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【ニュース解説】特養・有料老人ホームにおける「看護職員の安定確保」は”プラチナナース活用”がカギ

「プラチナナース」という言葉をご存じでしょうか?これは看護師の職能団体である日本看護協会が定義している「定年退職前後の就業している看護職員」を指す言葉です。少子高齢化の急速な進行は、要介護者の増加と若年の働き手の減少に直結します。また、その一方で国は高年齢者雇用安定法を定め、事業主に対して労働者の65歳までの雇用の確保の義務付けるとともに、2021年4月からは70歳までの雇用確保を努力義務とし、高齢者の労働力活用を目指しています。こうした中で介護職員だけでなく、看護職員の確保にも苦労している介護業界では、プラチナナースの確保も今後は念頭に置かねばなりません。そこで今回はこのプラチナナースの実態について簡単に解説します。

55歳以上の就業中の看護職員=プラチナナースは2022年時点で約38万人

日本看護協会の厳密な定義では55歳以上をプラチナナースとしていますが、その数は2022年時点で約38万人。この数字は過去20年間で約4倍にまで増加しています。ちなみに2022年時点の就業中の看護職員に占める60歳以上の割合は12.8%。2002年のこの割合はわずか3.4%でしたから、今や無視できない割合を占めています。

公益社団法人日本看護協会「プラチナナース活躍促進サポート BOOK」2024年7月版 より

厚生労働省の「衛生行政報告例(2022年)」によると、看護職員の就業先は20代では病院で働く看護職員が8割超と圧倒的に多いのに対し、年齢を重ねるにつれて病院の割合は減少し、50代前半では全体の5割を下回ります。70代以降になると、病院に有床・無床診療所を加えた医療機関全体でも5割を切る状態です。就業看護職員の年代が上がるにつれ、医療機関に代わって割合が増える就業先が介護施設です。60代前半では介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、その他の介護事業所に勤務する看護職員の割合は2割程度ですが、60代後半以降では3割を超えます。日本看護協会はプラチナナースの雇用を念頭に置く施設の体制整備などのアドバイスする「プラチナナース活躍促進サポーBOOK」の中で「在宅での療養や暮らしを支える介護サービス分野は、看護業務を通じた経験・知識やコミュニケーション力等、人生経験豊かなプラチナナースの能力が求められる場です」と肯定的な認識を示しています。

公益社団法人日本看護協会「プラチナナース活躍促進サポート BOOK」2024年7月版 より

また、同サポートBOOKの中では、やや古いデータですが同協会が実施した看護職員実態調査(2017年)の結果から、50代で就業中の看護職員の58.9%が定年後も看護職員として働き続けたい意向を有していることも紹介しています。7年前のデータですから、現状ではより高い割合になっている可能性は十分にあります。さらに同実態調査からは、50代の就業中の看護職員の老後の生活設計(収入源、複数回答)のトップ3は、「公的年金」が88.9%、「貯蓄の取崩し」が48.5%、「就労による収入」が44.4%です。やはり7年前のデータであることを考えると、インフレが進む現状では就労収入への期待度・依存度は高まっていると予想されます。

公益社団法人日本看護協会「プラチナナース活躍促進サポート BOOK」2024年7月版 より

いずれにせよ介護事業者の看護職員雇用では、ここで言うプラチナナースは今後の大きなターゲットと言えそうです。もっとも加齢が進めば、体力、視力・聴力などさまざまな身体機能が徐々に衰える現実は看護職員でも同じです。その意味ではプラチナナースの雇用に当たっては、個々人の身体の状況や生活に合わせて仕事の内容や進め方、職場環境を調整することが必要になります。

前述のサポートブックでは職場環境調整の一例として、▽1日の勤務時間を短縮(短時間勤務)▽週の勤務日数の短縮(短日勤務)▽夜勤免除・回数削減▽時間外勤務の免除▽特定の時間帯(早朝・夕方等)の勤務選択制▽特定曜日(土日・祝日等)の勤務選択制、などを紹介しています。これは2019年に同協会が行った「病院看護実態調査」で、病院が60歳以上の看護職員の業務負担軽減策として取り組んでいるものを列挙しています。この中で最も多いのが、4割超の病院が取り組んでいる夜勤の負担軽減です。この点はワークシフトやワークシェアリング、あるいは夜間オンコール代行などの外部リソースの活用で十分対応可能は範囲と思われます。なお、同ガイドブックではプラチナナースの賃金について「60歳を過ぎたら、あるいは定年後の再雇用(再任用)時には賃金を一律に何割かカットしている組織もありますが、役割と責任に応じた処遇となることが望ましいと考えられます」と職能団体らしくクギを刺しています。もっとも今後高齢者雇用が増える中では、雇用側は看護職員に限らず、この点は意識しておく必要があると言えるでしょう。

公益社団法人日本看護協会「プラチナナース活躍促進サポート BOOK」2024年7月版

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