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介護のデジタル化は人材需給ギャップの解消に貢献するのか

介護デジタル化

厚生労働省が第8期介護保険事業計画に基づいて試算した介護職員の必要数は、2025年度には約243万人、2040年度には約280万人となっています。2019年の実績値約211万人から見ると、高齢化のほぼピークとみられる2040年度には約69万人の介護職員不足になる見込みです。

これに対して国は(1)介護職員の処遇改善 、(2)多様な人材の確保・育成、(3)離職防止・定着促進・生産性向上、(4)介護職の魅力向上、(5)外国人材の受入環境整備、などを通じた総合的な介護人材確保対策に取り組むことで、この需給ギャップの解消を目指そうとしています。最近では、デジタル化による生産性向上の施策も加わっていますが、デジタル化の推進でこうした需給ギャップをどの程度縮小できるかについて、今のところ国は明確な試算を示していません。

そうしたなかで三菱総合研究所は、「介護のデジタル化が介護難民を救う~69万人の介護人材需給ギャップの解消に向けて~」と題するレポートを公表し、デジタル化が需給ギャップの解消にどの程度貢献するかの試算を示しました。今回はその内容を紹介したいと思います。

需要減と受給増、それぞれの試算では

レポートでは需要減の可能性と供給増の可能性の両面からの試算を行っています。
需要減に関しては、健康寿命推計モデルを使い、2030年までに実用化が期待される糖尿病、ニコチン依存症、認知症、うつ病、高血圧、運動不足、肥満、筋力低下による骨折の8領域の予防医療が社会に普及した場合の1次予防効果を試算しています。この結果、2040年度には前述の厚生労働省が想定したシナリオより要介護者が約70万人減少し、より人手を要する要介護3以上の割合が想定シナリオより1.5%減少すると見込まれました。同研究所では2040年度の介護職員数換算で22.6万人の需要減に結び付くと算出しています。

一方、供給増の試算では、介護のデジタル化(事務業務のIT化や介護業務へのロボット、センサー導入など)による生産性向上で減らせる介護職員数に加え、デジタル化の影響による介護業界への人材流入増加の2点から試算を行っています。試算では、新しいものに比較的早期に飛びつく人たちのみにデジタル化が普及した場合(普及率16%)と情報感度は高いものの新しいものに慎重な人たちまで普及した場合(普及率50%)に分けています。レポートでは、介護のデジタル化導入で、2040年度段階で生産性向上による必要介護職員数減少効果は普及率16%で11.2万人、普及率50%で33万人、人材流入増加については普及率16%で15万人、普及率50%で16.3万人の増加と算出されました。予防医療の浸透による介護需要減と合わせると、デジタル化の普及率50%が実現した場合は、現在予想されている2040年度の介護職員需給ギャップが解消される計算になります。

デジタル化「だけ」では介護業界で働きたい人は増えない

試算のデジタル化普及率16%と50%との間で、介護業界への人材流入がそれほど大きく変わらないことに驚いた人は少なくないでしょう。この流入試算は、業種を超えた人材の移動は、非ルーティンワーク(すなわち創造性が高い)要素がより高く、かつ仕事の特性が似ている業務へと人材が移動するというモデルに基づき算出されたものです。レポートによると、この流入数は介護業界から一足先にデジタル化が進んで余剰人員が生まれた他の業界からの流入数が9割を占めており、さらに他業界で働く人からの介護業界へのイメージの影響などは考慮されていないと記述されています。

その意味ではデジタル化もさることながら、業界・施設の「働く場所」としてのPRはもちろん、業務負荷改善などに今から地道に取り組まなければ、デジタル化がうまくいったとしても需給ギャップを改善できない恐れがあります。ある程度初期投資の必要なデジタル化の前に、これら業務負荷改善に率先して取り組む必要があるということを今回のレポートは示唆していると捉えた方が良いかもしれません。

【関連資料】
・データで知る求職者からの介護業界の見られかた
・「職員から選ばれ続ける」職場づくりのために
・業務改善でサービスの質を向上させる
・アウトソース7つのメリット

【注目トピックス】
・介護職員等ベースアップ等支援加算「昇給実感」わずか18.9%に
・19,335人が回答 看護師の「働き方」に関する意識調査
・アウトカム評価に対し介護報酬拡大の方向に 先行して行われた自治体での結果は?

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