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ポスト2025年に備えて 国が示した「介護施設の進むべき道」とは

厚労省

医療介護総合確保法に基づき設置されている医療介護総合確保促進会議は2月16日、第18回会合を開催し、「ポスト2025年の医療・介護提供体制の姿(案)」を了承しました。同案は高齢者人口がピークを迎える2040年までを念頭に国民目線で実現が期待される医療・介護提供体制の姿を現時点で想定できる範囲で描いたものです。昨年12月に開催された第17回会議で素案が示され、それに修正を加える形で今回の案となりました。今回は同案の中の介護分野に関する内容を紹介します。

同案ではポスト2025年の医療・介護提供体制では、以下に示す3つの柱を同時に実現することが必要としています。

①医療・介護を提供する主体の連携により、必要なときに「治し、支える」医療や個別ニーズに寄り添った柔軟かつ多様な介護が地域で完結して受けられること
②地域に健康・医療・介護等に関して必要なときに相談できる専門職やその連携が確保され、さらにそれを自ら選ぶことができること
③健康・医療・介護情報に関する安全・安心の情報基盤が整備されることにより、自らの情報を基に、適切な医療・介護を効果的・効率的に受けることができること

外国人介護人材の活用に言及

① 医療・介護を提供する主体の連携により、必要なときに「治し、支える」医療や個別ニーズに寄り添った柔軟かつ多様な介護が地域で完結して受けられること

では、さらに「ポスト2025年を見据えた医療機能」「地域包括ケアシステムの深化・推進」「『治し、支える』医療や介護の担い手」の項目に分かれています。

「ポスト2025年を見据えた医療機能」では、「ときどき入院、ほぼ在宅」というキーワードのもと、ときどき入院に医療側が適切に対応できるよう、入退院対応での介護保険施設との協力や役割分担を検討していくことを求めています。

また「地域包括ケアシステムの深化・推進」として、高齢者施設での適切な医療・介護サービスを確保していく観点から、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院の施設サービスの特性を踏まえつつ、その機能や施設入所者への医療提供のあり方などを検討とともに、認知症対応として家族や介護者、医療機関・薬局・介護施設などが協力して対応できる体制構築の必要性を強調しています。

一方、「『治し、支える』医療や介護の担い手」では深刻な介護人材不足に関する対策に大きな文量を割いています。具体的には(1)高齢者をはじめとする幅広い層の介護助手としての活用(2)ICT・介護ロボット等の活用(3)手続のデジタル化(4)介護職員に対する相談支援などの環境整備(5)外国人の介護人材が円滑に就労・定着できる環境整備、をあげています。この中ではまず(5)が特徴的と言えます。従来、国が進めてきた介護人材不足解消策の大枠の中で、かなり明確に外国人介護人材の活用に言及したのはほぼ初と言っても良いかもしれません。また、全世代型社会保障の構築で言われてきた、高齢者を一方的な受益者から可能な人手は支える側に回す考えが(1)で示されたことも注目点です。これはいわば「社会的な老老介護」と言えるかもしれません。

データに基づく介護の実現へ

②地域に健康・医療・介護等に関して必要なときに相談できる専門職やその連携が確保され、さらにそれを自ら選ぶことができること

では、「ケアマネジメントの機能強化」の項目で、ケアマネジャーによる適切なケアマネジメント機能の発揮のため、適切なケアマネジメント手法の普及・定着、ケアプラン情報やLIFE(科学的介護情報システム)情報を含めた介護情報の体系化・データベース化などの推進を提言しています。さらに、ケアマネジャーの待遇改善、ICTなどを活用した業務効率化などによる労働環境の改善の必要性を示しています。一言でいえば、ICT化を通じて最終的にはデータに基づく介護を実現する姿勢を示したと言えるでしょう。

「相談支援体制の整備」として、今後の地域包括ケアシステムへの起点として、かかりつけ医である医療機関とともに地域包括支援センターの重要性を指摘しています。そのうえで同センターを障害福祉や児童福祉なども含めた一体的な相談窓口化し、さらに一般住民の適切な活用を可能にするために相談支援の仕組みの住民向け周知徹底を訴えています。

③健康・医療・介護情報に関する安全・安心の情報基盤が整備されることにより、自らの情報を基に、適切な医療・介護を効果的・効率的に受けることができること

については、いま国が推し進めているマイナ保険証の利用推進を通じた医療データのデジタル化・一元化に関する内容で、介護については申し訳程度にしか触れていません。しかし、医療データのデジタル化が進展すれば、介護データのデジタル化と医療データとの一元化に踏み込んでくることはほぼ間違ありません。その意味でケアマネジメントでのICT化とデータドリブン化はそこへ向けた布石と見るべきでしょう。

多様な介護人材確保とICT化の推進が施設運営のカギを握る

これらを俯瞰すると、介護施設レベルで今から取り組むべきことは、多様な介護人材確保とICT化の推進に落とし込めると思われます。もっとも多様な介護人材確保となると、技能、知識、体力など個人差も多様になるため、労務管理の複雑さが課題になる場合もあります。その意味でまず着手しなければならないことは、必要とされる業務の標準化や知識・技能レベルの明確化、さらに明らかになった業務負荷の軽減です。業務負荷の抜本的な解消についてですが、とりわけ負荷が高い、介護職員の教育や専門性ある業務は思い切って、アウトソーシングに踏み切ることも選択肢の一つです。小規模で人材不足に悩む施設の場合、既存の職員は日常業務に忙殺され、人材教育などまで手が回らなくなる恐れが高いので、一部業務のアウトソーシング化はより真剣に検討すべき命題です。

一方、ICT化については、すぐにタブレット端末の導入など目新しいものに飛びつきそうですが、まずは施設内の端末などを利用した諸記録のデジタル化など、やれるところから小さく取り組み、成功事例を作りましょう。いきなり機器などを導入すると、無駄に多機能な機器に人が使われてしまうという事態になりかねません。自施設で小さく取り組んで、不都合が生じた際に次なるICT化の投資に踏み切る方が、無駄が少なくて済むことが多いものです。まずは小さく始めるのが成功の秘訣と言えます。

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