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【ニュース解説】2024年度改定を見据えた財務省の「狙い」とは

連休明けの5月11日、財務省の財政制度等審議会(財政審)財政制度分科会が開催されました。2024年度の介護報酬改定を占う上である種の方向性が見える審議会の1つです。今回はこの審議会での議論の内容を紹介します。

「利用者負担」と「給付範囲」の見直し検討が進む

まず、今回の議論の多くは、従来からの財務省の方針、つまり「少子高齢化の進展により急速に膨らむ介護給付をいかに抑えるか」にほぼ尽きていると言っても過言ではありません。そのための核となるのが「利用者負担」と「給付範囲」の見直しです。この点については昨年12月20日社会保障審議会介護保険部会で出された意見である「1号保険料負担の在り方」と「現役並み所得あるいは一定以上所得のある人での利用者負担の2割化」についての結論を急ぐという方針が改めて確認されました。また、個別事項では、現在も室料負担が基本サービス費に含まれている介護老人保健施設・介護医療院・介護療養病床の多床室の利用者室料負担についても次期改定までに結論をまとめることを確認しています。

財務省 財政制度分科会(令和5年5月11日開催)資料より

人材紹介会社への規制、サ高住への同一建物減算の適用も提言

一方、今回の分科会では、介護業界関係者の一部にとって歓迎すべき論点も示されました。その1つが人材紹介会社への規制強化です。慢性的な人手不足に悩む介護業界では、人材紹介会社を使う事業所は少なくないですが、その高額な紹介手数料が一部では経営を圧迫していると指摘されています。この紹介手数料は紹介された人材の年収を基に計算されることが一般的です。今回の議論では、「介護職員の給与は公費(税金)と保険料を財源としており、本来は職員の処遇改善に充てられるべきもの」との見解から、紹介手数料の水準設定などが必要と提言しています。また、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)では、従来から系列の居宅介護事業所が画一的なケアプランで過剰なサービス提供を行う傾向がある問題が知られていましたが、このことを踏まえ分科会では「サ高住への同一建物減算の適用」も提言しました。

財務省 財政制度分科会(令和5年5月11日開催)資料より

議論の第一歩目としてのマイナス改定の「匂わせ」

今回の分科会では、各種データを引用しながら介護事業所の収益状況が安定的であること、現預金・積立金などの水準が過去5年間増加していることなども強調しています。具体的な言及はしていませんが、これは財務省が従来から主張する介護報酬のマイナス改定の方針を遠回しに示したと言えます。そうした中で、昨今の物価上昇を考慮した介護報酬の引き上げに関しては、今回の議論では否定的な見解が示されました。この点については、ため息をついている介護事業者も少なくないと思います。ただし、現時点では「財務省はそういう考え」という程度のもので、額面通りに受け取って悲観するのは早すぎます。

財務省の財政制度審議会の議論や資料を見ればよくわかりますが、財務省は「金目だけで物を言う」のが最大の特徴です。この官庁の役割上、当然と言えば当然のスタンスです。そしてその財務省のスタンスを体現する財政制度審議会では、大雑把な言い方をすると、実現の可否は別にして考えられる打ち手を片っ端から並べます。このやり方は関係者の間で「財政審は遠くにボールを投げる」と揶揄されるほどです。つまり財政審での方針がそのまま全てが即時に実行に移されるものではないのです。

現に過去の診療報酬や介護報酬の改定直前には、財務省は必ずと言って良いほどマイナス改定を主張しますが、その通りになったことの方が少ないことからも財務省・財政審の言うことが一種の「ブラフ」であることはお分かりになると思います。しかも、かつては中央省庁の頂点とも言われ、政治のコントロールが利きにくいとまで言われた財務省も、中央官庁の幹部級人事を政治が直接牛耳る「内閣人事局」の創設により、政治(政府・与党)の顔色をうかがう機会が激増しました。ということで、現時点ではとりあえず「成り行きを注視する」ぐらいで構わないでしょう。

【関連資料】
・医療⇔介護 日本の論点2023

・【2023最新版】財務諸表から読み解く 黒字の特養 赤字の特養

・介護業界×人材確保 未来予測図~2023最新データで徹底解説~

【注目トピックス】

シリーズ 令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会から
・特養における医療提供機能の現状と課題

・介護老人保健施設における医療提供機能の現状と課題

・有料老人ホームなどの特定施設における医療提供機能の現状と課題

・認知症グループホームにおける医療連携体制の現状と課題

・医療機関と高齢者施設等の連携の現状と課題

・高齢者施設等における薬剤管理の現状と課題

・高齢者施設等における感染症対策の現状と課題

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