看護師や医師など医療介護従事者が、職場外で常に呼び出しや相談に応じる「オンコール勤務(オンコール対応)」。
この記事を読む人の中には、オンコール勤務が具体的にどんなものか、自分に務まるのかなど、漠然とした不安や疑問を抱えている人が多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、看護師や医師のオンコール勤務の概要や手当の平均額、オンコール勤務日の過ごし方など、わかりやすく解説しています。
最後まで読めば、いざ自分がオンコール対応をする時の心構えが理解できるはずです。
オンコール対応とは?看護師・医師別に解説
オンコール(オンコール勤務・オンコール対応)とは、医療や介護の現場で働く看護師や医師が、緊急時の呼び出しや相談に対応できるように、自宅を始めとした職場外で待機することをさします。
オンコールは看護師と医師で内容が異なります。
次の表に、訪問看護師、介護施設看護師、オペ室看護師、医師それぞれのオンコール対応の違いをまとめました。
勤務先 | オンコールの相手 | オンコール手当の有無 | |
訪問看護師 | 訪問看護ステーション | 介護サービス利用者・家族 | あり |
介護施設看護師 | 介護施設 | 介護職員 | あり |
オペ室看護師 | 病院 | 病院スタッフ | あり |
医師 | 病院 | 病院スタッフ | 呼び出しに応じた場合にあり |
次から職種別に詳しく解説します。
訪問看護師のオンコール対応
訪問看護ステーションなどに務める訪問看護師の場合、オンコールは訪問先の利用者やその家族からかかることが多いです。
訪問看護利用者の体調の急変などの相談に対して、電話口の相手の不安を取り除き、適切なアドバイスや必要な医療ケアを提供します。
介護施設看護師のオンコール対応
介護施設に務める看護師の場合、オンコールは介護職員からかかることが多いです。
介護サービス利用者の体調急変に対して、介護職員から対処方法の相談や医療的な判断を仰がれたり、必要であれば呼び出しに応じて医療ケアを施します。
関連記事:特養の夜間看護体制 約7割の施設で看護職員がオンコール&駆けつけ対応
オペ室看護師(手術室ナース)のオンコール対応
病院のオペ室看護師(手術室ナース)の場合、緊急オペなどが入った際に呼び出されることが多いです。
オンコール勤務日は呼び出しがあればすぐに駆けつけられるように待機し、オペの対応やその後の機器洗浄などを行います。
医師のオンコール対応
医師の場合、緊急オペなど現場の医師では対処しきれない場合に呼び出されることが多いです。
就職時に病院から30分圏内の場所に住居を構えるなど、オンコール対応を前提とした契約を結ぶことも多いです。
オンコールの頻度は勤務先の病院や診療科によって異なり、救急病院や、脳神経外科や産婦人科など緊急性の高い手術が多いほど高くなる傾向です。
また小規模の医療機関で一人医長(常勤医師が1名しかいない)体制の場合、常にオンコール体制をとっていることもあります。
オンコールの日の過ごし方
オンコール対応をする日は、具体的にどのように過ごすのかイメージしづらいという人もいるでしょう。
ここではオンコールの日、自宅でどのように過ごすのか、その心構えや注意点について解説します。
呼び出しに備えて自宅か職場の近場で過ごす
オンコールの日は、いつ緊急の呼び出しがかかるかわかりません。
そのため遠出は避け、自宅か職場近くで待機している必要があります。
外出する場合は自宅の近所にとどめ、電波が入らない場所は避けましょう。
飲酒はしない
オンコール待機中は飲酒は控えましょう。
冷静な頭で呼び出しや医療的な相談に応えられるように準備しておく必要があります。
オンコール用携帯電話にすぐに出られるようにしておく
オンコールがかかってきたときは速やかに出られるように、常に携帯電話をそばに置いておきます。
オンコール対応は夜間や早朝、土日祝日などが多いです。
当然お風呂や睡眠中でも電話がかかってくるので、常に電話に出られるようにしておきましょう。
また携帯電話の充電切れや、マナーモードにしないなどの注意もしておきましょう。
オンコール手当の平均はいくら?
オンコール対応をした場合、勤務先によっては手当がつくことがあります。
看護師のオンコール手当は1,000円~3,000円程度で、呼び出された場合さらに時間外勤務扱いでその分の給与が発生します。
訪問看護師が呼び出しに応じた場合、緊急訪問手当として時給で支払いをするか、定額制で5,000円以上支払っている施設が多いようです。
参考:一般社団法人 全国訪問看護事業協会「訪問看護ステーションにおける24時間対応体制に関する調査研究事業報告書」
勤務医の場合、オンコール待機自体には手当がつかない病院も少なくありません。
オンコールで呼び出された場合、1回1万~3万円程度の手当が支給されることがあります。
オンコール勤務のメリット
オンコール勤務には、患者やサービス利用者、施設側だけでなく、医療介護従事者にとってもメリットがあります。
働く側にとってどんなメリットがあるのか見ていきましょう。
出勤日より自由、休日より稼げる
オンコール待機中は行動に制限があるものの、施設や病院に出勤中よりもはるかに自由に過ごせます。
自宅で過ごすことが好きな人、自宅でできる趣味がある人などは、遠出ができないことをストレスに感じづらいでしょう。
そうして自由に過ごせる時間がありながら、オンコール手当が支給されます。
出勤日よりは自由に過ごせて、休日よりもお金を稼げる、というのはオンコール対応のメリットの1つと言えます。
医療介護従事者としてやりがいが大きい
オンコールがかかってくるときは、現場のスタッフだけでは対応しきれない状況や、利用者の急変などの緊急事態です。
オンコール対応では、そうした緊急の状況で不安にさらされている人たちを支え、適切なアドバイスや医療ケアによってサービス利用者を救うことができます。
医療介護従事者としては大きなやりがいのある仕事と言えるでしょう。
オンコール勤務のデメリット
オンコール勤務にはデメリットもあります。
オンコール対応がある職場に就職する場合は、自分にとって問題ないか確認しておきましょう。
行動に制限がある
オンコールの日の過ごし方でも触れたように、オンコール待機中は次の行動制限があります。
- 遠出をしない
- 飲酒しない
- 常に電話に出られるようにしておく
これらの行動制限に強いストレスを感じる場合、オンコール対応の頻度が高い職場は避けた方がよいでしょう。
睡眠中でも電話に出る必要がある
オンコール待機の日は睡眠も普段通り取って問題ありませんが、眠っていてもオンコールが鳴れば即座に起きて対応する必要があります。
眠りが深い人は電話の呼び出し音を大きく設定するなどの対策が必要です。
オンコール勤務は拒否できる?
オンコール勤務を職場から求められても拒否したいという人もいるでしょう。
今は問題がなくても、今後家庭の事情や自分の体調などで断らざるを得ない場合もあります。
オンコール対応ができないことがわかっている場合、採用面接時にはその事情を話しておきましょう。
また同じタイミングで、オンコールの頻度はどうか、オンコール代行を利用しているかどうかなど施設の体制を確認し、譲歩できる部分があるか相談するのもよいでしょう。
急な事情でオンコール対応ができなくなった場合には、可能な限り早めに上長に相談をしましょう。
早めに相談することで代わりの人材確保やシフト変更がしやすくなり、お互いの負担が少なくなります。
関連記事:ドクターメイト「夜間オンコール代行サービス」が福井県における介護の課題解決をサポート
オンコールに関するよくある質問
Q.睡眠中にオンコールが鳴り、起きれずに無視してしまったらと思うと不安でストレスを感じています。どうしたらいいですか?
A.まずはその不安を一人で抱え込まず、話しやすい人に相談してみましょう。
オンコール勤務は、慣れないうちは多くの人が不安を感じやすいものです。
同僚や先輩など、経験者に相談してアドバイスをもらいましょう。
それでもストレスが減らない、不安感が強くオンコールの日は眠れないなど、心身の負担が大きいようであれば、働き方を見直すのも有効です。
オンコール対応がない働き方ができるか相談をするか、オンコールを1回複数人で回している職場やオンコール対応がない職場を検討しましょう。
Q.オンコール勤務日は行動の制約があるのに労働時間として賃金が発生しないのは違法ではないのですか?
A.オンコール待機中が労働時間とみなされないことに、現状違法性はないとされています。
それは、労働時間とは指揮監督下に置かれている時間をさし、自宅で待機している時間はそれにあたらないからです。
ただし施設内で待機するよう命じられている場合は「手待ち時間」となり労働時間と見なされます。
【まとめ】オンコール対応について正しく知ろう
この記事では、医療介護従事者の勤務形態のひとつであるオンコール対応について詳しく解説しました。
最後にオンコールの概要についてまとめます。
オンコール対応は看護師や医師が、自宅など職場外で緊急の呼び出しや相談に応じられるように待機することをさします。
看護師と医師のオンコール対応の違いについて、次の表にまとめました。
勤務先 | オンコールの相手 | オンコール手当の有無 | |
訪問看護師 | 訪問看護ステーション | 介護サービス利用者・家族 | あり |
介護施設看護師 | 介護施設 | 介護職員 | あり |
オペ室看護師 | 病院 | 病院スタッフ | あり |
医師 | 病院 | 病院スタッフ | 呼び出しに応じた場合にあり |
オンコール待機をした場合、手当がつくことが一般的ですが、勤務先の医療介護施設によって異なります。
とくに勤務医の場合、呼び出しがあった場合のみ手当がつくことが多いようです。
オンコール待機中は、遠出をしない、飲酒をしない、つねにオンコールに出られるようにしておくなど行動制限があります。
それでも医療介護サービスの利用者やその家族、介護職員などにとって、オンコール待機をしてくれるスタッフの存在は大きな心の支えになります。
これからオンコール勤務をする、またはオンコールがある職場に就職を予定している人は、正しく理解して準備をすることが大切です。
また、現在のオンコール体制に強いストレスを感じている人は、早めに上長に相談しましょう。
オンコール待機の看護師不足を解消!「オンコール代行」って何?>>