独立行政法人福祉医療機構 経営サポートセンター リサーチグループは2023年10月に全国の特養を対象に、人材確保に関する調査を実施、769法人863施設から得た回答をまとめたレポートを公表しました。そのレポートからテーマごとに、特養が直面する人材確保の現状をお伝えします。
職員の充足状況、人員不足による利用者の受け入れ制限
職員の充足状況については、70.3%が「不足している」と回答。2021年度の55.1%、2022年度の68.6%からさらに悪化していることが分かりました。不足人員数は、「2人以上3人未満」が28.8%、次いで「3人以上4人未満」が 25.0%で、平均で3.6人でした。不足している職種は、98.4%が「介護職員」と回答。定員規模が大きい施設では、介護職員以外の職種も不足していると回答した割合の増加が見られました。人員不足による利用者の受入れ制限については、85.3%が「受入れ制限等は行っていない」と回答したもんもの、ショートステイの定員を減らすなど、併設事業で受入れ制限を行う施設も見られました。
「他産業より低い賃金水準」が人員確保が難しくさせている
人員確保が難しい要因について、「他産業より低い賃金水準」が 2022年度調査の54.9%から63.9%へと大きく増加。2023年春闘では、大手企業の賃上げ率が 30年ぶりの高水準となるなど、他産業の動向が一定程度回答に影響した、と同グループでは分析しています。その他の意見としては「介護の仕事を希望する求職者が激減している」「介護業界自体に対するマイナスイメージ(低賃金・3K等)」 「受け入れ環境が不十分(賃貸住宅が少ない)」「女性が多い職場なので産休育休を取得する職員も多い。また、子育て中の職員は変則勤務が難しい」「夜勤等の時差勤務やカレンダーによらない不規則勤務。人員不足のため研修機会が取れずスキルUPが図れない」「一般企業と違い土・日・祭日が休みでないので、子育てしながらは厳しい状況」などが挙がりました。
また、不足人員への対応策として、94.2%が「求人活動を実施」と回答。次いで「業務内容の見直し・効率化」が57.3%、「時間外労働を増やして対応」が51.7%でした。
独立行政法人福祉医療機構 「2023年度 特別養護老人ホームの人材確保に関する調査結果」 「2023 年度特別養護老人ホームの人材確保に関する調査について」
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