
この記事では、特別養護老人ホーム(特養)の施設長の方々を主な対象に、オンコール体制の適切な運用、スタッフの負担軽減の方法について、具体的な運用ポイントや事例を交えながら解説します。
▶︎▶︎業務の効率化と夜間の負担軽減に「夜間オンコール代行」という選択肢を
オンコール体制の重要性と昨今の背景
介護施設における夜間・休日の緊急時対応は、入居者の安全確保と質の高いケア提供のために不可欠です。特に医師が常駐しない特養では、看護師によるオンコール体制がその中核を担っています。
しかし、看護師にとってオンコールは精神的・肉体的な負担が大きく、離職の原因となることも少なくありません。このような背景から、オンコール体制の見直しと、業務負担軽減のための対策が急務となっています。
特養(特別養護老人ホーム)と老健(介護老人保健施設)におけるオンコール対応の基本
特養における夜間体制の実態
特別養護老人ホーム(特養)は、要介護3以上(一部例外あり)の高齢者が長期的に生活する公的介護施設です。比較的費用負担が少ないため人気が高く、入居待ちとなることもあります。入居者は要介護度が高い方が中心ですが、24時間体制の高度な医療ケアが必要な方は少なく、日々の健康管理や看取りケアが看護師の主な役割となります。
また、特養における看護師の配置基準は、入所者の人数によって異なりますが、24時間常駐は義務付けられていません。一般的には夜間帯に看護職員が常駐する施設は少数派で、夜間の緊急時は、常駐する介護職員がオンコールの看護師に連絡し、指示を仰ぐのが一般的です。
施設内での急病や事故といった緊急事態が夜間帯に発生した際は、連絡を受けた看護師が施設にかけつけ状況を確認する対応をとっている施設も多くあります。
日本総合研究所の「特別養護老人ホームにおける医療ニーズに関する調査研究事業」によると、70.4%の施設で看護職員がオンコールに加え、施設へのかけつけも対応しているという調査結果が出ています。
老健における夜間体制の実態
介護老人保健施設(老健)は、病状が安定し、リハビリテーションや処置など、中長期的な治療や支援が必要な高齢者が入所する施設です。入所期間は原則として6ヶ月程度と定められており、在宅復帰を目指すことが大きな特徴です。特養と比較して、医療依存度が高い入居者が多い傾向にあります。
老健においても、特養と同様に常駐の看護師配置は義務付けられていません。多くの老健施設では、夜間はオンコール体制で対応しており、緊急時に看護師が連絡を受け、必要に応じて施設へ向かう、あるいは医療機関との連携を行います。
特養と老健のオンコール体制の全体像
特養のオンコールは、看護師が自宅などで待機し、介護職員からの緊急連絡に対して指示や判断を行う勤務形態です。緊急時には看護師が出動することもありますが、電話での指示で解決するケースが多いとされています。オンコール体制は、入居者の急変時対応や安心感の提供において重要な役割を果たしていますが、看護師にとっては「いつ呼び出しがあるかわからない」という精神的負担や、行動制限が伴うことが課題となっています。
老健のオンコール体制も、特養と類似していますが、入居者の医療依存度が高い場合、より迅速かつ専門的な判断が求められることがあります。そのため、オンコール担当の看護師は、施設の医療設備や連携医療機関の情報に精通していることが重要です。
オンコール対応の詳細については、こちらの記事で解説しています。ぜひご覧ください。
実践!夜間オンコール体制構築の5ステップ
ステップ1:現状の課題と対応履歴の洗い出し
まずは、これまでの夜間オンコール対応の記録を徹底的に洗い出しましょう。過去数ヶ月分の呼び出し件数、時間帯、内容、そしてそれらにどのように対応したのかをデータ化します。これにより、どのような事象が頻繁に発生しているのか、どのような対応に時間がかかっているのか、といった具体的な課題が浮き彫りになります。例えば、「転倒による受傷」の報告が月に数回あるのか、「誤嚥の兆候」に関する相談が多いのか、といった傾向を把握することが重要です。
ステップ2:担当者の選定とシフトルールの策定
洗い出した課題に基づき、オンコール担当者を公平に選定し、無理のないシフトを策定します。重要なのは、担当者の負担が集中しないようにすること。連続してオンコール待機する日数の上限を設定したり、担当日が重なった場合の翌日の代替休暇ルートを確保したりするなど、スタッフが心身ともに健康な状態で業務に臨めるようなルール作りが不可欠です。また、担当者間の情報共有を円滑にするための連絡網や、緊急時のエスカレーションフローも明確にしておきましょう。
ステップ3:手当・就業規則の見直し
オンコール待機は、スタッフのプライベートな時間を制約し、精神的な負担を伴う業務です。この負担に見合った適切な手当を支給することは、スタッフのモチベーション維持と公平な評価のために極めて重要です。就業規則においても、オンコール待機に関する規定(待機時間、連絡方法、出動時の取り扱い、手当の支給基準など)を明確に定め、スタッフ全員が理解できるように周知徹底しましょう。これは、後述する労務管理の項目とも密接に関わってきます。
ステップ4:介護職⇔看護職の連携フロー整備
夜間オンコールの成否は、介護職と看護職の連携にかかっています。誰が、いつ、どの手段で連絡するのか、どのような情報(バイタルサイン、症状、既往歴、普段の様子など)を、どのタイミングで伝えるべきなのか、といった基準を明確にしたフローチャートを作成しましょう。SBAR(Situation, Background, Assessment, Recommendation)のような情報伝達フレームワークを活用することも有効です。これにより、緊急時でも迅速かつ的確な情報伝達が可能になり、看護師はより正確な判断を下すことができます。
ステップ5:定期的なカンファレンスとマニュアルのアップデート
オンコール体制は一度構築したら終わりではありません。定期的に(例えば、月に一度や、大きなインシデント発生後など)オンコール対応に関するカンファレンスを実施し、実際に発生した事例や課題を共有しましょう。その結果を踏まえ、マニュアルの内容を必要に応じてアップデートしていくことが重要です。入居者の状態変化や、新たな医療知識、法改正などに対応するため、常に最新の状態に保つ意識を持ちましょう。この継続的な見直しと改善プロセスが、質の高いオンコール体制の維持に繋がります。
夜間オンコール時の症状別対応と「すぐ使える」実践ツール
夜間の急変時、介護職員は「早く看護師に知らせなければ」と焦ってしまい、断片的な情報だけで電話をかけてしまうことが少なくありません。これにより、電話口の看護師が状況を正確に把握できず、的確な指示が出せないという悪循環に陥ります。
これを防ぐためには、「電話をかける前に確認すべきこと」と「伝える順番」を施設内で完全にフォーマット化してしまうことが最も効果的です。
よくある症状別対応ポイント(発熱・転倒・皮膚トラブル等)
オンコール要請の多い3つの症状について、介護職員が「電話の前に」行うべき初期対応と観察項目をまとめました。
① 発熱(急な発熱・悪寒など)
- バイタルサインの測定: 体温だけでなく、血圧、脈拍、血中酸素飽和度(SpO2)も測定する。
- 全身状態の観察: 意識はハッキリしているか、呼吸は苦しそうでないか、顔色や発汗の有無を確認する。
- クーリング・水分補給: むせ込みがないか確認した上で水分を促し、必要に応じて氷枕などでクーリング(冷却)を行いながら看護師の指示を待つ。
② 転倒・転落(ベッドからの転落、歩行中の転倒など)
- 【重要】むやみに動かさない: 骨折や頭部打撲の可能性があるため、無理に立たせたりベッドへ戻したりせず、まずはその場で状況を確認する。
- 外傷と痛みの確認: 出血はないか、頭を打っていないか、特定の部位を痛がっていないかを確認する。
- 発見時の状況把握: 「いつ」「どこで」「どのような体勢で」倒れていたかをメモする。
③ 嘔吐(食事中、就寝中の嘔吐など)
- 【重要】誤嚥(ごえん)の防止: 吐き戻したものが気管に入らないよう、顔を横に向ける(側臥位にする)。
- 吐瀉物(としゃぶつ)の観察: 量、色、血液が混じっていないかを確認し、可能であれば破棄せずに残しておく(または写真を撮る)。
- バイタルと腹部症状: バイタルサインを測定し、腹痛や下痢を伴っていないか確認する。
介護職員と看護師の役割分担
オンコール時のスムーズな対応には、介護職員と看護師の明確な役割分担、対応のフローチャートや判断基準を施設全体で共有することが不可欠です。
介護職員の役割
– 入居者の異変を早期に察知し、的確に現状を観察する。
– バイタルサイン測定、症状の変化、実施した対応など、必要な情報を正確に収集する。
– 看護師への連絡時には、収集した情報を簡潔に伝える。
– 看護師のアドバイスに基づき、初期対応を迅速に行う。
看護師の役割
– 介護士からの情報をもとに、入居者の状態をアセスメントし、緊急度・重症度を判断する。
– 介護士への具体的なアドバイス(救急搬送への要否処置内容、観察項目など)を出す。
– 必要に応じて、施設への出動や医師・医療機関との連携を行う。
伝達フォーマット「SBAR(エスバー)」とは?
オンコール時に介護職員が看護師に伝えるべき情報は、「現状」「時間」「変化」「対応」の4つのポイントが重要です。集めた情報を看護師へ的確に伝えるために、医療・介護現場で推奨されているのが「SBAR(エスバー)」というコミュニケーション手法です。以下の4つの順番で伝えるだけで、情報が劇的に整理されます。
SBARとは
– S (Situation – 状況): 今、何が起こっているのか(例:○○さんが発熱している)。
– B (Background – 背景): これまでの経緯(例:いつから熱が出たか、日中の様子、既往歴、普段のバイタルサインなど)。
– A (Assessment – 評価): 介護士がどのように考えているか(例:誤嚥の可能性があると感じる、救急車が必要かもしれない)。
– R (Recommendation – 提案): 何をしてほしいか、どうすべきか(例:救急車を呼んでほしい、指示を仰ぎたい)。
介護職員は主にS(状況)とB(背景)を担当し、看護師はA(評価)とR(提案)を行います。このフレームワークを用いることで、情報が整理され、スムーズなコミュニケーションが可能になります。
【コピペで使える】夜間オンコール電話連絡シート(ひな形)
以下のフォーマットは、SBARの考え方を介護現場向けに落とし込んだ連絡メモです。 このシートを印刷し、各フロアのステーションやPHSの近くに常備しておくと便利です。
【夜間急変時】看護師への電話連絡シート
報告日時: 月 日( ) 時 分 報告者名:
■ S(状況):何が起きましたか? 「〇〇さん( 歳)が、現在[ 発熱・転倒・嘔吐・その他( )]しています。」
■ B(背景):これまでの経緯と現在の数値は?
・いつ発見したか:( 時 分ごろ) ・日中の様子:( ) ・現在のバイタル: 体温( . ℃)/ 血圧( / ) 脈拍( )/ SpO2( %)■ A(評価):現場から見て、緊急度はどう感じますか?
□ いつもと明らかに違う、すぐに対応が必要そう □ 苦しそうだが、少し様子を見られそう □ その他、気になること:(例:右足を痛がって動かせない 等)■ R(提案):看護師にどうしてほしいですか?
□ 救急車を呼ぶべきか判断してほしい □ 今すぐ施設に出向いてほしい □ 現場での応急処置(薬の服用など)の指示がほしい
このように、現場が「見るべきポイント」と「伝える順番」を型化することで、介護職員の心理的ハードルが下がり、看護師にとっても的確な判断を下しやすい「質の高いオンコール体制」の第一歩を踏み出すことができます。
自社運用に限界を感じたら?「オンコール代行サービス」という選択肢
ここまで、施設内でオンコール体制を構築・運用するためのステップやツールをご紹介しました。しかし、「マニュアルを整備しても、そもそも看護師の採用ができない」「今の人数でシフトを回すのは、どうしても特定のスタッフに負担が偏る」といった根本的な課題に直面している施設も多いのが実情です。
このような自社運用による負担や限界を解決するための有効な手段が、「オンコール代行サービス」の活用です。
外部の専門業者にオンコール対応を委託することで、施設看護師の負担を大幅に軽減できます。特に、経験豊富な看護師や医師が対応し、詳細なレポートを提供するサービスは、質の高い対応と情報共有を両立できます。
業界シェアトップクラスのドクターメイトなら、24時間365日のバックアップ体制をすぐに構築できます。現在、多くの施設様がドクターメイトによって「夜間の心理的負担」からの解放を実感されています。貴施設の状況に合わせた最適なプランを提案しますので、まずはお気軽に相談ください。

オンコール代行サービスの活用事例と効果
オンコール代行サービスを導入した特養では、以下のような効果が報告されています。
看護師の精神的負担の軽減
「夜間待機がなくなったことで、退職を踏みとどまった」「ぐっすり眠れるようになった」といった声があり、離職防止や定着率向上に繋がっています。
採用活動の有利化
「オンコールなし」という条件で看護師を募集できるようになり、応募数が増加し、採用に成功した事例があります。
サービスの質の向上
介護職員が代行業者に電話することで、より詳細な情報収集や説明のスキルが向上し、結果として施設全体の介護サービスの質が高まることがあります。また、専門医によるバックアップ体制がある代行サービスでは、より適切な医療判断が期待できます。
オンコール体制強化によるスタッフ採用・定着への影響
「看護師白書2020年度版」によると、転職活動で重視する条件として「勤務時間・勤務体系(交替制度・オンコール回数など)」を挙げる看護師は64.7%に上ります。オンコール体制の強化、特に外部委託による負担軽減は、求職者にとって大きな魅力となり、結果としてスタッフの採用促進と定着率向上に直結します。働きやすい環境が整備されることで、既存スタッフのモチベーション維持にも繋がり、好循環を生み出すことができます。
オンコール体制 運用のポイントと今後の展望
特別養護老人ホームにおけるオンコール体制は、入居者の安全確保と質の高いケア提供に不可欠です。その運用においては、看護師の負担軽減が喫緊の課題であり、以下のポイントが重要です。
体系的なマニュアル整備と研修
介護職員が的確な初期対応と情報伝達を行えるよう、具体的なマニュアルと定期的な研修が必要です。
ICTの積極的な活用
見守り機器や情報共有ツールの導入により、業務効率化と情報共有の精度向上を図ります。
オンコール代行サービスの導入検討
外部の専門サービスを活用することで、看護師の負担を大幅に軽減し、採用力強化やサービスの質向上に繋げられます。オンコール体制は、単なる緊急時対応にとどまらず、施設のサービス品質、スタッフの働きがい、そして採用・定着に深く関わる重要な要素です。施設長としては、これらの要素を総合的に捉え、時代に即したオンコール体制の見直しを積極的に進めることが求められます。最新のサービスや制度を賢く活用し、入居者にもスタッフにも選ばれる特養運営を目指しましょう。
ドクターメイトの夜間オンコール代行™導入事例
では実際に、オンコール代行を導入することでどのような効果が得られるのでしょうか。
オンコール代行を全国に提供しているドクターメイトの具体的な導入事例と効果をご紹介します。
導入事例:「オンコール無し」の求人募集で、看護師採用に成功!
「特別養護老人ホーム みくらの里」(静岡県下田市)では、看護師2名で月15日ずつのオンコール待機を行い、心身ともに限界に達していました。退職者が続出し、採用も難航する中、オンコール代行サービスを導入。その結果、「オンコール無し」という条件で求職者の反応が劇的に好転し、看護師の採用に成功しました。また、看護師が夜間に熟睡できるようになり、私生活や趣味の時間が充実したとのことです。介護職員も電話での助言を通じて医療知識が増え、看護師への報告精度が向上したと実感しています。
導入事例:介護と看護の関係性が好転!スムーズな多職種連携ができる施設へ
千葉県千葉市の「特別養護老人ホーム 恵光園」では、正看護師1名で365日オンコール待機という状況でした。「オンコール無し」で求人を出したところ、正看護師2名の採用に成功し、20代、30代の若い看護師からの応募が増加しました。介護職員からも「寝ている看護師に電話することに罪悪感があったが、代行サービスは気兼ねなく電話できる」と好評で、介護と看護の関係性が好転したといいます。
導入事例:看護師不足の時代だからこそ、老健が選んだ夜間体制のかたち
センターアゼリア様では、看護師不足という課題に対し、夜間オンコール代行™の導入を検討されました。当初は、日勤帯の看護師の確保が最優先課題でしたが、オンコール体制では求職者に敬遠され、採用の見通しが立たないという状況でした。
また、介護職員が夜間の相談を躊躇し、一人で不安を抱えてしまうという課題もありました。このような背景から、夜間オンコール代行™を導入することで、「オンコールなし」の求人募集が可能となり、2ヶ月で看護師3名を新たに採用することに成功しました。
医師のバックアップ体制があることで、看護師は夜間も安心して十分な睡眠をとれるようになり、介護職員も気軽に相談できるようになったことで、観察力や習慣が向上するという効果も得られています。
ドクターメイトの夜間オンコール代行™ 導入前後の課題と効果
これらの事例から、オンコール代行サービスの導入は、導入前の「看護師の過重負担」「採用難」「夜間対応の質への不安」といった課題に対し、以下のような具体的な効果をもたらすことがわかります。
看護師の負担軽減と定着率向上
オンコールからの解放は、看護師の心身の健康を保ち、離職を防ぐ上で最も大きな効果です。
採用力強化
「オンコールなし」は、看護師採用における強力なアピールポイントとなり、優秀な人材の確保に貢献します。
介護職員のスキルアップ
外部の専門家との連携を通じて、介護職員の観察力や情報伝達能力が向上し、施設全体のケアの質が高まります。
緊急時対応の質の向上と効率化
経験豊富な専門家が的確な判断を下すことで、不要な救急搬送を減らし、必要な医療を迅速に提供できます。
オンコール体制は、単なる緊急時対応にとどまらず、施設のサービス品質、スタッフの働きがい、そして採用・定着に深く関わる重要な要素です。施設長としては、これらの要素を総合的に捉え、時代に即したオンコール体制の見直しを積極的に進めることが求められます。最新のサービスや制度を賢く活用し、入居者にもスタッフにも選ばれる特養運営を目指しましょう。


