2024年度のトリプル改定に向けて、4月19日に開催された第2回の意見交換会で提示された議題の中から、特養や介護付有料、グループホームなどの高齢者施設の現状と課題、そして報酬改定に向けた論点をテーマ別に解説するシリーズ。ここでは、高齢者施設等における感染症対策の現状と課題について解説します。
高齢者施設等における感染症対策の現状
2020年からの新型コロナウイルス流行下においては、高齢者施設・障害者施設等におけるクラスターの発生、病床ひっ迫等による施設内療養が多数生じ、平時からの感染症の予防・まん延防止や感染症の治療が必要な入居者への適切な対応が求められている中で、
・平時からの感染症の予防及びまん延防止 のための取組の実施状況
・コロナ患者が発生した場合に、診療を行う協力医療機関(配置医師や自施設医師を含む)の確保状況
について、施設間で差がみられ、対応困難な例も見られました。
そうしたなか、全ての都道府県において、
・感染制御・業務継続支援チームを派遣できる体制の整備
・医師や看護師による往診・派遣が可能な医療機関の事前確保
などの取組や、補助金や診療報酬上の特例(薬 剤費や緊急時往診等)などを組み合わせつつ必要な支援を行われてきました。また、令和3年度介護報酬改定において、全ての介護サービス事業者に対し、感染症の発生及びまん延の防止のための研修や訓練の実施等が義務付けられたことに加え、2022年12月9日に公布された「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律」において、予防計画の策定を通じ、自治体や医療関係者、高齢者施設等の関係者等の平時からの意思疎通、情報共有、連携の推進を行うことを目的とした「都道府県連携協議会」を設置することとされており、その中で、高齢者施設等における療養も、議論・協議の対象として挙げられています。
高齢者施設等における感染症対策の課題
将来的な新興感染症等に備えた感染症対策にあたっては、コロナ禍における対応を踏まえつつ、平時から高齢者施設等における感染予防の能力向上を図り、施設内で感染が拡大した場合における対応を適切に行うための医療機関と高齢者施設等の連携についても強化していく必要があります。
そのためには、医療機関による感染対策に関する助言や必要時の高齢者施設等への職員の派遣の機能が求められますが、感染者が急増した際に必ずしも十分な対応がなされませんでした。また、認知症の人が手洗いやマスクの着用といった一般的な感染防止策を実施することが困難なケースなど、高齢者施設特有の課題も残っています。
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