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【ニュース解説】トラブル続きの「マイナンバー保険証」 病院受診で気をつけるべきことは?

現在、国は2024年秋を目途にマイナンバーカードに健康保険証を統合(通称・マイナ保険証)して、紙の保険証を廃止する計画です。しかし、報道でご存じのように「マイナ保険証に本人以外の情報が紐付いていた」「統合したはずなのになぜか医療機関で資格確認ができない」「所属する健康保険組合を変更したのに反映されていない」などのトラブルが多発しています。

この多くは人為的ミスによるものなのですが、さらに根源をたどると、健康保険組合が加入者情報とマイナンバーを紐付けるシステム自体のエラーチェック機能が不十分という問題があります。国は6月下旬にデジタル庁内に「マイナンバー情報総点検本部」を設置し、今秋をめどに全国でマイナンバーの紐付けなどに誤りがないかの点検を完了することを目指しています。

各方面から批判されている来年秋の紙の保険証廃止は、現時点では変更しないとし、今年閣議決定した「骨太の方針2023」でもこの方針堅持を明記しています。

特養では入所者の急変などの場合、施設内の看護師などが同行して外部の医療機関を受診する事態は少なくありません。こうした際に医療機関の窓口にある資格確認端末で本人確認できなかった場合はどのような手続きとなるのでしょうか?この点について厚生労働省は7月10日付で保険局長名義の通知を発出しています。今回はその内容を解説したいと思います。

介護保険事業支援計画の基本指針とは

まず、「介護保険事業支援計画の基本指針」とは何かについて簡単に触れておきます。介護保険の保険者となっている市町村は、地域内の被保険者や要介護者の実態を把握し、適切なサービスの種類や必要量の確保が求められています。その際、策定するのが「介護保険事業計画」です。この策定にあたって、国が示す留意事項が基本指針です。基本指針は介護保険法第116条第1項に基づき厚生労働大臣が定めます。

もっとも一度作ったら終わりではなく、諸般の情勢変化を踏まえる必要があり、3年に1度の介護報酬の度に新たな基本指針が策定されます。現在の2021~2024年度は第8期の基本指針で、2025年度から第9期となります。前述の内容からもわかる通り、基本指針の目的は介護報酬に基づく市町村の円滑な保険給付(現物給付)実施の道しるべを提示するものです。より平たく言えば、あくまで次期介護報酬改定後の給付のあり方に定めたものですが、介護報酬改定議論と同時並行で策定されるため、基本指針策定議論は介護報酬改定議論と連動しています。その意味では介護報酬改定直前は両議論を両睨みすることで、国がどのような考えで介護報酬改定を目指してくるかの一端をうかがい知ることができます。

読み取り端末で「資格無し」と表示されたら?

まず、今回解説するのは、あくまで患者本人が有効な医療保険資格がある(患者の思い込みの場合も含む)にもかかわらず、資格確認端末で「資格(無効)」、「資格情報なし」と表示される場合を前提としています。この原因は、前述の保険者などによるデータ登録のミスや遅延、あるいは資格確認端末の故障、マイナンバーカードの券面汚損・ICチップ破損、停電、施設の通信障害などが考えられます。

この時に患者が紙の保険証も併せて持参している場合は、それを用いて資格確認を行います。紙の保険証がない場合でも患者が自身のスマートフォンやタブレット端末でインターネット上にあるマイナポータルにアクセスして医療保険の資格情報画面を提示できる場合はそれで資格確認できたとの扱いになります。

また、何らかの事情で医療機関に設置されている顔認証付きマイナンバーカードリーダーで顔認証が上手く機能しない場合も起こり得ます。この場合はマイナンバー取得時に設定した利用者証明用電子証明書の暗証番号入力や医療機関側でカードリーダーを目視モードとし、医療機関職員が目視で本人確認を行うことも可能としています。

しかし、保険者による情報登録のミスや遅延の場合はそもそもマイナポータルでも正確な情報が確認できない可能性は高いでしょう。こうした場合や紙の保険証やマイナポータルへのアクセス画面を提示できない場合は医療機関で資格確認する手段がありません。

その場合でも心配はほぼ不要です。これらのケースでは医療機関の窓口で「被保険者資格申立書」という文書を記入します。申立書にはマイナンバーカードに記載されている氏名、生年月日、性別、住所に加え、連絡先、加入医療保険種別、患者本人が受けている一部負担金の割合などを可能な範囲で記入することで資格確認として代用可能です。

ちなみに、資格確認ができなかった医療機関に過去に受診歴があり、その時点から資格情報が変わっていないことを患者が口頭で告げ、医療機関側が申立書に記載すべき情報をすでに把握できている場合について、通知では「申立書の提出があったとの取り扱って差し支えない」としています。つまり、マイナンバーカードで資格確認できない場合でも、紙の保険証やマイナポータル画面の提示、あるいは申立書の記入により、医療機関の窓口では患者負担1~3割で支払いが可能になることを覚えておきましょう。

資格確認書の交付で保険診療を受けることも可能

「マイナンバーカード取得は任意だと思っていたのに紙の健康保険証を廃止するならば、必ず作らなければいけないの?」とか「施設に入所している高齢者などマイナンバーカードを取得できない者は保険診療を受けることができなくなるの?」という疑問もあるでしょう。

改めてこの点を説明すると、紙の保険証廃止後もマイナンバーカードを取得しない場合は別途、「資格確認書」というものを交付してもらうことで保険診療を受けることができます。

また、「マイナンバーカードに統合された健康保険証は、紙の健康保険証よりも診察料が高くなる」という話は聞いたことがあると思います。実は当初の診療報酬の設定では、そのようになっていました。これはマイナンバー保険証での診察料を高くすることで、医師を通じて患者のマイナンバーカード取得を促す目的がありました。しかし、この点は「患者に利便性を謳いながら、診察料が高くなるのは理不尽」との指摘が多く、この設定は2022年10月から改定され、現在では初診料の患者自己負担額はマイナンバー保険証を利用した場合は6円、紙の保険証で受診した場合は18円と逆転しました。

健康保険証と統合後にマイナンバーカードを紛失した場合は?

健康保険証と統合後にマイナンバーカードを紛失した場合、再発行までは保険証が使えない、すなわち「医療機関を受診できないのでは?」と心配する声もあるでしょう。これについてデジタル庁では現在1~2か月かかっている再発行までの期間を長くても10日間程度になるよう検討を進めています。ただし、再発行までの期間中に医療機関受診の必要性が生じた場合については「手順については、今後、関係府省と連携しながら、丁寧に対応してまいります」として、不透明な扱いになっています。

これらを総合すると、こと受診頻度の多い高齢者に関して言えば、今回のマイナンバーカードの紐付け情報の総点検と修正が完了し、全ての医療機関にカードリーダーが整備されるまでは紙の保険証も併せて持参した方が安全と言えます。

厚生労働省保険局「マイナンバーカードによるオンライン資格確認を行うことができない場合の対応について」

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