。厚生労働省は2018年3月に「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(以下、指針)を策定し、同年4月の診療報酬改定でオンライン診療料、オンライン医学管理料が新設され、保険診療の枠内でオンライン診療が可能になりました。ただし、この時は初診から6か月間は対面診療が必要で、対象疾患も限定されました。また、対面診療と比べ、診療報酬が低いことなども相まって、普及はあまり進みませんでした。

2020年の診療報酬改定では、オンライン診療移行前の対面診療期間が3か月に短縮され、対象疾患も拡大。さらに従来の指針で定められていた施設基準が撤廃され、緊急時の対応はオンライン診療を行っている医療機関を原則としながらも、予め取り決めればそれ以外の医療機関でも対応可能としました。

これが大きく変化したのが、新型コロナウイルス感染症のパンデミック、いわゆるコロナ禍です。2020年4月10日に発出された厚生労働省の事務連絡通知で、医療機関での感染防止対策や患者の過度な受診控えの抑止策として、時限的・特例的措置として初診も含めたオンライン診療が条件付きで可能になりました。その後、診療録などの情報が確認でき、患者の症状と合わせて医師が可能と判断した場合はかかりつけ医以外でも初診のオンライン診療が可能となり、初診からのオンライン診療という仕組みが恒久化されました。

医師がオンライン診療を行う場としては、必ずしも医療機関で行う必要はないものの、騒音のある場所や患者の心身の状態に関する情報を得るのに不適切な場所ではないことが定められています。一方、診療を受ける患者の所在地については「居宅等」と定めており、具体的には患者の自宅のほか、医療法施行規則第1条で定める養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、これ以外で医療提供施設ではないもの医療を受ける者が療養生活を営むことができる場所が対象です。しかし、高齢患者の場合は、そもそもスマートフォンも含めたオンライン診療に必要なデバイスの操作に不案内なことも多く、デバイスの操作を補助する家族がいない独居者の場合は自宅などでオンライン診療を受けることができませんでした。また、通所介護施設を利用する高齢者ならば、施設職員によるデバイス操作補助でオンライン診療を受けることは現実には可能でしょうが、患者が受診する場所が法令上「療養生活が行える場」と定めているため、生活の場ではない通所介護施設でオンライン診療を受診することは認められてきませんでした。

条件を満たせば、地域の公民館や通所介護施設でもオンライン診療が可能に

今回発出された事務連絡は、あくまで受診機会が十分確保されていないへき地で特例的に医師が常駐しないオンライン診療のための診療所の開設を認めることを定めたものです。今回特例が適用されるへき地は以下のようになります。

・無医地区 ・準無医地区 ・離島振興法に規定された離島振興対策実施地域指定地域 ・奄美群島振興開発特別措置法に規定された「奄美群島(鹿児島県奄美市及び大島郡の区域)」 ・小笠原諸島振興開発特別措置法に規定された「小笠原諸島」 ・沖縄振興特別措置法に規定された「離島」 ・準無医地区と同程度に医療の確保が必要な地区

診療所の開設場所について「当該診療所の開設場所は、へき地等の地区における中心となる場所等この特例の趣旨を踏まえた場所とすること」としており、地域の公民館や通所介護施設などがこれに該当することになります。当たり前のことですが、これらの施設は元々診療所を目的とした施設ではないので、ある意味間借りの仮設診療所的なものと言えます。特例での診療所開設に当たっては、実地調査の確認や、「オンライン診療の適切な実施に関する指針  チェックリスト」と急変時対面対応可能なことを事前合意した医療機関名(開設される診療所の管理者が所属する医療機関が急変時に自ら対面で対応を行う場合はその医療機関名)の提出を求めています。また、都道府県側には、この特例診療所について概ね1年毎に指針を遵守可能な体制を整えているかの確認とオンライン診療の実施件数報告を求めることを定めています。

この事務連絡通知の発出後、この内容に関して批判的な意見が出ています。それは「都市部でも身体機能の不自由なケースなど、同様のオンライン診療を希望するニーズはある」という意見です。実は通知発出翌日に規制改革推進会議があり、この場でそのような意見が噴出しました。規制改革実施計画ではこうした医師が常駐しないオンライン診療可能な診療所開設については「へき地」と限定してません。通知では「地域医療に与える影響やその可能性について、地域医師会等、診療に関する学識経験者の団体等と連携して把握すること」と医師会への“配慮”も付記しており、厚労省が医師会に配慮した結果と思われます。その意味では今後、規制改革推進会議が求める対象拡大の議論の行方が注目されるところです。

厚生労働省「へき地等において特例的に医師が常駐しないオンライン診療のための診療所の開設について」

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