総務省統計局による最新の確定データ(2022年11月1日現在)によると、日本の総人口は1億2491万3000人。うち65歳以上の高齢者は3622万5000人で、高齢化率は29.0%と先進国有数の高齢化社会を迎えています。今後も高齢化とともに少子化も進展し、高齢化率は当面上昇に一途をたどると推定されています。こうした高齢化の進展による施策を考える際によく用いられるのが将来の人口推計で、国立社会保障・人口問題研究所が5年ごとに最新推計を発表しています。最新となる令和5年推計が4月26日に発表されました。結果は予想されていたこととはいえ、かなり驚きの内容でもあります。今回はこの新推計値を紹介したいと思います。
高齢者人口は2043年にピーク
まず、同研究所の推計で中心となるのが出生数と死亡数の仮定値です。いずれも数値が低い場合から高い場合まで低位・中位・高位の3種類の仮定があり、合計で9パターンの推計値が公表されます。一般的に引用されるのは、出生中位・死亡中位のパターンです。簡単に言えば、出生数・死亡数がほぼ現状維持の近い状態です。今回のケースでは2020年10月1日現在の男女別年齢各歳別人口(総人口)を基準人口として、2020年時点の合計特殊出生率が1.33人、平均寿命が男性81.58歳、女性87.72歳を基準にしています。そのうえで2070年時点の合計特殊出生率を中位1.36人、高位1.64人、低位1.13人、平均寿命を中位が男性85.89歳、女性91.94歳、 高位が男性84.56歳、女性90.59歳、低位が男性87.22歳、女性93.27歳として推計値を算出しています。今回発表されたのは半世紀先の2070年までの推計値です。出生中位・死亡中位でみると、2056年には総人口は1億人を切り、2070年の日本の総人口は8699万6000人と現状から約3割も減少します。そして現役世代と言われる15~64歳の人口は4535万人と今後約50年で総人口の減少割合を上回る4割もの減少と予測されています。一方、65歳以上の高齢者人口は、現状から右肩上がりに増加し、2043年の3952万9000人でピーク。その後は減少トレンドに入り、2070年に3367万1000人となります。この時点の高齢者数は現状からはわずか6.5%の減少で、高齢化率は史上最高値の38.7%に達する見込みです。
約半数の労働力で、ほぼ同数の高齢者をどう介護するために
介護業界に関して言えば、現役世代が人海戦術の労働力となって高齢者の介護をするこれまでの構図のままならば、50年後は今よりも4割少ない労働力で、現状とほぼ変わらない高齢者の介護を担当するという、想像を絶する世界が展開されることになります。高齢者数がピークの2043年の場合は、現役世代が現状より2割強減少し、高齢者人口が約1割増加となるので、この状態もなかなか大変ですが、この時期を介護業界が乗り切れたとしても、その先はもっと過酷になるということです。
今後は今まで以上にIT化やロボット活用により省力化をすることは不可避ですが、半世紀先までの技術革新を考慮したとしても、介護から人海戦術的側面を外すことはできません。そう考えると、言葉を選ばずに言えば50年後の介護現場は、働く人にとってもはや阿鼻叫喚の過重労働の世界になっているかもしれません。
【関連資料】
・医療⇔介護 日本の論点2023
・施設運営者が知っておくべき 特養の医療ニーズ 最新データ2023
・2023年版 特別養護老人ホーム採用成功データBOOK
【注目トピックス】
・介護職員の業界外への転職 増加傾向に
・高齢者施設等における感染症対策の現状と課題~令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会から(7)
・高齢者施設等における薬剤管理の現状と課題~令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会から(6)
・医療機関と高齢者施設等の連携の現状と課題~令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会から(5)
・認知症グループホームにおける医療連携体制の現状と課題~令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会から(4)
・有料老人ホームなどの特定施設における医療提供機能の現状と課題~令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会から(3)
・介護老人保健施設における医療提供機能の現状と課題~令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会から(2)
・特養における医療提供機能の現状と課題~令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会から(1)
・5類移行後の高齢者施設における新型コロナウイルス感染予防策