2024年度のトリプル改定に向けて、4月19日に開催された第2回の意見交換会で提示された議題の中から、特養や介護付有料、グループホームなどの高齢者施設の現状と課題、そして報酬改定に向けた論点を解説するシリーズ。ここでは、介護老人保健施設における医療提供機能の現状と課題について解説します。
介護老人保健施設における医療提供機能の現状
介護老人保健施設については、常勤の医師及び看護職員が配置され、入所者に必要な日常的な医療については施設の医師等が行うこととされています。夜間については医師の当直は義務付けられていないが、看護職員については必置ではないものの、実態として一定数の看護職員が配置されています。
介護老人保健施設における給付の範囲については、夜間休日を除き常勤医師が配置されていることや、一定数の看護職員の配置が行われていることから、手術や特殊な検査、画像検査などを除き、入所者に対する医療提供にかかる費用は、基本的に介護保険からの給付となっています。また、介護老人保健施設における薬剤の給付調整については、昭和63年の抗悪性腫瘍剤にはじまり、診療報酬改定の度に、介護保健施設における医療提供を充実する観点から、個別の薬剤ごとに出来高算定できる薬剤を拡大しています。近年の改定において、施設における医療提供機能を拡充する観点から所定疾患施設療養費やターミナルケア加算の拡充、総合医学管理加算の新設など、介護報酬上の対応が実施されており、所定疾患施設療養費の算定回数や死亡退所の割合についても増加しています。
介護老人保健施設における医療提供機能の課題
介護老人保健施設において提供可能な医療については、酸素療法(酸素吸入)を行うことが可能な施設が約 66%、静脈内注射(点滴含む)が約61%、喀痰吸引(1 日 8 回以上)が約50%と、施設間で医療提供機能にばらつきが見られています。また、医療機関への退所者のうち肺炎や尿路感染症等による入院が一定の割合を占めていて、施設ごとで対応可能な利用者の医療ニーズに差がある可能性があります。
さらに、医療機関への退所者のうち、約21%が平日夜間又は土日に退所しており、一般的に医師が不在である夜間休日の施設での医療対応能力の向上や協力医療機関との連携体制の構築が求められます。
また、介護老人保健施設の入所にあたり、服用している医薬品が高額であるという理由で施設入所に至らないという事例も報告されています。
厚生労働省「令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会(第2回)」
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