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【ニュース解説】看護&介護職員の給料に関する満足度 キーワードは「残業代」と「業務負荷」

人材マッチング事業を行う株式会社SOKKIN(本社:東京都新宿区)は、2024年11月27日~12月06日に現役の看護師と介護職員のそれぞれに対し、「お給料に関する簡単アンケート」をインターネットを通じて行い、このほどその結果を公表しました。若年の看護師、介護職員では給与に対する不満がかなり渦巻いていることが明らかになりました。今回はこの調査結果を解説します。

現在の年収 入職時からの昇級額

現在の年収については、看護師では「300~400万円未満」が最多の30%、次いで「300万円未満」が28%、「400~500万円未満」が19%、「500~600万円未満」が16%。介護職員では、「300万円未満」が最多の36%、以下順に「400~500万円未満」が30%、「300~400万円未満」が23%、「500~600万円未満」が11%です。看護師と介護職員では多少分布のばらつきは違いますが、両職種とも6割弱が400万円未満と回答しています。

現在の職場で働き始めての経験年数は、「3年目以上5年目未満」が看護師、介護職員とも最多でそれぞれ27%、40%。次いで「6年目以上10年目未満」が各20%、「1年目以上2年目未満」が各17%。さらに看護師では「1年未満」も17%でした。回答者の7割以上が少なくとも3年以上現在の職場で働いていることになります。

現在の職場勤務が1年未満以外の人に入職時からの昇給額について尋ねたところ、看護師、介護職員とも「10万円未満」が最多でそれぞれ45%、26%。2番手は「10万円以上50万円未満」でそれぞれ26%、24%。その一方で看護師の9%、介護職員の24%は「0円」と回答しています。前述の回答と併せて考えると、3年以上同じ職場で働きながら、昇級がない人が一定数いる厳しい現実が浮き彫りになっています。

当然ながら昇給への満足度は高くありません。調査で尋ねた昇給への満足度は「不満」との回答が看護師で32%、介護職員で38%でトップ。「非常に不満」との回答もそれぞれ8%、2%あり、不満な人の割合は両職種とも4割に達しています。「非常に満足」と「満足」と回答した人を合わせた割合が、それぞれ32%、29%ですから、不満を抱いている人の割合が明らかに多くなっています。

夜勤の月額給与「1万円以上5万円未満」が最多

夜勤のある人の夜勤月額給与(月当たり受け取っている夜勤手当)は、看護師、介護職員とも「1万円以上5万円未満」が最多で、その割合はそれぞれ66%、52%。残りは「5万円以上10万円未満」がほとんどですが、介護職員では「10万円以上」が5%(看護師では皆無)いました。この点をどう読み解くかですが、看護師よりも人手不足が顕著な介護職員では、夜勤を強いられる機会が多く、結果として夜勤手当収入がかなり多い人が一部にいるという解釈が成り立ちます。

介護職員の4人に1人「2023年度ボーナス支給なし」

2023年度のボーナスの金額については、看護師、介護職員ともボリュームゾーンは「20万円以上50万円未満」でそれぞれ31%、32%とほぼ同率。次いで「50万円以上100万円未満」で、それぞれ27%、17%という結果でした。比較的高額のボーナスとなると看護師と介護職員で差が開くようです。実際、看護師では「100万円以上」という回答が8%ありましたが、介護職員ではこの層は皆無です。さらに「ボーナス制度なし」「0円」の合計が看護師では12%でしたが、介護職員では28%もいます。つまり介護職員の4人に1人以上が2023年度にボーナスをもらっていないことになります。

そもそもボーナスは、経営側にとってある種の賃金調整機能があることは多くの人が承知していると思います。基本給などはやや低めに抑え、経営状況などに応じてボーナスの額を増減し、人件費が経営を過度に圧迫することを防ぐというものです。

その観点からこの実態を見ると、やはり介護施設の経営状況が不安定なことをうかがわせています。近年は特養などを中心にさらに経営環境が悪化しているため、介護職員のボーナス環境に関しても今後悪化が懸念されます。

このような結果を反映してか、ボーナスに対する満足度に関しては、看護師と介護職員でやや違いがあります。最多割合は看護師では「普通」の32%に対し、介護職員では「不満」「非常に不満」がそれぞれ同率最多の28%で並んでいます。介護職員で「普通」との回答は21%に過ぎません。もっとも看護師でも「不満」との回答は28%にいます。ただ、「非常に不満」「不満」を合わせた合計は看護師が40%に対し、介護職員では56%にものぼります。

キーワードは「残業代」と「業務負荷」

調査では、ボーナス・年収・残業代・昇給額に関する満足度に対して自由記述の回答も得ています。その一部を看護師、介護職員に分けて以下に紹介します。

まず、満足な点についてです。

【看護師】

・残業はそこそこあり、きちんとつけることができるし、ボーナスも大きいのでとても満足している。(30代男性)

・私の職場では、経験年数に応じて年収が安定している。(20代男性)

・ボーナス年間6ヶ月分であり、他の病院に比べて高いので満足している。(30代男性)

・ボーナスが年2回支給される点に満足している。ボーナスは基本的に良い時期と悪い時期がありつつも、安定して支給されるため、生活に大きな影響はない。(20代男性)

【介護職員】

・ある程度の経験を積むと年収が安定し、基本給に加えボーナスが年2回支給される点は満足している。また、残業代がしっかり支払われるので、忙しい時期でも安心して働ける。特に、急な夜勤や休日勤務があった際にきちんと残業代が支給されることで、モチベーションが保たれている。(20代男性)

・残業代はしっかり支給される。欠勤したら、かなり給与から引かれる。ボーナスはここ最近1カ月分しか出ない。(40代女性)

・給料については介護職のわりには悪くない。残業代などもキチンと支給されるので、そのあたりは今の職場に満足している。(30代女性)

この回答を概観する限り、比較的恵まれた医療機関や施設で働いている方の回答とも思えますが、同時に1つのキーワードは「残業代」。多少業務が過重でもこの点が保証されていれば、一定の満足感につながると思われます。

一方、不満な点は以下です。

【看護師】

・残業が大変多いにも関わらず、なかなか給料が上がっていないので生活する面において負担がかかっている。(40代女性)

・仕事量、責任と給料が見合ってない。(30代女性)

・人手不足のため、自分より後に入職した自分より経験のないスタッフが、自分より給料が高いことを知ったこと。(30代女性)

・残業代が30分単位で支給のため、10分のみ残業した日の積み重ねで、サービス残業代が結構あり不満。(30代女性)

・残業に関してはその全てが支給されているということはなく、サービス残業は多い。そもそも、業務自体が始業前残業(30~45分)を前提として組まれており、その部分は100%サービスとなっていることも不満。(30代男性)

・残業をしても申請しない雰囲気があり、サービス残業ばかりしている。始業前にも情報収集という時間が毎日30分くらいあり、これも前残業でサービス。(50代男性)

・3年目までは残業申請出来ないところが不満。(20代女性)

・現在の職場で勤続5年目になるが、毎年1%程しか昇給しない。さらに、職場内の周囲と比較して1%の上昇率は良い方とされているため、現在の職場にポジティブな印象は持てない。(30代男性)

【介護職員】

・精神的・身体的な負担に対して全く対価が見合っておらず、ストレス。(20代女性)

・給与額もボーナスの額も労働力に見合ってなく不満。給与とボーナスを合わせても年収500万円以下では今後介護職で働く日本人は間違いなく更に減少し日本の介護は崩壊すると思う。(40代男性)

・体力仕事なのに、仕事中に休める時間が限られていて、給料が少ないのが不満。常勤のスタッフだと勤務スケジュール的に体力が持たない。ただパートで働いても仕事量が多く、また、昇給の機会が少なく、将来の不安も大きい。(20代女性)

・基本給が少ない、夜勤手当が少ない。(20代女性)

・昇給額は年に数百円なので年収が上がらない。(30代男性)

・勤務開始後ボーナスをもらったことがない。どれだけ頑張っても昇給も見込めないのでモチベーションが上がらない。(20代男性)

・長年勤めて1回もボーナスをもらったことがないので、会社から感謝されていないのだと思う。不満という言葉すら通り越している。(30代女性)

・ボーナスが年2ヶ月しかなく少ない。少ないのに減点方式なので1ヶ月分支給されない人もいる。(20代男性)

不満点をざっくり一言でまとめるならば、看護師も介護職員も「報酬が業務負荷に見合っていない」という点に尽きるでしょう。そして介護職員に関してはやはりボーナスへの不満は相当なものがあります。

業務負荷を下げる=業務効率化への着手が必要

さて看護師も介護職員も診療報酬あるいは介護報酬の枠内の収益で人件費が捻出されているため、施設単体のみの努力で大きな賃上げは困難ですから、現状の打破は容易ではないことは誰の目にも明らかです。

では、打ち手が皆無かと言えば、必ずしもそうでもありません。要は「報酬<業務負荷」を「報酬=業務負荷」にするためには、報酬を上げるか、業務負荷を下げるか、あるいはその両方を実現するかの3択です。もちろん報酬を引き上げることができればそれに越したことはありませんが、前述のように業界の構造上、早急な実現は困難です。となると、やや後ろ向きではありますが、業務負荷を下げる、いわゆる業務効率化にまず着手するのが最短の道になります。率直に言って、職員の賃金水準が高い医療機関や施設ほど、この点には徹底的に取り組んでいます。外部の目や外部サービスなどの活用も念頭に置きながら今一度業務効率化に取り組んでほしいものです。

株式会社SOKKIN 「看護師の給料調査」 「介護士の給料調査」

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