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認知症の検査(2)認知機能スクリーニング検査~シリーズ 認知症を学ぶ

認知機能のスクリーニングでは主に「MMSE(Mini-Mental State Examination)」や「改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」、「モントリオール認知評価日本語版」という検査が用いられています。

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MMSE(Mini-Mental State Examination)

質問式で約10~15分で実施でき、比較的簡単に行えるため、世界中で最も広く使用されている認知機能のスクリーニング検査です。以下のような30点満点で評価され、一般的に23点以下で認知症の疑いありとされます。また、点数別に重症度分類ができ、24点以上は極軽度、20~23点は軽度、 10~19点が中等度、0~9点が重度となります。

見当識(各5点。合計10点)

・今日の日付(年、月、日、曜日、季節)

・現在いる場所(国、県、市、病院名、階数)

記憶力(各3点。合計6点)

・3つの単語を覚えてもらい、すぐに復唱(即時記憶)

・数分後に再度思い出してもらう(遅延記憶)

注意力・計算力(計算、逆唱1回につき1点。合計5点)

・100から7を順次引いていく(100、93、86、79、72)

・または単語を逆から言う逆唱(例:「あたま」→「またあ」)

言語機能(各1点、ただし3段階の命令は各段階1点。合計9点)

・物品の名前を答える(時計、鉛筆など)

・文章の復唱

・3段階の命令に従う

・文章を読んで従う

・文章を書く

・図形を模写する

改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)

精神科医で聖マリアンナ医科大教授だった長谷川和夫氏が開発した質問式の認知機能検査で、日本人の文化的背景に配慮した内容となっています。30点満点で、一般的に20点以下で認知症の疑いありとされます。なお、HDS-Rでは一般的に重症度判定はしませんが、これまでの研究から軽度が19±5点、中等度が15±4点、やや重度が11±5点、重度が4±3点と考えられています。長谷川氏自身も2018年に認知症になったことをカミングアウトし、2021年に亡くなっています。

年齢(1点)

・自分の年齢を答える

見当識(年、月、日、曜日が各1点、場所が最大2点。合計6点)

・今日の年月日と現在の場所を答える

即時記憶(復唱1回ごとに1点。合計3点)

・3つの言葉を覚えて復唱

計算(1回につき各1点。合計2点)

・連続引き算(100-7=93、93-7=86など)

逆唱(1回につき1点。合計2点)

・数字を逆から言う

遅延記憶(1回につき2点。合計6点)

・「計算」の時に覚えた3つの数字を思い出す

物品記銘(品物1つにつき1点。合計5点)

・5つの品物を見せて覚えてもらい、それを隠して思い出してもらう

言語流暢性(最大5点)

・野菜の名前をできるだけ多く言う。5種類までは得点なし。6種類で1点。以降、1種類ごとに1点加算。10種類以上は5点

MMSEと長谷川式の違い

臨床現場で最も多く利用されている2つの検査ですが、違いはいくつかあります。まず、長谷川式は口述、いわゆる医師との問診による問答のみの検査です。このため検査時間は5~10分とMMSEに比べて短時間で済むのが特徴です。

一方でMMSEは文章や図を書く検査項目があるため時間はかかりますが、視空間認知などの評価については長谷川式よりも優れていると言われています。ただ、この文章や図を書く点は逆に学歴が職歴による影響を受けやすいとの指摘もあります。

なお、MMSEでは24~27点は軽度認知障害(MCI)の疑いありと判定されますが、長谷川式ではMCIの基準は設けられていません。もっともMMSE、長谷川式ともにMCIのスクリーニングでは感度が低く不向きと言われています。この背景にはMMSE、長谷川式とも日付・場所の見当識や計算、短期記憶などの簡易課題が中心で、MCIではまだこれらの機能が維持されていることが多いうえに、MCIでは記憶以外に注意・実行機能・視空間認知などの障害が出始めることも多いにもかかわらず、MMSEや長谷川式ではこれらの評価が不十分であるためと言われています。

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モントリオール認知評価日本語版(Japanese version of Montreal Cognitive Assessment:MoCA-J)

MMSEや長谷川式よりもMCIの検出に優れた検査として注目されているのが、質問式で行うMoCA-Jです。所要時間は10~15分で、合計は30点満点で、25点以下が認知機能低下(MCI)の可能性が高いと評価されます。MMSEよりは問題が難しくなっているため、対象者が受けた学校教育機関が12年以下(日本で言うと高卒者まで)の場合は、算出された合計点にさらに1点を加算します。

視空間・実行機能:(正解につき1点。合計5点)

・紙面に印刷された「1-2-3-4-5」と「あ-い-う-え-お」を「1-あ…」と交互に線で結ぶ(線は交差しない)。終了直後の自己修正は正解扱い

・立方体の模写

・時計の模写(時計盤が円形)

・時計の模写(数字の配置が正確」)

・時計の模写(指定した時間を長針・短針で指す)

命名(動物1種類につき正解1点。合計3点)

・図示された3種類の動物の名前を順に答える

記憶(得点なし)

・5つの単語を記憶させ、復唱を2回繰り返す

注意力(正解につき各1点。ただし、計算のみは正解数に応じて1~3点。合計最大6点)

・検査者が読み上げた5つの数字の復唱

・検査者が読み上げた3つの数字の逆唱

・ひらがなを読み上げ「あ」の音の時に手を叩き、エラーが1回まで

・100から7ずつ引く引き算(正解 1個=1点、2~3個=2点、4~5個=3点)

言語(1種類正解につき各1点。合計2点)

・2種類の文章の復唱

抽象化(1回につき1点。合計2点)

・読み上げる2つの単語に共通する概念の回答を2回実施

遅延記憶(1種類につき1点、合計5点)

・「記憶」の時で覚えた単語の再生

見当識(正解につき1点、合計6点)

・当日の年(西暦あるいは年号)

・当日の月

・当日の日

・当日の曜日

・当日いる市区町村

・当日いる場所(病院、自宅など)

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